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第二章・激闘
第21話 次郎長と勝蔵(三)
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勝蔵と玉五郎は、ひとしきり賭場の様子を見て回ったあと、ここからやや離れたところにあるもう一つの鰍沢の賭場へ向かった。そこはここと違ってもっと安く遊べる賭場で、庶民向けの賭場だった。
おりはの賭場では最低でも一両の金が要る。普通の人間がそうやすやすと通える賭場ではない。幕末の貨幣価値を現代に換算するのは難しいが一両の価値は今でいうと大体十万円以上はしたようで、現代人がパチンコ屋へ行くような軽いノリで行ける場所ではない。それで、普通の庶民が足を運べるような低相場の賭場は、別の場所に分けて作ったのだ。
二人はそこへ向かって歩いている。歩きながら玉五郎が勝蔵に話しかけた。
「あのアマ、女のくせに親分に向かって“勝蔵さん”などと、いつも偉そうな口を叩きやがる。安五郎さんの後ろ盾がなければ張り倒してやるところだ」
「まあ、良いじゃねえか玉五郎。実際あの女が俺たちよりも稼いでいるのは事実だ。口だけでかいのならまだしも、ちゃんとやることはやってるんだから文句の言いようもねえよ」
「しかしそれだって、俺たちが体を張って賭場を守ってやってるからじゃないですか。それを自分だけの手柄のように思っていやがる。まったく気に入らねえ女だ。……それはそうと、尾張で久八親分の知り合いの久六とかいうお人が殺されたそうですな。なんでも殺ったのは清水の次郎長という男だとか……」
「ああ。その次郎長のことは旅回りをした時に三州平井の亀吉から話を聞いたことがある。それで、そのあと次郎長はこの鰍沢で祐天ともやり合って、その時は尻尾をまいて駿河へ逃げて行った。亀吉の話では『誰にでもすぐ嚙みつく野郎だ』って言ってたが、噂通り、血の気の多い奴らしい。確か久六は次郎長の兄弟分だったはずだが、その兄弟分を殺しちまうぐらいだから、相当あぶない野郎だろうよ」
「でも祐天とも敵対しているってことは、そいつは俺たちにとって味方にもなりうるって事ですかねえ?」
「さあな。亀吉の予想では『いずれ敵になるだろう』って言ってたぜ。どのみち兄弟分を殺しちまうようなイカれた野郎だ。もし万一味方になったとしても、いつ寝首をかかれるか分かったもんじゃねえ」
「なんでもその久六ってお人は目明しだったんでしょう?尾張様のところの目明しを殺したとなれば大事だ。きっと今ごろは“長い草鞋”を履いて、どこか別のところへ逃げちまってるんでしょうねえ」
「そうだろうな。どこへ逃げたか知らねえが、まさかこの甲州へは来ねえだろうよ。なんせ祐天にも追われてるはずだからな、次郎長は」
こうして二人は、もう一つの賭場へ向かって歩きつづけていた。
その二人が向かっている賭場では、黒駒一家から送り込まれた猪之吉と兼吉が用心棒として賭場の一角で控えていた。
広間の真ん中では丁半博打の盆茣蓙が置かれ、その周囲で二十人ほどの男たちが駒札を張って勝負に熱中している。客は庶民らしい身なりの男ばかりで、張っている駒札も普通の安っぽい代物だ。猪之吉と兼吉はその隣りの部屋で控え、客の様子を観察していた。
「暇だなあ、猪之ちゃんよ」
と兼吉が語りかけた。
「どうせまた、兼吉さんは自分が打ちたくて、うずうずしているんでしょ」
と猪之吉が応える。
