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第2章 解けない謎解き
第19話 疑心暗鬼を生ず
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近くで鳥が、木に留まっているらしい。
愛らしい鳴き声と一緒に、心地よい風が肌に当たる。
本来なら心地よく思うであろうが、会話が会話だけに気持ちが明るく感じない。
相手の表情と彼女が持つ美しい紫の瞳に、ブロマンは見ていて吸い込まれそうになっていた。
「ブロマン様は、彼女が貴方様に好意があることに気づいていましたか。
その気持ちを利用して、彼女を都合よく操っていたのですか?」
踏み込んだ質問に怒られるのを覚悟していたが、ブロマンには黙ってただ視線を鋭くするのみだった。
大人げないと反省し、目を閉じてから窓の外へ視線を向けた。
木々の葉が視覚に和らぎをもたらし、過去の思い出を振り返る。
一点を見つめ、静かに自分の気持ちを伝え始めた。
目の前のプリムローズに、初めて出会った頃の侯爵令嬢の姿が重なる。
「彼女が特別な好意を抱いていたのは知っておりました。
ですが、私は妹の様な存在しかなかったのです」
彼女は私が告白するのを待っていたのだろうかと、数々の記憶を思い返しては考えてみる。
「男女の間に、すれ違いはよくあります。
彼女が他の方に気が向いていたら、違った人生に変わっていたでしょう」
大人ぶって自分を諭してくる姿に、また亡き侯爵令嬢が重なって彼女に言われているように感じた。
「彼女の気持ちに答えるべきか、悩んだ時期もありました。
偽りの心では、人の道に反するので言いませんでしたが……。
どうして、こんな結末を迎えてしまったのだろう」
「償いの心は、人なら一つくらいありますわ。
残されし者は、その人を思い出してあげる。
これが、一番の供養になります。
彼女が、この世に存在していた証になるのです」
「そうですな。
実家の子爵家に、彼女の死を知らせるべきか。
このまま知らずに、何処かで幸せに暮らしていると夢を持たせた方がいいのか悩みます」
視線をプリムローズから外し頭を軽く振ると、誰かに導いて欲しそうに言っているようだった。
「べつにブロマン様が、直接話さなくても宜しいのでは?
人の噂は、勝手に風のように流れます。
晩餐会で、ひっそりと流せばいいでしょう。
子爵家は呼ばれていますか?」
「ほぼ全貴族が、今年は呼ばれております。
おめでたい裏で、影のようにひっそりと噂されるのは辛いですな」
彼女は彼の最後の気持ちに、決して彼女をいいように使ってなかったと確信した。
最後まで彼に好意を持って亡くなった子爵令嬢にとっては救いだろう。
胸中でプリムローズは、そう思って聞いていた。
「ひとつ、疑問がございます。
王弟殿下のお屋敷は、ヘイズ王が管理されていると聞きました」
「はい、そうです。
それが、どうかしましたか?」
ヘイズ王から彼は、スクード公爵嫡男のオクモ様とエリアスに間違われたルシアン王子の誘拐事件を知らされていないのかしら。
それとも、聞いていないフリをしているのか。
「エリアス殿下に、ご両親の住まいだったお屋敷を見せて差し上げたく思いましてね。
合鍵は、どなたが管理してお持ちなのか知っておられますか?」
プリムローズは平然と言う反面、心臓が変に高鳴りそうになる。
「じつは、弟にして貰ってます。
私は王宮務めですから、弟に任せているのです。
屋敷がブロマン領の近くにあり、管理と清掃するように頼んでおります」
「弟君が!?
ブロマン様には、御兄弟がいらっしゃったのですね。
ヘイズ王は、その事を存じておられますか?!」
顔色が変わった彼女の変化に、ブロマンは不思議になる。
仕事柄、人の感情の移ろいに敏感になり、見逃さない。
「許可は、もちろん頂いております。
しかし、陛下は覚えておられない可能性がございます」
「弟君に任せていたことを、もう一度改めて陛下にお伝えした方がよろしいわ」
遠回しにプリムローズに言われ、今までの話の流れを振り返った。
「亡くなられた王弟殿下の屋敷に、最近不審者が入った事件がありました。
そんな無礼者が、この国にいるとは思わなかったのです」
「不審者は、屋敷で何をしていたのですか?
