上 下
44 / 52
第三章 フィアナ奪還

第十話 ぶつかり合う錬金術

しおりを挟む
 階段を上がると厳重な扉が待ち構えていた。扉には今まで手に入れた鍵を使わなければ開かないようになっている。
 全ての鍵をさして回すとガチャッと扉の開いた音が聴こえた。扉を開けて目の前を見るとそこには、ステンドグラスに月明りが差してカラフルに彩られた世界が広がっている。中央には玉座に肘をつき退屈そうに待っているフィアナの姿があった。姿が見えた瞬間にアクセルは安心して、近寄ろうとする。

 「フィアナ‼」

 「やっと来たのねアクセル、だけれど感動の再開の前に最後の戦いをしないとね」

 「最後の戦い?」

 「そう。いままで四人の刺客を乗り越えた貴方をこの力で倒さないと」

 右腕を上げるとそこには堕天の力が集まっていく。どうやら他の堕天している者の力を奪っているようだ。黒いオーラが集まり切ると腕を下げて不敵な笑みで笑うと、物凄い覇気が伝わってきた。

 「これがこの世界に散らばる全ての堕天の力を合わせた力」


 《フィアナ》・大堕天
 職業・錬金術師
 レベル:74

 攻撃:89200
 防御:32918
 魔力:21999
 魔防:39000
 俊敏:69021
  運:380000


 「このステータス……堕天の力をすべて奪い合わせた力!?」

 「さあアクセル貴方に私が倒せるかしら?」

 「あぁ倒してお前の目を覚まさせる‼」

 (連れていかれる時のあの目と言葉には嘘偽りがなかったはずだ)
 アクセルが先に錬成をする。

 ――錬成

 地面から剣を作り両手に持った剣でフィアナを斬りつける。
 だがその攻撃全てをかわしていくフィアナ。

 「こんなものだったけアクセル?じゃあ今度は私の番」

 壁に手をかけると何回も錬成を繰り返す。錬成でできた短剣を全て投げていく。その数に驚きながらもアクセルは何とか避けていきながら少しづつ近づく。

 「フィアナ、お前は何故俺と戦うんだ……ぐッ」

 腕に傷を負ってしまう。

 「そんなの決まってる私だって役に立つことを証明したいから」

 「役に立つも何もフィアナが役に立たなかったことなんて一度も……」

 「一度もないわけない。私の強さは日に日にアクセルに越された差がひらいていく、だから私は堕天の力でその差を埋めたかった。そしてアクセルと戦って証明したかった、私だって戦えるってことを」

 「じゃあなんで魔女にさらわれる時、あんな目をしていたんだ‼」

 「それは……」

 言葉に詰まるフィアナ、その一瞬を狙いアクセルは錬成を使いフィアナを縛り付ける。
 身動きの取れないフィアナに近付き、下を向いてアクセルは言う。

 「もう終わりにしよう」

 悲しそうな表情でいるアクセルを見てフィアナの心の中で元の自分が戻ってきそうな気がしたが、首を振り自分を抑え込む。

 「駄目……まだ私は証明できてない」

 力が籠められ簡単に縛っていた鎖は崩れ落ちる。
 そしてフィナは縛られていたものが解かれるとアクセルに容赦なく攻撃を仕掛ける。地面に散らばる短剣を拾い上げては、アクセルの腕や足に傷をつけていく。

 「どうアクセル私強くなったでしょ?」

 「(そろそろ本気でいかなきゃまずいか)」

 アクセルも力を籠めると覚醒の力を解き放つ。


 《アクセル》・覚醒
 職業・錬金術師
 レベル:60

 攻撃:11000
 防御:26780
 魔力:25700
 魔防:38730
 俊敏:56210
  運:118200

 髪の一部分が白くなり、身体の右半分は錬成陣が浮かび上がり右目にも刻まれている。
 強い力を纏うアクセルにフィアナは嬉しそうな顔になる。

 「やっと本気を出してくれた……ここからは本気の戦いねアクセル」

 「手加減はしない……フィアナ」


 ――錬成ッ‼


 二人の錬成が同時にぶつかり合う。
しおりを挟む

処理中です...