「当たり前だ。せっかく目の前に鴨がいるっていうのに、こうしてジッとしているなんてもったいねえ話だ。中でもホラ、あの男を見てみろよ、猪之ちゃん。チビだがガタイはがっしりした、あのブサイクな男だ。あいつはよほどの博打狂いのようだが、さっきからずっと負けっぱなしだ。本当に下手くそな奴だなあ。俺もあいつを鴨にして勝ちまくってみたいもんだ」
「また始まった。俺たちの仕事は賭場荒らしを防ぐことですよ」
「ふん。賭場荒らしが狙うとすれば、金がいっぱいあるあっちの賭場を狙うだろうよ。もっとも、だからあっちは用心棒も大勢いて、こっちは俺たち二人だけだがな」
「まったく困ったもんですねえ。綱五郎さんが勝手に女郎買いに行っちゃったから、俺たち二人だけになっちまった」
「本当になあ。綱のバカ野郎。こんな時に何かあったらどうすんだよ……。おい、猪之ちゃんよ。もし万一ケンカが始まったら、その時はお前に任せるからな。俺はケンカは苦手だ」
「おや?ふふふっ。兼吉さんが言ってたあのブサイクな男、また負けたみたいですよ。頭をかきむしって悔しがってらあ」
「よーし、じゃあ俺も一つ、今日の運勢を占ってみるかな」
そう言って兼吉は、いつもの癖の四文銭を使った占い、すなわち四文銭を親指でピンと空中にはじいて裏か表か見極める占いをやってみた。
銭をつかんだ拳を開いてみると、裏だった。
「こりゃいけねえ。悪い目が出やがった。どうも今日の運勢はイマイチのようだ」
などと、そんなことをしているうちに盆茣蓙では次々と勝負が進んでいった。
その時おもむろに一人の男が、
「イカサマだァ!こりゃあイカサマのサイコロを使っているに違えねえ!」
と叫んで立ち上がり、それに合わせるように近くにいた二人の男も「そうだ、そうだ!イカサマだ!」と呼応して立ち上がった。そして別室に控えていた、その仲間と思われる三人の男も加勢すると言って加わって来た。
いかにも賭場荒らしの典型的な場面である。
それで、すぐに猪之吉と兼吉が間に割って入り、
「お客さん、無茶なことを言っちゃいけねえ」
と事を仲裁しようとした。
しかし男たちは構わず、猪之吉たちに殴りかかった。
二対六の多勢に無勢だ。しかも兼吉はすでに逃げ腰の姿勢になっている。中盆と壺振の男はおろおろするばかりで役に立たない。
「俺たちはこの賭場を取り返しに来た祐天一家の者だ!ここの賭場は俺たちがもらい受けるぜ!」
そう言いながら六人は室内で暴れまくり、まるで灰神楽が立つような大騒ぎとなった。むろん盆茣蓙の周りに座っていたお客は皆、室外へ逃げ去った。
と思ったらそのとき、四人の男たちが室内へ乱入して来た。
殴られてボコボコにされている猪之吉は、
「さらに敵の新手が加わってきたのか」
と絶望的な気持ちになった。
ところがその四人は、祐天一家の六人へ殴りかかったのだった。
この四人が実に強い。特に大男と小男の二人が強い。
四人は次郎長たちだった。
大男は大政で、小男は石松である。彼らは次々と祐天一家の男たちを叩きのめした。
これで形勢が逆転した。
猪之吉と兼吉は脇に置いてあった長脇差を持って来て、それを抜いて祐天一家の連中を一喝した。
「てめえら、これ以上暴れやがると叩き斬るぞ!」
祐天側は、敵の用心棒が手薄なスキを突いてケンカを仕掛けただけのことで、事件を刃傷沙汰にする程の覚悟はなかった。しかも敵の用心棒がまだ四人もいたと分かった以上、無理押しはできない、とあきらめて退散して行った。
その時ちょうど、勝蔵と玉五郎が賭場のすぐ近くまで来ていた。
近くの路上にいた勝蔵は、賭場から男たちが逃げて行くのを見かけた。
何事があったんだ?
