スキルガチャはずれた不遇のおっさん、酔った勢いで最難関ダンジョンをクリアする〜欲望のままに生きてたはずが、いつの間にか聖人と呼ばれてました〜

くろの

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10話

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「おっしゃ昼酒決めて風俗じゃい!!!」

 一晩ぐっすり寝た俺は、意気揚々といつもの酒場に向かった。
 なんだかやたらと身体が軽い。まるで部活をしていた高校生の頃みたいだ。

「くはーっ! 昼から飲むビールも上手いなァ! ご主人、このロックバードの焼き鳥とオークのポークステーキ追加で!」

 今まであまり金が使えず食ったことがないメニューを片っ端から頼んでいく。
 酒も高いのは色々あるが、俺はビールでいい。なんだかんだビールが一番しっくり来るのだ。
 
「おっ、兄ちゃんも昼酒か? 飲め飲め! 今日は気分がいいからおっさんが奢っちゃる!」

 盛大に飲み食いしてすっかり出来上がり、隣のテーブル客にダル絡み始めた頃。

「おうおっさん。そんなにゴキゲンなら俺らに奢ってくれや」
「おういいぞ、いくらでも飲んでく……れ……?」

 背後から響いたドスの聞いた声に調子よく応じようとして……俺は顔を青くして固まった。

「仕事サボって昼酒とは、良い身分だなぁおっさん」
「うげ、現場監督……」

 背後に立っていたのは、俺の働いていた解体現場の現場監督だった。
 色黒ゴリマッチョの現場監督は、同じく色黒筋肉の部下を2人連れている。

 やべぇ!!! そういやダンジョンに3日いたってことはその分仕事もサボってたってことじゃねえか!

 そのまま俺は首根っこを掴まれ、近くの路地裏に連れ込まれてしまう。

「あんな現場だから飛ぶ奴は珍しくねぇが……堂々と昼酒飲まれたのはおっさん、てめえが初めてだ」
「ええと……そりゃどういたしまして?」

 路地裏の壁に追いやられ、ガン詰めされる俺。
 だいぶやばい状況なのだろうが、既に出来上がってしまっているので頭が上手く働かない。
 ……だがなんだろう。ついこの前まであんなに怖かった彼らに対し、今は全く恐怖を感じない。

「俺たちにもメンツってもんがあるからな。悪いが少し焼きを入れさせてもらうぜ?」

 ワキワキと拳を鳴らしながら近づいて来るマッチョ三人組。
 彼らは解体現場の石材を素手で壊せる程の怪力の持ち主だ。さぞ喧嘩にも自信があるのだろう。

「い、いや、それはやめといた方がいいんじゃ……」
「ほざけっ!」

 ゴリマッチョの現場監督は、殴り掛かって来た次の瞬間にドーンと漫画みたいに5メートル程吹っ飛んでいた。

「てめえ!」

 それに激昂し、二人の部下が殴りかかって来る。

「いやだから、俺まだこの力上手く制御出来てないんだって――」
 
 が、それも人間大砲みたいにビョーン宙を舞って吹き飛んでいく。
 さっきよりは軽く殴ったつもりなんだけどなぁ……。流石に力Aのステータスは伊達じゃないらしい。

「くそ……どうなってやがる。ついこの前までスキルもステータスも底辺だったじゃねえか!」

 唾を撒き散らして怒鳴る現場監督。

 ……あー、なんかもう色々と面倒くさくなってきた。
 俺は《炎竜の加護》のアクティブ効果を起動し、限界を超えたステータスを身体に宿す。

「ひ、ひぃ……この気配まさか……ドラゴン!?」
 
 現場監督が腰を抜かし、身体をガタガタを震わせている。
 ふぅ……ようやく力の差に気付いたか。

 気付けば3人組は俺に向かって土下座をしていた。
 全員ガタガタと震え、部下の1人に至っては失禁してズボンを濡らしている。

「な、殴ってすみませんでした!!! どうか命だけは――」
「え……俺そんなに怖い?」

 この程度、とは思わなくても、俺くらいの強さの奴はこのチート村なら結構いると思っていたので彼らの異常なビビりっぷりに俺の方が驚いてしまう。

「は、はい……俺たちの故郷を焼いたドラゴンに気配がそっくりで……正直息してるのもキツイです」

 トラウマというやつか。流石は過酷な異世界。こいつらも意外と苦労人らしい。

「あ、あの……その恐ろしい気配、今朝方『獄炎竜の試練』が攻略されて騒ぎになっていましたが、もしかして貴方様の仕業で……?」
「あー、まあな。ただこのことは誰にも言いふらさないで――」
「「「ぜ……ぜひアニキと呼ばせてください!!!」」」

 言いふらすな、と念押ししようとしたところ、三人そろって再び土下座をされてしまった。

「は? アニキ? なんで俺が……」
「いやいや!! 俺たちの故郷を焼いた黒い奴と同格以上の獄炎竜を倒したお方を、尊敬せずにいられましょうか!!!」
「いやその黒いのとか知らんし。俺男の舎弟とかいらないんだけど……」