盗難された物でもありましたか?」
「いいえ、ございません。
窓ガラスを割られて侵入した割には、盗まれた物はひとつもありませんでした。
酒盛りをし、その後寝泊まりした形跡がありました」
「犯人は捕まったのですか?」
「残念ながら…、もぬけの殻でした。
屋敷を見に行った時に、荒らされていたのを弟が発見しました」
『なんてこと、鍵を開けて中に入ったんではなかったの!
私たちも余裕がなくて、犯人を捕まえたり出来なかった』
ブロマン様は関係なく、やはりあのサンドラの単独行動だったわけか。
「こんな事になり、弟さんも困惑したでしょう」
「はい、責任を感じております。
私から頼んだことなので、気にするなとは言いましたが…」
話が途切れてから、数秒間をおいて続ける。
「最近、私に対する陛下の様子が変わった気がします。
ご不興を買ったようで、これが原因だったんですね」
「きっと、たまたまご機嫌が悪かっただけかもしれませんわ。
権力者は忠臣を信じる反面、疑ってかかる時もございます。
引っ掛かる事柄は、陛下へなんでもお伝えした方が宜しいかと存じますよ」
ブロマンは何かが頭に浮かんだように、目を細めて前方を見ていた。
「【疑心暗鬼を生ず】ですか?
心に疑いを持っていると、暗闇の中にいないはずのない鬼の姿が見えたりする。
疑う気持ちがあると、何でもないことが恐ろしく感じますからな」
『とても、頭が切れる方だ。
臣下として自分が、王にどう思われているのかを例えて話している』
節々に、自分が疑われているのを感じ話している。
王の懐刀は、これくらい勘が働かないと勤まらない。
「王の心は、つねに孤独になりやすくなります。
周りの者が、気遣って差し上げなくてはなりません」
聞き終えてからひとつ頷くと、年端もいかない彼女に頭を下げた。
「他国のご令嬢に、これほど懸念なされ心配されるとは情けない。
ですが要らぬと言われるまで、私は陛下の側にお仕えしていきたいと思っております」
首を左右に振ると、プリムローズは疑ってかかっていた彼に詫びる思いをしていた。
「関係ないから、見えてくるものがあります。
私も…、見えておりませんでした。
ブロマン伯爵、お許し下さい」
なにを謝罪しているのか。
けっして、口に出して言えない。
プリムローズが思いつかなかった。
まさかの展開だったからだ。
「なにについて謝っているのですか。
心の中で引っかかり、くすぶり続けた想いを呼び覚ましてくれた。
貴女様には、感謝申し上げたい」
軽く胸に手をやり頭を下げられ、プリムローズは紳士的な態度に心がなぜか痛んだ。
『泣きたい気分だわ。
どこまで、私の憶測が正しいか。
結局、なにも分からなかった』
「クラレンス嬢は、私の弟が気になっていたようですね。
現在は領地にいます。
父の調子が年齢もあり、あまり芳しくありません。
陛下に暇を頂き、家族と彼女へ会いに行こうと思います」
彼女とは子爵令嬢を指すと、察したプリムローズは深く追求しなかった。
「それがいいと思います。
話をしていて、私も故郷の家族を思い出しましたわ」
年齢の離れた生意気な子供を邪険にせず、真摯に対応してくれる。
柔和な笑みの顔立ちは、暗躍する人物には似つかわしくなく思えた。
『突然、なぜ?
弟と父親の話を、私にされたの?
やはり、弟だけでなく父親も関係があるの?