と勝蔵が急いで建物の中へ駆け入ると、ケンカが終わった直後だった。
猪之吉と兼吉は殴打によって顔が腫れあがっており、室内は盆茣蓙がぐちゃぐちゃになった状態だった。
勝蔵が二人に事情を聞くと、かくかくしかじかでケンカになった、との説明があった。それで勝蔵も今しがた起きた出来事について理解した。
そしてその四人の男たちに礼を言った。
「どちらのお方か存じませんが、この二人の助太刀をして頂き、心より御礼を申し上げる。よろしければお名前をお聞かせ願いたい」
これに次郎長が答えた。
「名乗るほどの者ではない。あの連中があまりにも無法だったので、叩き出してやったまでのこと」
「いや、何かお礼をしないと、こちらの気が済みません。ぜひお名前をお聞かせ願いたい」
「実は手前もあなた方と同じく博打を生業にする者。先を急ぐ旅打ちの身なれば、余計なお気遣いは無用に願いたい」
そこで猪之吉が勝蔵に耳打ちして、石松が酷く博打で負けていた事を伝えた。すると勝蔵は兼吉に言って、その負け分にいくらか上乗せして十両をテラ銭箱から持って来させた。
「聞けばお連れの方が酷く負けが込んでいたとのこと。その分をお返しするので、この金をぜひお納めいただきたい」
と言って勝蔵が金を差し出すと、石松は喜んで金を受け取った。こういう形であれば次郎長としても特に異存はない。
実のところ、兇状持ちの次郎長としては急いで三日市場の政吉の家へ行きたいと思っていたのだが、博打好きの石松がどうしても賭場へ寄りたいというので、この日、ちょうど立ち寄った鰍沢で賭場に入ったのだった。
博打を打っていたのは石松だけで次郎長、大政、八五郎は別室で待っていた。すると突然石松が「我らの仇敵、祐天仙之助の一味が賭場で暴れている」と知らせに来たので、次郎長たち四人が仙之助の子分に殴りかかったのだ。
つまり、別に猪之吉たちを助けたかったわけではなく、以前この鰍沢で仙之助たちに仲間三人を殺されたこともあって、その仕返しをしたかっただけのことだ。長脇差を抜かなかったのは、こんなところで刃傷沙汰を起こして仙之助たち目明しに居所を知られては困るからだ。
そして次郎長が勝蔵に名前を明かさないのも、目明しに追われている身だからである。
このあと勝蔵は賭場の守りを固めるために近くにいる子分たちを呼び出すよう命じ、勝手に遊女屋へ行った綱五郎も連れ戻すように言い、賭場の片付けと再開の準備をするよう指示した。
その様子を脇で見ている次郎長は、
(そうか。この男が噂の黒駒勝蔵か)
と、初めて見た勝蔵の姿をじっくりと眺めていた。
そしてその人物の度量を見極めようとしていた。それはすなわち、
(将来、敵とすべき男か、味方とすべき男か)
を見極めるということだ。
勝蔵は子分たちに一通りの指示を出し終えると、次郎長たちを飯に誘った。
「この辺りには大した飯屋もないが、市川大門まで行けばそこそこの飯屋がある。聞けば塩山まで行かれるとのこと。であれば、市川はちょうど通り道。そこでお礼の馳走を差し上げたい」
次郎長は、素性を知られたくないということもあってあまり乗り気じゃなかったが、食い物には目がない石松が行くと言ってきかないので結局、お互い連れ立って市川大門まで行くことになった。そして勝蔵には玉五郎が付き添うことになった。
両者は鰍沢から一里ほど北東にある市川大門へ向かった。
勝蔵が四人を食事に誘ったのはお礼のためだけではない。
この男たちに興味があった。
特にその首領と見られる、いかつい顔をした中年の男に興味があった。
鰍沢にいる段階で勝蔵がその男に、
「お名前をお聞かせ願えないとなると、あなたのことを何と呼べばよろしいですか?」
と聞くと、その男はしばらく沈思黙考したすえに、
「じゃあ、駿河人なので“駿河次郎”とでも名乗っておきましょう」
と答えた。
これを聞いて勝蔵は、
(じゃあ、あんたらは義経主従の逃避行か?そのでかい男(大政)は弁慶で、小さい男(石松)は義経か?)
