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プロローグ
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大島町駅から二分、10のエリアで構成される少し広めの公園を歩いていた、彼女の名は桜木ユキ。近所にある大学に通う現役バリバリ女子大生。
秋口のまだ暖かい陽気と強い陽射しに晒されながら、日の光を避けられそうな、大樹の麓のベンチを見つけるが、そこにはすでに一人の少女が座っていた。
ユキは少女に軽く会釈し、少女も会釈を返す。それ以上はお互い関心を持つこともなくベンチの両端に座り黙々と読書を楽しんでいた。
しばらくして読書に夢中になっていたユキは、肩に何かが当たった感触を覚えた。
見ると、少女が居眠りをして寄りかかっているのに気づいた。
「むー」
読書を遮られて少し不快感をあらわにしてしまうユキ。
だけど、ユキは自身の受験に疲れていた頃を思い出し、嫌な思いをしたことを心の中で謝った。彼女の頭をひざに乗せ、「ゆっくりお休みなさい」と言いそっと髪を撫でる。
見ず知らずの少女にこんなことをしている自分に少し驚きながら、読書を続ける。
しばらくして彼女は目を覚まし、慌てて起きようとする。
「大丈夫、ゆっくり起きて」
「はい、ごめんなさい。私どんだけ眠かったんだろう……」
「気にしないで。あと、ひざに乗せたのは私だから。むしろ気を悪くしたらごめんなさい」
「いいえ、ありがとうございます」
「受験疲れかしら」
「いえ、バイトはじめたせいかも」
「まあ。私高校時代はバイトしたことがなくて……ねえ、近くにお気に入りのカフェがあるの、よかったら一緒にどうかしら」
「えー、お姉さんナンパですか」
「ああっ、これってそうなのかな、やだ私、女の子をナンパしちゃったの?」
二人は笑いあいながら、ベンチに置いた本を片付けてカフェ「マリーナ」に向かう。
「あっここ私もたまに来てるんです」
「ええ、そうだったの。もしかしたら会ったことあるのかもね」
店内に客は多かったが幸いテーブルに空きがあり、二人はくつろいだ。
「そうだ、自己紹介しましょうか。私は桜木ユキ、そこの大学の二年生。趣味はー最近はガーデニングかな?」
「龍野香子です。趣味は読書かな」
やがて二人の前にアイスコーヒーが届く。
「ユキさんってブラック派なんですね、かっこいいなあ」
「コーヒーなんて好みでいいのよ。砂糖とミルクをふんだんに入れるからって恥じることじゃないもの」
「あ、そうですね……」
「香りを好む人、味を好む人、お店の雰囲気を楽しむ人、いろんな人が肩肘はらずに素直な気持ちで好きなことを楽しめる社会になるといいと思うの」
「わ、私も、それが一番だと……」
ユキは、少し硬い雰囲気になって緊張する香子に気づく。
「あ……ごめんね、いきなりこんな話して。あ、お勘定は私が」
「えっでも」
「いいから、この優しいお姉さんに甘えなさい」
「はい、ありがとうございます」
二人は連絡先を交換すると店先で別れを告げ、また会える日を楽しみにしていた。
秋口のまだ暖かい陽気と強い陽射しに晒されながら、日の光を避けられそうな、大樹の麓のベンチを見つけるが、そこにはすでに一人の少女が座っていた。
ユキは少女に軽く会釈し、少女も会釈を返す。それ以上はお互い関心を持つこともなくベンチの両端に座り黙々と読書を楽しんでいた。
しばらくして読書に夢中になっていたユキは、肩に何かが当たった感触を覚えた。
見ると、少女が居眠りをして寄りかかっているのに気づいた。
「むー」
読書を遮られて少し不快感をあらわにしてしまうユキ。
だけど、ユキは自身の受験に疲れていた頃を思い出し、嫌な思いをしたことを心の中で謝った。彼女の頭をひざに乗せ、「ゆっくりお休みなさい」と言いそっと髪を撫でる。
見ず知らずの少女にこんなことをしている自分に少し驚きながら、読書を続ける。
しばらくして彼女は目を覚まし、慌てて起きようとする。
「大丈夫、ゆっくり起きて」
「はい、ごめんなさい。私どんだけ眠かったんだろう……」
「気にしないで。あと、ひざに乗せたのは私だから。むしろ気を悪くしたらごめんなさい」
「いいえ、ありがとうございます」
「受験疲れかしら」
「いえ、バイトはじめたせいかも」
「まあ。私高校時代はバイトしたことがなくて……ねえ、近くにお気に入りのカフェがあるの、よかったら一緒にどうかしら」
「えー、お姉さんナンパですか」
「ああっ、これってそうなのかな、やだ私、女の子をナンパしちゃったの?」
二人は笑いあいながら、ベンチに置いた本を片付けてカフェ「マリーナ」に向かう。
「あっここ私もたまに来てるんです」
「ええ、そうだったの。もしかしたら会ったことあるのかもね」
店内に客は多かったが幸いテーブルに空きがあり、二人はくつろいだ。
「そうだ、自己紹介しましょうか。私は桜木ユキ、そこの大学の二年生。趣味はー最近はガーデニングかな?」
「龍野香子です。趣味は読書かな」
やがて二人の前にアイスコーヒーが届く。
「ユキさんってブラック派なんですね、かっこいいなあ」
「コーヒーなんて好みでいいのよ。砂糖とミルクをふんだんに入れるからって恥じることじゃないもの」
「あ、そうですね……」
「香りを好む人、味を好む人、お店の雰囲気を楽しむ人、いろんな人が肩肘はらずに素直な気持ちで好きなことを楽しめる社会になるといいと思うの」
「わ、私も、それが一番だと……」
ユキは、少し硬い雰囲気になって緊張する香子に気づく。
「あ……ごめんね、いきなりこんな話して。あ、お勘定は私が」
「えっでも」
「いいから、この優しいお姉さんに甘えなさい」
「はい、ありがとうございます」
二人は連絡先を交換すると店先で別れを告げ、また会える日を楽しみにしていた。
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