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偽善者
しおりを挟むーー 交差点で少女が一人泣いている。
街行くモノクロの人々は誰も目に止めようともしない。
まるでその少女などその場に居ないかのように。
でも、僕には少女の周りだけ、世界が違うように色がついて見えた。
気付いているのは自分だけ。
(...迷子、か。)
普通なら通りすぎるだろう。
でも、僕の卑怯な偽善心は『助けろ』と叫んだ。
「...大丈夫?」(ッ...!)
気がつくと僕は声をかけてしまっていた。
偽りの笑顔を顔にベッタリと貼り付けて。
やめろ、こんなヤツじゃないだろ僕は。
『...!』
少女はビクリと肩を震わせて僕を見た。
その目には『怯え』。
「お母さんと逸れたの?」
ぎこちなくだけど少女は頷いてくれた。
「じゃあ、お母さんを探さないとね。」
そっと差し出した僕の手を少女は素直に握ってくれた。
(ああ、いつもこうだ。)
ー『良いことをしている』ー
そんな自己満足のために『優しい』僕は行動する。
これが『優しさ』でないのはわかってる。
この少女にも申し訳ないと思ってる。
...こんなことを考える自分は『優しい』のだろうか?
わからない。
『......あっ、お母さんっ!』
急に少女が叫んだ。
母親を見つけたのか。
少女は急に駆け出して、心配そうな顔をしている母親にしがみついた。
『ありがとうございました。』
母親からそう言われ、自然と溢れる『笑み』。
この時、照れなのか苦笑いなのか自分でもわからなかった。
『ありがとう、お兄ちゃん!』
少女にそう言われ、確信した。
『苦笑い』だ、と。
『あなたが優しい人で助かりました。』
去り際に少女の母親がそう言った。
(...違う)
違うんだ。
僕は...
僕はただ...
「...僕はただ、自己満足のためにやっただけです。」
ずっと言えなかった、本心。
やっと、言えた。
いや、
言って、しまった。
『ふふっ。』
でも少女の母親は笑って
『じゃあ、ありがとうね。『優しい』中身の偽善者さん。』
そう言ってモノクロの人混みの中に消えていった。
「僕の、中身...?」
僕の中の、優しい偽善。
僕が死ぬまで続けたら、
本当の善者になれるかな。
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