荒れた世界で桃色の<魔王>になります

溟yuu

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生意気なタコは冷凍すべきだ!

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俗に“ボッチ”と呼ばれる宇宙生物の飛行物体を観測していた金色の太陽。されども数日単位での到来を予測することはできなかった。

この生物が取る姿勢。敵対でもない、しかしどこか傲慢で強引なものを感じざるを得ない。

「期日で ございマス。アナタたちガ ”太陽“ト 呼ぶそれノ 返還願イマス。」

怯えて腰を抜かすヒラノにカイは真剣に伝える。

「緊急信号。流して、いま!」

最重要の“金色の太陽”を扱う研究施設に何かがあれば、キューテスト全体に危険を知らせるコード・レッドである。

「話ガ わかル者ハ いないノ?」

「交渉の立場にないことは理解してくれタコ星人。」

「奪取ハ 許可されてイマス。野蛮ナ 手法を オ望ミデ?」

「とりあえず...食い止める。」

ゆらりと立ち上ったカイはその冷えた気配を露わにする。彼の拳は青白く、見ているだけで体の芯が冷えてくるような氷に包まれていた。

敵の数ある目の一つがそれを凝視していた。

カイは前方へ大きく跳んだ、彼の戦闘スタイルは早業。

その間にタコ型生物は動き出さずにいた。

電灯の明かりをカイの影が多い隠す。彼の大きく振り翳した拳は、重力と共に敵に直撃した。

ぬめった体表にカイの拳は食い込んで、その地点から拳の氷が広がった。

カイが視界の端に捉えるのはムチのようにしなったタコ型生物の触手。カイはそれを確認すると後方に跳ぶ。

空ぶったタコ型生物の触手は自身を打ちつけた。

跳躍で、すでに距離を大きく作ったカイはふっと微笑むのだった。

「カを....蚊を叩きそびれただけだ。」

タコ型生物は先ほどよりも流暢な言葉でこちらを煽るのだった。

気味の悪い生物が突然人間らしくこちらを煽ってくるのだから、カイはそれが面白かった。

「冷凍食品の戯言か...。」

カイは拳を再び構えながら言う。タコ型生物の方は体を蝕みつつある氷にここで気づく。

「数十秒で氷漬け、俺を殺らなきゃ消えんぞ。」

「低俗め!」

タコ型生物はそう叫ぶと触手の先を銀色に変色させて、槍にしてこちらに向かわせてくる。

そのいぶし銀のような先端は金属のような硬度を持っているということはなんとなく予測がついた。

カイは前腕を甲羅のような氷で多い、盾のように前方に構えることでそれを防ごうとした。

一撃くらいならば問題がないだろうと高を括った。

しかし、カイが気づかなかったのはタコ型生物の“変化”である。

その生物は前方にはおらず。代わりに頭上よりもさらに高いところにいた。カイが先ほど跳んだのを見よう見まねでやり抜いたのだ。

「どこを見ている!」

タコ型生物は空中で一本の触手を大きな剣のように変化させていて、兜を割るかのようにカイへと舞い降りた。

慌てて氷の盾を上に向けて、斬撃を受け止める。タコ型生物の巨体ものしかかってくるのだ。その衝撃はカイの体の芯にまで響く。

「....っ!」

鈍く、そして重い。

なんとかその斬撃を受け止めて、左腕は防御に使うまま。右腕を下に振る。彼の腕を覆った氷が瓦解し、新たに手先からみるみると氷の剣が形成されてゆく。

衝撃で頭がフラつく。歯を食いしばり、肘に力を込めて即席の剣を振るう。

その剣先はタコ型生物の体表をなぞり、浅くも確かな切り傷を植え付けた。

切り傷を確認すると、生物は驚いたように体をうねらせて後退するのであった。

「個体に傷をつけて何の意味がある。」

タコ型生物の頭部こそは触手を伸ばした異形であったが、下半身が華奢な人間の少女に変化しているではないか。

「あの重い体が跳躍できたのは、ヒトに成ったからか。」

カイは自身の周りに冷気を放ち、空中に氷塊の礫が即時に形成される。

無数の弾丸のようにタコ型生物へと放たれた。

銀色の触手がそれらを正確に弾くと、つぶやいた。

「あくびが出るような進化スピードの...下等生物ヒトとはまるで違うからな。」

気づけばタコ型生物の切り傷も完全に塞がっている。

それはぴたぴたと足音を鳴らして後方に歩いてゆく。触手を薙いでカイとの間合いを作り出した。

カイは氷の剣で刃物ほどに尖った触手に応戦する。連続の鞭打ちのようで何本の足があるのだろうか、いくら弾いたところでまた次が来る。

そのうち反応しきれずに鋭い触手はカイの顔や胴体を確実に切っていく。痛ましく酷い斬撃の音が響きわたった。

しかし数秒の交戦ののち、タコ型生物はぴたりと攻撃をやめるのだった。

「そうだった、任務優先。“金色の太陽”を渡せば生命の保障をしてやろう。」

「あのなあ、タコさん...上だ。」

タコ型生物は愚直に見上げると、天井に広がるのは氷の厚い膜。

「それが何d...」

言い終える前に氷は5本の槍と成って、その全てがタコ型生物の胴体を貫いた。

「はあ...。」

タコ型生物は全く動かず、視線だけはカイの方にむけていた。それが見せる表情は“呆れ”そのもの。

それからじわじわと放たれる嫌味のある気配にカイは思わず後退りした。

「それが何だと言うのだっ!!」

体に突き刺さった氷は全て溶けきり、タコ型生物は雄叫びを上げる。

「冷房のようなマヌケの能力だ。」
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