と苦笑したい気持ちがわき起こったのと同時に、どうも先だってからこの四人の様子を見るにつけ、
(もしや、こいつらは駿河から逃げて来た、次郎長一味なんじゃないのか?“駿河次郎”という名前からしても、実にあやしい)
と直感的に思い始めていた。
(もしそうなら、これを機にどんな男なのか見ておきたい。やはり「誰にでもすぐ嚙みつく危ない野郎」なのか?あるいは祐天を相手に共闘できる男なのか?それをぜひ見極めておきたい)
そう思って、わざわざ食事に誘ったのだった。
勝蔵と次郎長は肩を並べて歩いた。
歩きながら、ふと、次郎長が右手の方を振り向き、それからつぶやいた。
「やはり、富士のお山は見えぬか……」
富士山のことではひとかたならぬ思いがある勝蔵が、これに応えた。
「さよう。ここからでは見えませぬな」
「甲州へ来るといつも思うが、ここは富士のお山が見えづらいのが残念だ」
「郡内へ行けば、すぐ近くに見えるでしょう」
「郡内?ああ、吉田とか川口のことか……。でもあそこは田舎だろう?」
「甲府からでも見える」
「確かに甲府からでも見えるが、頭の辺りしか見えない裏富士だろう?」
「ふん。駿河のお人はいつもそう言うが、我々甲州人は裏富士とは言わぬ。富士のお山が尻丸出しでは、きまりが悪いというものだ。山のお尻が隠れるこちらが正面なのだ」
「ハッハッハ。そうは言っても富士のお山と言えば、やはり世間では駿河の名物というのが相場だ」
「何言ってんだ。富士のお山と言えば甲州に決まっているだろう。江戸から富士講で来る人は皆、郡内を通って来るのを知らないか」
「……よそう。駿河人と甲州人が富士山の話をすると、いつもこれだ。キリがねえ」
「まったくだ。やめとこう」
両者の一行は笛吹川に沿うように市川方面へ歩きつづけている。
笛吹川を眺めながら次郎長が再びつぶやいた。
「この笛吹川は信玄公が堤を作って治水を始めたんだってなあ」
「さよう。今、我々甲州人がこうして豊かに暮らせるのは、すべて信玄公のおかげだ」
「確かに信玄公の頃の甲州は凄かったなあ」
「いずれまた、信玄公のようなお人が現れて、甲州人が活躍する時代が来るさ」
「でも甲州には海がないから、それはちょっと難しいんじゃねえかな」
「ふん。今でこそ甲州は駿河ほど栄えてないが、信玄公の頃は、駿河も武田領だったではないか」
「おっと。それは禁句だぜ。俺は駿河人だから義元公びいきなんだ」
このセリフを受けて勝蔵は、いくぶん冷ややかな目で次郎長を見て、
「ふ~ん。そりゃあ、お珍しい」
と言った。その言外には「大軍を率いながら桶狭間で信長の小部隊に討ち取られた愚将じゃないか」という響きがある。
「へん。そういう武田家だって信長に攻め滅ぼされたじゃねえか」
「おい。それこそ我々甲州人には禁句だ。信玄公を貶めると許さんぞ」
「何を言ってやがる。そっちが先に義元公をバカにしたんじゃねえか」
「何を!」
「何だ!」
と二人の会話が激しかけたところで、
「まあまあ、お二人とも、埒も無いことで大人げない」
と玉五郎が勝蔵を、大政が次郎長をなだめるために間へ割って入った。
それで二人は一応、少し気持ちを落ち着けた。
しかしそのとき、石松が次郎長に言った。
「だけど俺は感心しちゃったよ。親分は俺と同じで字が読めねえのに、昔の難しいことをいろいろと知ってるんだなあ」
これを聞いて次郎長が石松を怒鳴った。
「てめえ、石!なんてこと言いやがる!」
勝蔵は意外なことを耳にして、思わず振り向いて次郎長の顔を見てしまった。
(なんだ、文盲か)
という蔑みの表情が、自然と顔に出てしまった。
これが決定的だった。
この瞬間に、次郎長の勝蔵に対する憎悪は確定した。
実は次郎長は漢字が読めない。
それでもそれなりの一般教養があるのは「耳学問」で知識を吸収しているからだ。
次郎長が漢字を読めないのは、子どもの頃に寺子屋で暴れて破門され、それ以降まったく勉強しなかったからだ。