 えー、可愛い女の子の舎弟なら大歓迎なんだけどなぁ。
 というかこいつら、ついさっきまで底辺だとか見下してた相手によくそこまで平伏できるなおい。

「それに、あんなあくどいビジネスしてる奴らの上とかに立ちたくないんだけど……てかなんであんなことしてるんだ? 色々と苦労して来たなら、人の痛みも分かるはずだろ?」

 彼らが運営する解体現場は、日本でいうところのいわゆる貧困ビジネスである。
 ウシジマくんに出てくるような感じで、俺みたいな異世界に来たものの職が見つからない弱者を寮に住ませて薄給で肉体労働をさせる。
 村の中を外出出来るのでまだマシだが、寮はおんぼろで雨漏りとネズミだらけの劣悪な環境だった。
 俺も、一体何度眠れぬ夜を過ごしたことか。

「……俺たちだって、やりたくてやってるわけじゃないんです。実は、元々は風俗店の経営をしてまして……」
「よしその話詳しく聞こうじゃないか!!!」

 元風俗の経営者。その言葉だけで俺の中で彼等への評価が急上昇した。

 詳しく聞くと、元々彼らはこの村が出来た頃から風俗店を営んでいたらしい。
 だが……この村の風俗産業は大きくなり過ぎた。
 今や大観光地化し、各地から大規模店が参入。国のお偉いさんが連日お忍びで遊びに通ってきているほど。
 そんな中、古参として幅を効かせる彼らを邪魔に思った連中によって店に火をつけられてしまったのだそうだ。
 結果火は他店にも燃え移り、その責任を取らされる形であの現場で働かされていたのだという。

「元締めっぽい空気出していてあんたらも雇われだったのかよ……因みに元々はどんな店出してたんだ?」
「へい。もふカフェって名前でして、俺らの出身の南方から学上の獣人を厳選して、コーヒーの提供から下の世話までって形で給仕させてやした」
「えなにそれ天才じゃん」

 つまり、アダルト版のメイドカフェみたいなものである。
 日本でそんな店を作れば色んな法律に引っ掛かってアウトだろうが、ここは異世界。カフェでお茶しながら公然と可愛いもふもふメイドに御奉仕してもらえる素晴らしい店だってあるのだ!!!

「因みに似たような店はここらにあるのか?」

 あくまで……あくまでも参考までに俺は尋ねる。

「いえ……最近は高級志向で殆ど個室店なんで、俺らみたいに半分カフェみたいな店はないですね……」
「マジか……クソが。俺のもふもふ天国潰したクソ野郎絶対ゆるさねぇ」

 他の客に見せつけながらもふもふメイドさんに恥ずかしいご奉仕させたいという俺の欲求が台無しだ。
 ……よし、せっかく力と金を得たんだ。いっちょやったるか。

「よし分かった。お前らのことは俺の舎弟にしてやる」
「「「一生ついて行きやすアニキ!!!」」」

 俺が言うと、3人は目を輝かせて叫んだ。

「因みにお前ら、いい感じの換金ショップしってる?」


***


 その後俺は、紹介された店でダンジョンで入手した宝石類を換金した。
 その額なんと金貨1000枚。日本円にして1億円相当である。
 装備品は自分で使いたいのもあるので残して尚この金額だ。改めてあのダンジョンの難易度の高さが伺えるな。

「とりあえずこの金をお前らにやる。これで借金を返して、俺のもふもふ天国を建て直せ。足りなかったら追加で出してやる。後、もし上からの圧力とか暴力とかきたらそれも言ってくれ。ま、オーナー兼けつもちって事で」

 俺は換金した金の半分、金貨500枚の入った袋を現場監督に渡した。

「い、いいんですか? こんな……」
「ああ。その代わり最高の店を作れ。妥協は許さん。いいな?」
「「「へい!! 喜んで!!」」」

 こんな素性も知れないどころか俺にパワハラしてきてた奴らにいきなりこんな大金渡して大丈夫かと思わなくもないが……まあこれももふもふ天国の為だ。
 それに、風俗好きに悪いやつはいないというのが俺の持論だ。
 ソースは日本の風俗待機場。あそこで出会った人はみんな聖人かと見まがうほどに素晴らしい人だらけだった。エロは人類を救うのだ。
 まあぶっちゃけたところ、漏らすほど怖がってる相手を裏切ったりはしないだろうって思っただけなのだが。

「それと、出来ればでいいが解体現場の待遇をもう少し良くしてやってくれ。……俺みたいに能力が低くて絶望してる異世界人を少しでも減らすために」

 そう言って、俺は現場監督たちと別れた。
 
 さて、なんかよく分からんことに巻き込まれてしまったがようやく自由になれた。

 目指すは風俗街。
 増えた金貨を使い切る気持ちで全力で遊んでやろう!
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