こちらが妻の姫将軍です

マトン

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質問と答え

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その言葉を聞いた兄上がにこりと笑みを浮かべた。商談でよく見る顔だ。
そのまま、質問を口にする。
 
「失礼ながら、エリューシア様は弟のどこが気に入りましたか?」
「そうですわね、結婚前も結婚後もわたくしに、軍を辞めろと一度も仰らなかったところですわ。」
 
エリーは恥じらうように、頬に手を当てて視線をそらした。
 
「それに……毎朝紅茶をいれてくれて、わたくしにはできないような細やかさでお屋敷を整えてくれていますし、父とも手紙のやり取りをしながら領地の経営について勉強されていると聞いておりますわ。おかげで父も喜んでおります。」
 
領地の勉強を始めたことを、エリーやお義父上に知られていたとは思わなかった。
兄の前で暴露される内容としては、いささか恥ずかしすぎる。
 
「毎朝紅茶を……。」
 
告げられたことが理解できないのか唖然としたまま、機械的にエリーのセリフを繰り返す兄上。
その横でミーラ様が堪えられないとばかりに笑い出す。そのまま優雅に扇子で顔を隠すが、笑いは止まりそうにない。
 
「私もフェルナンドも急な知らせだったから、少しだけ心配していたのだけど……。十分愛し合ってるようだし、無用な心配だったようね?」
「どう見てもペアの衣装を用意して夜会に来るくらいだ、溺愛具合は心配いらないだろう。」
「私たちも仲の良さを周りに見せつけなくちゃね、ダンスに戻りましょうか。ではまたね、フィエン君、エリューシア様。」
 
ミーラ様と兄上が和やかに笑い合うと、こちらへ軽く手を挙げてダンスの輪に戻っていった。
僕はどっと疲れた気分で空を仰ぐ。
 
「フィエンのことを聞かれて、ついはしゃいでしまいましたわ。」
「……あなたが楽しそうで良かったです。」
 
エリーが兄上の前で惚気るとは思わなかった。
本心からの言葉だろうが、できればそういう話は僕の前だけにしてほしい。
 
「うふふ、失礼しましたわ。」
「いえ……。」
「あまり遅くなる前に帰りましょうか。」
「えぇ、そうですわね。陛下にご挨拶に参りましょう。」
 
王の御前へ暇乞いに伺い、今日は帰ることとした。
 
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