後年、次郎長が有名になるのはすべて山岡鉄舟と天田愚庵のおかげと言っても過言ではないが、その山岡と次郎長がやり取りした手紙が今も残っており、全文ひらがなで書いてある。漢字を読み書きできない次郎長がひらがなで書くのは当然のこととして、山岡も次郎長のために全文ひらがなで書いている。
ただしこれは次郎長に限ったことではなく、そもそも博徒というのはほとんどがこういう人間だと思って間違いはない。
勝蔵や安五郎のように漢字を読み書きできるほうが例外的なのだ。
それは二人とも名主の家で育ったという環境のおかげであり、また武藤家の学者親子と知り合いだったという影響もあっただろう。
結局、このあと次郎長は勝蔵からの食事の誘いを断って、市川大門を通り過ぎてそのまま塩山方面へ去って行った。
勝蔵は、確証を得るほどではなかったにせよ、
(やはりあれは次郎長一行だったのだろう)
という思いを強くした。
そして勝蔵と次郎長はお互いに相手のことを、
(いけ好かねえ野郎だ)
と嫌悪した。
とはいえ、この二人が数年後、お互いに血で血を洗う戦いをくり広げることになろうとは、神ならぬ身では予想できるはずもなかった。
おりはの賭場では最低でも一両の金が要る。普通の人間がそうやすやすと通える賭場ではない。幕末の貨幣価値を現代に換算するのは難しいが一両の価値は今でいうと大体十万円以上はしたようで、現代人がパチンコ屋へ行くような軽いノリで行ける場所ではない。それで、普通の庶民が足を運べるような低相場の賭場は、別の場所に分けて作ったのだ。
二人はそこへ向かって歩いている。歩きながら玉五郎が勝蔵に話しかけた。
「あのアマ、女のくせに親分に向かって“勝蔵さん”などと、いつも偉そうな口を叩きやがる。安五郎さんの後ろ盾がなければ張り倒してやるところだ」
「まあ、良いじゃねえか玉五郎。実際あの女が俺たちよりも稼いでいるのは事実だ。口だけでかいのならまだしも、ちゃんとやることはやってるんだから文句の言いようもねえよ」
「しかしそれだって、俺たちが体を張って賭場を守ってやってるからじゃないですか。それを自分だけの手柄のように思っていやがる。まったく気に入らねえ女だ。……それはそうと、尾張で久八親分の知り合いの久六とかいうお人が殺されたそうですな。なんでも殺ったのは清水の次郎長という男だとか……」
「ああ。その次郎長のことは旅回りをした時に三州平井の亀吉から話を聞いたことがある。それで、そのあと次郎長はこの鰍沢で祐天ともやり合って、その時は尻尾をまいて駿河へ逃げて行った。亀吉の話では『誰にでもすぐ嚙みつく野郎だ』って言ってたが、噂通り、血の気の多い奴らしい。確か久六は次郎長の兄弟分だったはずだが、その兄弟分を殺しちまうぐらいだから、相当あぶない野郎だろうよ」
「でも祐天とも敵対しているってことは、そいつは俺たちにとって味方にもなりうるって事ですかねえ?」
「さあな。亀吉の予想では『いずれ敵になるだろう』って言ってたぜ。どのみち兄弟分を殺しちまうようなイカれた野郎だ。もし万一味方になったとしても、いつ寝首をかかれるか分かったもんじゃねえ」
「なんでもその久六ってお人は目明しだったんでしょう?尾張様のところの目明しを殺したとなれば大事だ。きっと今ごろは“長い草鞋”を履いて、どこか別のところへ逃げちまってるんでしょうねえ」
「そうだろうな。どこへ逃げたか知らねえが、まさかこの甲州へは来ねえだろうよ。なんせ祐天にも追われてるはずだからな、次郎長は」
こうして二人は、もう一つの賭場へ向かって歩きつづけていた。
その二人が向かっている賭場では、黒駒一家から送り込まれた猪之吉と兼吉が用心棒として賭場の一角で控えていた。
広間の真ん中では丁半博打の盆茣蓙が置かれ、その周囲で二十人ほどの男たちが駒札を張って勝負に熱中している。客は庶民らしい身なりの男ばかりで、張っている駒札も普通の安っぽい代物だ。猪之吉と兼吉はその隣りの部屋で控え、客の様子を観察していた。
