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日の出は鮮やかに。
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スイも非常にタフであった。
クローガ、サラとの戦闘は一見すると詰みに見える。どこを崩しても致命的な攻撃を喰らわない手はないし、何より吸血兎となったことで自身の持久力は失われている。
しかし、微かな脆弱性。相手の攻防のバランスの悪さに気づいていた。やつらは防衛には優れている。
サラを襲えば自身よりも素早い雷獣に阻まれるし、クローガを襲っても同様。
スイが次にとった行動は、壁の破壊。
瞬時に地面を蹴り、サラまでの距離を一気に近づける。当然、彼女の盾となる雷獣が目の前に出現。
だが、これは誘導。刀のように伸びる吸血兎のツメは雷獣へと向かっていたのだ。
雷獣は十字に切り裂かれて、砕けるようにきらきら微塵と化した。
クローガとサラの片時の困惑の視線をよそに、次はスイに攻撃を仕掛けるはずの雷獣を右手で刻む。
あとは、おそらく次の瞬間に刺してくるサラの熱線の軌道から、急所を外すように身を躱すのだった。
しかしスイの予想は外れる。空気を徹するような、熱線の高い音は響かず。
すぐに左後ろより姿を現したのはクローガは、腕に纏った青白く光る雷獣を放とうとしていた。
考える余地もなく、抗うように身を弾き、それに直撃することは避ける。即席であったが、この軌道を熱線は捉えることが出来まいとたかを括る。
吸血兎の持久力はすぐに尽きる。完全に見切ることはできなかったがそのうち着地をして、無防備な少女を打ち取れば良いのだ。
だが不安は終わらず、宙に浮いている中。どんよりとした気配に包まれる。その気配の先にいたのは、サラであった。
獲物を齧り付かんとする眼。熱線を放つアルトラは解除されていて、代わりに赤く燃え上がる拳を構えていた。
彼女は飛んでくるボールを撃ち構えるバッターのように、佇む。
吸血兎で体力を使い果たしたスイにはそれを躱わすことなど到底無理で、その気配に吸い込まれていった。
赤いサラマンダーの拳はスイの胸を打ちつける。真夜中を昇る太陽の如く、深く蹂躙した。スイは身が砕かれる感覚を覚え、地面に落とされる。
彼の兎の耳はいつのまにか消えており、消沈していた。渾身を放ったサラは息が上がって、屈むのだった。
しばらくすると、スイはゆるりと立ち上がる。彼はまた不適な笑みを浮かべていた。
「ヤメダ。」
常人なら千切れ飛ぶような拳撃をこの異形は耐えた。その事実にクローガとサラは慄くのだった。
「本当に人間か...。」
スイはよろよろと歩き、地面に落ちた左腕を拾い上げて言う。
「強くなったな、サラ。」
その言葉にサラの心臓は強く鼓動した。間違いなく聞き覚えのあるこの声。
異形頭部のミッドナイトは解除される。流れるように消えていき、その眼はサラを見つめる。
端正な顔つきと深く黒い瞳。彼がたなびかせる長い髪は、鮮やかなまでの”桃色“であった。
「...兄さん....。」
クローガはこの者たちの奇妙な関係に唖然とする。
クローガ、サラとの戦闘は一見すると詰みに見える。どこを崩しても致命的な攻撃を喰らわない手はないし、何より吸血兎となったことで自身の持久力は失われている。
しかし、微かな脆弱性。相手の攻防のバランスの悪さに気づいていた。やつらは防衛には優れている。
サラを襲えば自身よりも素早い雷獣に阻まれるし、クローガを襲っても同様。
スイが次にとった行動は、壁の破壊。
瞬時に地面を蹴り、サラまでの距離を一気に近づける。当然、彼女の盾となる雷獣が目の前に出現。
だが、これは誘導。刀のように伸びる吸血兎のツメは雷獣へと向かっていたのだ。
雷獣は十字に切り裂かれて、砕けるようにきらきら微塵と化した。
クローガとサラの片時の困惑の視線をよそに、次はスイに攻撃を仕掛けるはずの雷獣を右手で刻む。
あとは、おそらく次の瞬間に刺してくるサラの熱線の軌道から、急所を外すように身を躱すのだった。
しかしスイの予想は外れる。空気を徹するような、熱線の高い音は響かず。
すぐに左後ろより姿を現したのはクローガは、腕に纏った青白く光る雷獣を放とうとしていた。
考える余地もなく、抗うように身を弾き、それに直撃することは避ける。即席であったが、この軌道を熱線は捉えることが出来まいとたかを括る。
吸血兎の持久力はすぐに尽きる。完全に見切ることはできなかったがそのうち着地をして、無防備な少女を打ち取れば良いのだ。
だが不安は終わらず、宙に浮いている中。どんよりとした気配に包まれる。その気配の先にいたのは、サラであった。
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彼女は飛んでくるボールを撃ち構えるバッターのように、佇む。
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赤いサラマンダーの拳はスイの胸を打ちつける。真夜中を昇る太陽の如く、深く蹂躙した。スイは身が砕かれる感覚を覚え、地面に落とされる。
彼の兎の耳はいつのまにか消えており、消沈していた。渾身を放ったサラは息が上がって、屈むのだった。
しばらくすると、スイはゆるりと立ち上がる。彼はまた不適な笑みを浮かべていた。
「ヤメダ。」
常人なら千切れ飛ぶような拳撃をこの異形は耐えた。その事実にクローガとサラは慄くのだった。
「本当に人間か...。」
スイはよろよろと歩き、地面に落ちた左腕を拾い上げて言う。
「強くなったな、サラ。」
その言葉にサラの心臓は強く鼓動した。間違いなく聞き覚えのあるこの声。
異形頭部のミッドナイトは解除される。流れるように消えていき、その眼はサラを見つめる。
端正な顔つきと深く黒い瞳。彼がたなびかせる長い髪は、鮮やかなまでの”桃色“であった。
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クローガはこの者たちの奇妙な関係に唖然とする。
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