もう、考えるのはやめましょう。
ブロマン伯爵の忠義の言葉を肯定も否定もできるのは、この世でヘイズ王しかいないのだから』
因縁の闇が引き起こした出来事。
王弟殿下夫妻、事故死から始まり。
エリアスの誘拐事件。
レニア様たちが王宮で見たという、馬車の車輪をいじっていた男たちは誰に命じられたのか。
もしくは勝手にしたのかもしれない。
『真実は複雑すぎて、ひとつではなかった』
どうあがいても、自分では突き止められないと諦めた。
「本日はこちらに足を運び、ご足労をおかけしました」
「私こそ、手順とか作法を教えてもらい助かりました。
行われる晩餐会が、無事に終わるかが気掛かりだわ」
「万全に用意して、つつがなくお待ちしております」
ブロマンは、打ち合わせだと思って返答していた。
知らなかった真実に、誤解していたこと。
様々な人たちの想いが、重なり合った過去。
貴族たちに、正式にお披露目されるエリアスを軸にして、いつかヘイズの新しい未来が始まっていくのだろう。
過去の因縁が浄化されると、プリムローズを信じたいと思った。
愛らしい鳴き声と一緒に、心地よい風が肌に当たる。
本来なら心地よく思うであろうが、会話が会話だけに気持ちが明るく感じない。
相手の表情と彼女が持つ美しい紫の瞳に、ブロマンは見ていて吸い込まれそうになっていた。
「ブロマン様は、彼女が貴方様に好意があることに気づいていましたか。
その気持ちを利用して、彼女を都合よく操っていたのですか?」
踏み込んだ質問に怒られるのを覚悟していたが、ブロマンには黙ってただ視線を鋭くするのみだった。
大人げないと反省し、目を閉じてから窓の外へ視線を向けた。
木々の葉が視覚に和らぎをもたらし、過去の思い出を振り返る。
一点を見つめ、静かに自分の気持ちを伝え始めた。
目の前のプリムローズに、初めて出会った頃の侯爵令嬢の姿が重なる。
「彼女が特別な好意を抱いていたのは知っておりました。
ですが、私は妹の様な存在しかなかったのです」
彼女は私が告白するのを待っていたのだろうかと、数々の記憶を思い返しては考えてみる。
「男女の間に、すれ違いはよくあります。
彼女が他の方に気が向いていたら、違った人生に変わっていたでしょう」
大人ぶって自分を諭してくる姿に、また亡き侯爵令嬢が重なって彼女に言われているように感じた。
「彼女の気持ちに答えるべきか、悩んだ時期もありました。
偽りの心では、人の道に反するので言いませんでしたが……。
どうして、こんな結末を迎えてしまったのだろう」
「償いの心は、人なら一つくらいありますわ。
残されし者は、その人を思い出してあげる。
これが、一番の供養になります。
彼女が、この世に存在していた証になるのです」
「そうですな。
実家の子爵家に、彼女の死を知らせるべきか。
このまま知らずに、何処かで幸せに暮らしていると夢を持たせた方がいいのか悩みます」
視線をプリムローズから外し頭を軽く振ると、誰かに導いて欲しそうに言っているようだった。
「べつにブロマン様が、直接話さなくても宜しいのでは?
人の噂は、勝手に風のように流れます。
晩餐会で、ひっそりと流せばいいでしょう。
子爵家は呼ばれていますか?」
「ほぼ全貴族が、今年は呼ばれております。
おめでたい裏で、影のようにひっそりと噂されるのは辛いですな」
彼女は彼の最後の気持ちに、決して彼女をいいように使ってなかったと確信した。
最後まで彼に好意を持って亡くなった子爵令嬢にとっては救いだろう。
胸中でプリムローズは、そう思って聞いていた。
「ひとつ、疑問がございます。
王弟殿下のお屋敷は、ヘイズ王が管理されていると聞きました」
「はい、そうです。
それが、どうかしましたか?」
ヘイズ王から彼は、スクード公爵嫡男のオクモ様とエリアスに間違われたルシアン王子の誘拐事件を知らされていないのかしら。
それとも、聞いていないフリをしているのか。
「エリアス殿下に、ご両親の住まいだったお屋敷を見せて差し上げたく思いましてね。
合鍵は、どなたが管理してお持ちなのか知っておられますか?」
プリムローズは平然と言う反面、心臓が変に高鳴りそうになる。
「じつは、弟にして貰ってます。
私は王宮務めですから、弟に任せているのです。
屋敷がブロマン領の近くにあり、管理と清掃するように頼んでおります」
「弟君が!?
ブロマン様には、御兄弟がいらっしゃったのですね。
ヘイズ王は、その事を存じておられますか?!」
顔色が変わった彼女の変化に、ブロマンは不思議になる。
仕事柄、人の感情の移ろいに敏感になり、見逃さない。
「許可は、もちろん頂いております。
しかし、陛下は覚えておられない可能性がございます」
「弟君に任せていたことを、もう一度改めて陛下にお伝えした方がよろしいわ」
遠回しにプリムローズに言われ、今までの話の流れを振り返った。
「亡くなられた王弟殿下の屋敷に、最近不審者が入った事件がありました。
そんな無礼者が、この国にいるとは思わなかったのです」
「不審者は、屋敷で何をしていたのですか?