「暇だなあ、猪之ちゃんよ」
と兼吉が語りかけた。
「どうせまた、兼吉さんは自分が打ちたくて、うずうずしているんでしょ」
と猪之吉が応える。
「当たり前だ。せっかく目の前に鴨がいるっていうのに、こうしてジッとしているなんてもったいねえ話だ。中でもホラ、あの男を見てみろよ、猪之ちゃん。チビだがガタイはがっしりした、あのブサイクな男だ。あいつはよほどの博打狂いのようだが、さっきからずっと負けっぱなしだ。本当に下手くそな奴だなあ。俺もあいつを鴨にして勝ちまくってみたいもんだ」
「また始まった。俺たちの仕事は賭場荒らしを防ぐことですよ」
「ふん。賭場荒らしが狙うとすれば、金がいっぱいあるあっちの賭場を狙うだろうよ。もっとも、だからあっちは用心棒も大勢いて、こっちは俺たち二人だけだがな」
「まったく困ったもんですねえ。綱五郎さんが勝手に女郎買いに行っちゃったから、俺たち二人だけになっちまった」
「本当になあ。綱のバカ野郎。こんな時に何かあったらどうすんだよ……。おい、猪之ちゃんよ。もし万一ケンカが始まったら、その時はお前に任せるからな。俺はケンカは苦手だ」
「おや?ふふふっ。兼吉さんが言ってたあのブサイクな男、また負けたみたいですよ。頭をかきむしって悔しがってらあ」
「よーし、じゃあ俺も一つ、今日の運勢を占ってみるかな」
そう言って兼吉は、いつもの癖の四文銭を使った占い、すなわち四文銭を親指でピンと空中にはじいて裏か表か見極める占いをやってみた。
銭をつかんだ拳を開いてみると、裏だった。
「こりゃいけねえ。悪い目が出やがった。どうも今日の運勢はイマイチのようだ」
などと、そんなことをしているうちに盆茣蓙では次々と勝負が進んでいった。
その時おもむろに一人の男が、
「イカサマだァ!こりゃあイカサマのサイコロを使っているに違えねえ!」
と叫んで立ち上がり、それに合わせるように近くにいた二人の男も「そうだ、そうだ!イカサマだ!」と呼応して立ち上がった。そして別室に控えていた、その仲間と思われる三人の男も加勢すると言って加わって来た。
いかにも賭場荒らしの典型的な場面である。
それで、すぐに猪之吉と兼吉が間に割って入り、
「お客さん、無茶なことを言っちゃいけねえ」
と事を仲裁しようとした。
しかし男たちは構わず、猪之吉たちに殴りかかった。
二対六の多勢に無勢だ。しかも兼吉はすでに逃げ腰の姿勢になっている。中盆と壺振の男はおろおろするばかりで役に立たない。
「俺たちはこの賭場を取り返しに来た祐天一家の者だ!ここの賭場は俺たちがもらい受けるぜ!」
そう言いながら六人は室内で暴れまくり、まるで灰神楽が立つような大騒ぎとなった。むろん盆茣蓙の周りに座っていたお客は皆、室外へ逃げ去った。
と思ったらそのとき、四人の男たちが室内へ乱入して来た。
殴られてボコボコにされている猪之吉は、
「さらに敵の新手が加わってきたのか」
と絶望的な気持ちになった。
ところがその四人は、祐天一家の六人へ殴りかかったのだった。
この四人が実に強い。特に大男と小男の二人が強い。
四人は次郎長たちだった。
大男は大政で、小男は石松である。彼らは次々と祐天一家の男たちを叩きのめした。
これで形勢が逆転した。
猪之吉と兼吉は脇に置いてあった長脇差を持って来て、それを抜いて祐天一家の連中を一喝した。
「てめえら、これ以上暴れやがると叩き斬るぞ!」
祐天側は、敵の用心棒が手薄なスキを突いてケンカを仕掛けただけのことで、事件を刃傷沙汰にする程の覚悟はなかった。しかも敵の用心棒がまだ四人もいたと分かった以上、無理押しはできない、とあきらめて退散して行った。
その時ちょうど、勝蔵と玉五郎が賭場のすぐ近くまで来ていた。
近くの路上にいた勝蔵は、賭場から男たちが逃げて行くのを見かけた。
何事があったんだ?
