次女と狂女と皇女

N旅人

文字の大きさ
9 / 13

第9話「魔女の怪しいポーション」

しおりを挟む
次女と狂女と皇女 
第9話「魔女の怪しいポーション」
女学院の昼休み。今日は少し特別な日だった。
学園の文化祭準備期間で、各クラスが出し物を決めるための自由時間が増えている。ジュンコのクラスはまだ何も決まっておらず、教室はゆるやかな混乱状態だ。自皆ジュンコは、いつもの隅の席で静かに弁当を広げていた。「今日は……なんとか静かに食べられそう」そう思った矢先――。「ジュンコぉぉぉ!! 今日も地味に隠れてんじゃねぇよ!! 文化祭、一緒に何かやろうぜ!!」共原キョウカが、深紅のリボンを翻して乱入。机にどっかり座り、ジュンコの弁当を覗き込む。「き、キョウカ……文化祭かあ。まだ何も決まってないよね……」「ふひひ……私とジュンコでお化け屋敷やって、二人きりで暗闇に閉じ込められて……最高だろ♡」過激な妄想にジュンコが顔を赤くしていると、金色の髪が優雅に揺れて公野コウミが登場。「まあ! お化け屋敷だなんて下品すぎますわ! 私たちのクラスは優雅なカフェにすべきですのよ。高級紅茶とスイーツで、皆を魅了するの!」コウミは当然のようにジュンコの隣に座り、キョウカを睨む。「おい皇女様、カフェとか眠くなるだけだろ。ジュンコと怖い思いしてキャーキャー言いたいんだよ♡」「怖い思いだなんて、ジュンコが可哀想ですわ! ジュンコは私の隣で優雅にティーカップを持つ方がお似合いよ!」二人がいつものように火花を散らし始め、ジュンコは困った顔で間に入ろうとしたその時――。教室の扉が、ゆっくりと妖しく開いた。紫色の長い髪をなびかせ、黒いマントのようなカーディガンを羽織った少女――魔道マドウが、怪しい笑みを浮かべて入ってきた。手には小さなガラス瓶がいくつか。彼女は自称「魔女」で、いつもインチキくさい魔法薬やポーションを作っては学園内で売りさばいている(もちろん没収されることが多い)。「くすくす……いい機会ねぇ。文化祭の準備でみんな浮ついてるわ。新しいポーションのテストにぴったり……」魔道は三人組の机に近づき、甘い声で話しかけた。「あら、あなたたち。文化祭の出し物で悩んでるみたいね? だったら、私の特製ポーションを使ってみない?」ジュンコが警戒しながら、「ま、魔道さん……また変な薬作ってるの? 前に飲んだ子が一日中カエル声になってたって聞いたよ……」魔道はくすくす笑いながら、紫色の液体が入った瓶を差し出す。「それは失敗作よ。今度は完璧! これ、『友情強化ポーション』。飲んだ者同士の絆がぐーっと深まるの。文化祭で三人で何かやるなら、絶対に役立つわよ?」キョウカが目を輝かせて瓶を覗き込む。「おお! 友情強化!? ジュンコとの絆がもっと深まるなら、飲んでみたいぜ♡」コウミは眉をひそめて、「怪しいですわ……絶対に何か裏があるんですのよ! 魔道、あなたいつもインチキ薬ばっかり!」魔道は肩をすくめて、悪びれず笑う。「インチキだなんてひどいわねぇ。ただのハーブティーに少し魔法を加えただけよ。ほら、試しに一滴……」そう言って、魔道は勝手にジュンコの水筒に紫色の液体を一滴落とした。「わっ! ちょっと魔道さん!?」ジュンコが慌てるが、時すでに遅し。液体は水に溶けて、薄紫色に変わる。キョウカが面白がって、すぐに水筒を奪い取りごくごく飲んだ。「うまいじゃん! ちょっと甘いな! これでジュンコとの愛が100倍だぜ♡」コウミは渋々ながら、「ふん……キョウカが飲んだなら、私も飲まないと不公平ですわ……」と、少しだけ口をつける。ジュンコは仕方なく、自分も一口飲んだ。「……ちょっと、ベリーみたいな味がするね」魔道は満足げに笑い、「効果はすぐに現れるわ。くすくす……楽しみね」と、教室の隅に消えていった。最初は特に何も起こらなかった。三人は普通に文化祭の話を続け、結局「お化け屋敷+カフェのハイブリッド(怖いけど優雅)」という妥協案で落ち着きかけた。――ところが、5分後。キョウカが突然、ジュンコにぎゅーっと抱きついた。「ジュンコぉぉぉ!! なんか急に可愛く見えてきた!! もう離れたくない!! ずっと一緒にいようぜ!!」力が増していて、ジュンコが息を詰まらせる。「き、キョウカ……苦しいよ……」コウミも、顔を真っ赤にしながらジュンコの手を握り、「ジュンコ……あなた、本当に大切ですわ……私、ジュンコがいないと生きていけないかも……」普段の偉そうな態度が消えて、しおらしい目でじっと見つめてくる。ジュンコは二人に挟まれて、慌てふためく。「え、ええ!? 二人とも急にどうしたの!?」どうやらポーションの効果は「友情強化」ではなく、「好意増幅」だったらしい。飲んだ者同士の相手への好意が、制御不能レベルまで爆発する。キョウカはジュンコを抱きしめたまま離さず、コウミはジュンコの手を握ったまま離さない。教室の生徒たちがざわつき始める。「なんか……あの三人、いつもよりベタベタしてる?」「ポーションのせい? 魔道のやつ、またやらかしたな」ジュンコは真っ赤になりながら、必死に二人をなだめようとするが、効果はさらに強まるばかり。結局、昼休みが終わるまで、二人はジュンコから離れなかった。チャイムが鳴り、ようやく効果が薄れ始めた頃――。キョウカが照れくさそうに頭を掻き、「……なんか、急に暴走しちまったな。悪いジュンコ」コウミも、顔を赤くして、「私も……つい本音が……いえ、失礼しましたわ!」ジュンコは二人を見て、くすっと笑った。「ううん……二人にそんな風に思ってもらえて、嬉しかったよ。ポーションのせいかもしれないけど……本心もあるよね?」二人は同時に俯いて、小さく頷いた。遠くの教室の隅で、魔道が満足げに笑っている。「くすくす……ちょっと効きすぎちゃったかしら。でも、いいデータが取れたわ。次はもっと調整して……」文化祭の準備は、まだ始まったばかり。魔道のポーションがまた絡む日も、きっと遠くないだろう。ジュンコの昼休みは、今日も少しだけドキドキで終わった。
(第9話 終わり)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

降る雪は沈む蒼の心を優しく包む〜冴えない根暗な陰キャぼっちの成り上がりリア充化プロジェクト〜

朔月カイト
恋愛
三年前に起きたある事件により心に大きな傷を負って、家族と近しい者以外には心を閉ざしてしまい、周りから遠ざけられるようになってしまった緋本蒼介。 高校二年生になってもそれは変わらず、ひっそりと陰に潜む様にして生活していた蒼介だが、ネット上で知り合ったある人物とオフ会をする事になり、その出会いが、彼の暗い高校生活を一変させる転機となる。 果たして彼は、見事に成り上がって立派なリア充になる事が出来るのか──。 冴えない根暗な陰キャぼっちのサクセスストーリー。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...