盗難された物でもありましたか?」
「いいえ、ございません。
窓ガラスを割られて侵入した割には、盗まれた物はひとつもありませんでした。
酒盛りをし、その後寝泊まりした形跡がありました」
「犯人は捕まったのですか?」
「残念ながら…、もぬけの殻でした。
屋敷を見に行った時に、荒らされていたのを弟が発見しました」
『なんてこと、鍵を開けて中に入ったんではなかったの!
私たちも余裕がなくて、犯人を捕まえたり出来なかった』
ブロマン様は関係なく、やはりあのサンドラの単独行動だったわけか。
「こんな事になり、弟さんも困惑したでしょう」
「はい、責任を感じております。
私から頼んだことなので、気にするなとは言いましたが…」
話が途切れてから、数秒間をおいて続ける。
「最近、私に対する陛下の様子が変わった気がします。
ご不興を買ったようで、これが原因だったんですね」
「きっと、たまたまご機嫌が悪かっただけかもしれませんわ。
権力者は忠臣を信じる反面、疑ってかかる時もございます。
引っ掛かる事柄は、陛下へなんでもお伝えした方が宜しいかと存じますよ」
ブロマンは何かが頭に浮かんだように、目を細めて前方を見ていた。
「【疑心暗鬼を生ず】ですか?
心に疑いを持っていると、暗闇の中にいないはずのない鬼の姿が見えたりする。
疑う気持ちがあると、何でもないことが恐ろしく感じますからな」
『とても、頭が切れる方だ。
臣下として自分が、王にどう思われているのかを例えて話している』
節々に、自分が疑われているのを感じ話している。
王の懐刀は、これくらい勘が働かないと勤まらない。
「王の心は、つねに孤独になりやすくなります。
周りの者が、気遣って差し上げなくてはなりません」
聞き終えてからひとつ頷くと、年端もいかない彼女に頭を下げた。
「他国のご令嬢に、これほど懸念なされ心配されるとは情けない。
ですが要らぬと言われるまで、私は陛下の側にお仕えしていきたいと思っております」
首を左右に振ると、プリムローズは疑ってかかっていた彼に詫びる思いをしていた。
「関係ないから、見えてくるものがあります。
私も…、見えておりませんでした。
ブロマン伯爵、お許し下さい」
なにを謝罪しているのか。
けっして、口に出して言えない。
プリムローズが思いつかなかった。
まさかの展開だったからだ。
「なにについて謝っているのですか。
心の中で引っかかり、くすぶり続けた想いを呼び覚ましてくれた。
貴女様には、感謝申し上げたい」
軽く胸に手をやり頭を下げられ、プリムローズは紳士的な態度に心がなぜか痛んだ。
『泣きたい気分だわ。
どこまで、私の憶測が正しいか。
結局、なにも分からなかった』
「クラレンス嬢は、私の弟が気になっていたようですね。
現在は領地にいます。
父の調子が年齢もあり、あまり芳しくありません。
陛下に暇を頂き、家族と彼女へ会いに行こうと思います」
彼女とは子爵令嬢を指すと、察したプリムローズは深く追求しなかった。
「それがいいと思います。
話をしていて、私も故郷の家族を思い出しましたわ」
年齢の離れた生意気な子供を邪険にせず、真摯に対応してくれる。
柔和な笑みの顔立ちは、暗躍する人物には似つかわしくなく思えた。
『突然、なぜ?
弟と父親の話を、私にされたの?
やはり、弟だけでなく父親も関係があるの?
もう、考えるのはやめましょう。
ブロマン伯爵の忠義の言葉を肯定も否定もできるのは、この世でヘイズ王しかいないのだから』
因縁の闇が引き起こした出来事。
王弟殿下夫妻、事故死から始まり。
エリアスの誘拐事件。
レニア様たちが王宮で見たという、馬車の車輪をいじっていた男たちは誰に命じられたのか。
もしくは勝手にしたのかもしれない。
『真実は複雑すぎて、ひとつではなかった』
どうあがいても、自分では突き止められないと諦めた。
「本日はこちらに足を運び、ご足労をおかけしました」
「私こそ、手順とか作法を教えてもらい助かりました。
行われる晩餐会が、無事に終わるかが気掛かりだわ」
「万全に用意して、つつがなくお待ちしております」
ブロマンは、打ち合わせだと思って返答していた。
知らなかった真実に、誤解していたこと。
様々な人たちの想いが、重なり合った過去。
貴族たちに、正式にお披露目されるエリアスを軸にして、いつかヘイズの新しい未来が始まっていくのだろう。
過去の因縁が浄化されると、プリムローズを信じたいと思った。
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