と勝蔵が急いで建物の中へ駆け入ると、ケンカが終わった直後だった。
猪之吉と兼吉は殴打によって顔が腫れあがっており、室内は盆茣蓙がぐちゃぐちゃになった状態だった。
勝蔵が二人に事情を聞くと、かくかくしかじかでケンカになった、との説明があった。それで勝蔵も今しがた起きた出来事について理解した。
そしてその四人の男たちに礼を言った。
「どちらのお方か存じませんが、この二人の助太刀をして頂き、心より御礼を申し上げる。よろしければお名前をお聞かせ願いたい」
これに次郎長が答えた。
「名乗るほどの者ではない。あの連中があまりにも無法だったので、叩き出してやったまでのこと」
「いや、何かお礼をしないと、こちらの気が済みません。ぜひお名前をお聞かせ願いたい」
「実は手前もあなた方と同じく博打を生業にする者。先を急ぐ旅打ちの身なれば、余計なお気遣いは無用に願いたい」
そこで猪之吉が勝蔵に耳打ちして、石松が酷く博打で負けていた事を伝えた。すると勝蔵は兼吉に言って、その負け分にいくらか上乗せして十両をテラ銭箱から持って来させた。
「聞けばお連れの方が酷く負けが込んでいたとのこと。その分をお返しするので、この金をぜひお納めいただきたい」
と言って勝蔵が金を差し出すと、石松は喜んで金を受け取った。こういう形であれば次郎長としても特に異存はない。
実のところ、兇状持ちの次郎長としては急いで三日市場の政吉の家へ行きたいと思っていたのだが、博打好きの石松がどうしても賭場へ寄りたいというので、この日、ちょうど立ち寄った鰍沢で賭場に入ったのだった。
博打を打っていたのは石松だけで次郎長、大政、八五郎は別室で待っていた。すると突然石松が「我らの仇敵、祐天仙之助の一味が賭場で暴れている」と知らせに来たので、次郎長たち四人が仙之助の子分に殴りかかったのだ。
つまり、別に猪之吉たちを助けたかったわけではなく、以前この鰍沢で仙之助たちに仲間三人を殺されたこともあって、その仕返しをしたかっただけのことだ。長脇差を抜かなかったのは、こんなところで刃傷沙汰を起こして仙之助たち目明しに居所を知られては困るからだ。
そして次郎長が勝蔵に名前を明かさないのも、目明しに追われている身だからである。
このあと勝蔵は賭場の守りを固めるために近くにいる子分たちを呼び出すよう命じ、勝手に遊女屋へ行った綱五郎も連れ戻すように言い、賭場の片付けと再開の準備をするよう指示した。
その様子を脇で見ている次郎長は、
(そうか。この男が噂の黒駒勝蔵か)
と、初めて見た勝蔵の姿をじっくりと眺めていた。
そしてその人物の度量を見極めようとしていた。それはすなわち、
(将来、敵とすべき男か、味方とすべき男か)
を見極めるということだ。
勝蔵は子分たちに一通りの指示を出し終えると、次郎長たちを飯に誘った。
「この辺りには大した飯屋もないが、市川大門まで行けばそこそこの飯屋がある。聞けば塩山まで行かれるとのこと。であれば、市川はちょうど通り道。そこでお礼の馳走を差し上げたい」
次郎長は、素性を知られたくないということもあってあまり乗り気じゃなかったが、食い物には目がない石松が行くと言ってきかないので結局、お互い連れ立って市川大門まで行くことになった。そして勝蔵には玉五郎が付き添うことになった。
両者は鰍沢から一里ほど北東にある市川大門へ向かった。
勝蔵が四人を食事に誘ったのはお礼のためだけではない。
この男たちに興味があった。
特にその首領と見られる、いかつい顔をした中年の男に興味があった。
鰍沢にいる段階で勝蔵がその男に、
「お名前をお聞かせ願えないとなると、あなたのことを何と呼べばよろしいですか?」
と聞くと、その男はしばらく沈思黙考したすえに、
「じゃあ、駿河人なので“駿河次郎”とでも名乗っておきましょう」
と答えた。
これを聞いて勝蔵は、
(じゃあ、あんたらは義経主従の逃避行か?そのでかい男(大政)は弁慶で、小さい男(石松)は義経か?)
と苦笑したい気持ちがわき起こったのと同時に、どうも先だってからこの四人の様子を見るにつけ、
(もしや、こいつらは駿河から逃げて来た、次郎長一味なんじゃないのか?“駿河次郎”という名前からしても、実にあやしい)
と直感的に思い始めていた。
(もしそうなら、これを機にどんな男なのか見ておきたい。やはり「誰にでもすぐ嚙みつく危ない野郎」なのか?あるいは祐天を相手に共闘できる男なのか?それをぜひ見極めておきたい)
そう思って、わざわざ食事に誘ったのだった。
勝蔵と次郎長は肩を並べて歩いた。
歩きながら、ふと、次郎長が右手の方を振り向き、それからつぶやいた。
「やはり、富士のお山は見えぬか……」
富士山のことではひとかたならぬ思いがある勝蔵が、これに応えた。
「さよう。ここからでは見えませぬな」
「甲州へ来るといつも思うが、ここは富士のお山が見えづらいのが残念だ」
「郡内へ行けば、すぐ近くに見えるでしょう」
「郡内?ああ、吉田とか川口のことか……。でもあそこは田舎だろう?」
「甲府からでも見える」
「確かに甲府からでも見えるが、頭の辺りしか見えない裏富士だろう?」
「ふん。駿河のお人はいつもそう言うが、我々甲州人は裏富士とは言わぬ。富士のお山が尻丸出しでは、きまりが悪いというものだ。山のお尻が隠れるこちらが正面なのだ」
「ハッハッハ。そうは言っても富士のお山と言えば、やはり世間では駿河の名物というのが相場だ」
「何言ってんだ。富士のお山と言えば甲州に決まっているだろう。江戸から富士講で来る人は皆、郡内を通って来るのを知らないか」
「……よそう。駿河人と甲州人が富士山の話をすると、いつもこれだ。キリがねえ」
「まったくだ。やめとこう」
両者の一行は笛吹川に沿うように市川方面へ歩きつづけている。
笛吹川を眺めながら次郎長が再びつぶやいた。
「この笛吹川は信玄公が堤を作って治水を始めたんだってなあ」
「さよう。今、我々甲州人がこうして豊かに暮らせるのは、すべて信玄公のおかげだ」
「確かに信玄公の頃の甲州は凄かったなあ」
「いずれまた、信玄公のようなお人が現れて、甲州人が活躍する時代が来るさ」
「でも甲州には海がないから、それはちょっと難しいんじゃねえかな」
「ふん。今でこそ甲州は駿河ほど栄えてないが、信玄公の頃は、駿河も武田領だったではないか」
「おっと。それは禁句だぜ。俺は駿河人だから義元公びいきなんだ」
このセリフを受けて勝蔵は、いくぶん冷ややかな目で次郎長を見て、
「ふ~ん。そりゃあ、お珍しい」
と言った。その言外には「大軍を率いながら桶狭間で信長の小部隊に討ち取られた愚将じゃないか」という響きがある。
「へん。そういう武田家だって信長に攻め滅ぼされたじゃねえか」
「おい。それこそ我々甲州人には禁句だ。信玄公を貶めると許さんぞ」
「何を言ってやがる。そっちが先に義元公をバカにしたんじゃねえか」
「何を!」
「何だ!」
と二人の会話が激しかけたところで、
「まあまあ、お二人とも、埒も無いことで大人げない」
と玉五郎が勝蔵を、大政が次郎長をなだめるために間へ割って入った。
それで二人は一応、少し気持ちを落ち着けた。
しかしそのとき、石松が次郎長に言った。
「だけど俺は感心しちゃったよ。親分は俺と同じで字が読めねえのに、昔の難しいことをいろいろと知ってるんだなあ」
これを聞いて次郎長が石松を怒鳴った。
「てめえ、石!なんてこと言いやがる!」
勝蔵は意外なことを耳にして、思わず振り向いて次郎長の顔を見てしまった。
(なんだ、文盲か)
という蔑みの表情が、自然と顔に出てしまった。
これが決定的だった。
この瞬間に、次郎長の勝蔵に対する憎悪は確定した。
実は次郎長は漢字が読めない。
それでもそれなりの一般教養があるのは「耳学問」で知識を吸収しているからだ。
次郎長が漢字を読めないのは、子どもの頃に寺子屋で暴れて破門され、それ以降まったく勉強しなかったからだ。
後年、次郎長が有名になるのはすべて山岡鉄舟と天田愚庵のおかげと言っても過言ではないが、その山岡と次郎長がやり取りした手紙が今も残っており、全文ひらがなで書いてある。漢字を読み書きできない次郎長がひらがなで書くのは当然のこととして、山岡も次郎長のために全文ひらがなで書いている。
ただしこれは次郎長に限ったことではなく、そもそも博徒というのはほとんどがこういう人間だと思って間違いはない。
勝蔵や安五郎のように漢字を読み書きできるほうが例外的なのだ。
それは二人とも名主の家で育ったという環境のおかげであり、また武藤家の学者親子と知り合いだったという影響もあっただろう。
結局、このあと次郎長は勝蔵からの食事の誘いを断って、市川大門を通り過ぎてそのまま塩山方面へ去って行った。
勝蔵は、確証を得るほどではなかったにせよ、
(やはりあれは次郎長一行だったのだろう)
という思いを強くした。
そして勝蔵と次郎長はお互いに相手のことを、
(いけ好かねえ野郎だ)
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