開湯!異世界温泉『ふじの湯』 もらったスキルは『温泉』だった??!

西八萩 鐸磨

文字の大きさ
37 / 98

37.適任者

しおりを挟む


「ここが入り口じゃろ、そこからこう入ってきて・・ここに男用の風呂と女用の風呂の入り口が並んでいる・・なるほどの。で、マモル殿が言っているのがこの風呂の入り口のところのスペースじゃな」

「ええ、そうです」

「こんな狭いところに座る?どういうことじゃろ?しかも両方の風呂を隔てておる壁と一体化しとるじゃないか?」

ハサンさんが設計図を持って、その腕を目いっぱい延ばして目を細めて言った。

老眼なのね・・。

「えっとですね。このスペースはまわりより1段高くなっていまして、そこに人がひとり座れるスペースがあるんです」

「ふむ」

「で、男湯と女湯は確かに壁で隔ててあるんですが、ここだけ壁が切れているんです」

「なぜじゃ?」

「じつは、これは番台と言いまして、料金の徴収と脱衣所での盗難防止のための監視などをする役割の人を座らせるスペースなんです」

「ほ~う・・なるほどの。境界にあれば、両方を一度に見ることができるということか」

「そうなんです!」

「うまいこと、考えたものじゃの」

ハサンさんが、感心したようにうなずく。

「ただですね・・」

「なんじゃ?」

俺は一つの問題点を切り出した。

「・・問題がありまして・・両方が見えるということは、男性、女性の両方の裸が見えてしまうということなんです」

「ふむ、そうか。その番台に、男が座れば女湯が見えるのは問題がある。女が座れば場合によっては、男湯が見えるのが問題・・というわけじゃな」

「ええ。ですので、そこに座っても問題が無さそうな方の、人選をお願いできないかと思いまして」

ほんと難しいんだよなあ、番台に座るひとって・・色んなトラブルの原因になりかねないからなあ。

俺のイメージでは、例えば・・・。

「そうじゃなあ・・・あの婆さんはどうじゃろ」

・・・そう、お婆さん!

「えっ?」

「ザイルばあさんじゃ」

「ああ~あのお婆さんですか!」

確かに、俺のイメージにピッタリ。

「でも、雑貨屋はどうするんですか?」

「ちょうど、娘のスージーがつい3日前に出戻ったところじゃ」

「でもどっ・・!?」

「ああ、領都の行商人に見初められて、5年前に嫁いだのじゃが、亭主に愛想をつかして出てきたそうじゃ」

愛想をつかしてって・・んじゃなくてね・・。

「・・なるほど」

「その娘のスージーが、雑貨屋の方を見れば問題ないじゃろ」

ラッキーなんだか、どうなんだか・・。

「もし、ザイルお婆さんにお願いできるなら、願ったりかなったりなんですが・・」

とりあえず他に当てもないし、お願いしてみるか。

「よし、それじゃあこれから一緒に行って、頼んでみるかの」

そう言って、ハサンさんが椅子から立ち上がった。

「い、いいんですか?」

「ミミも行くー!」

「ほっほっほ。さあ、行くぞい」

「わ、わかりました!」

俺はさっさと出ていこうとする、ハサンさんとミミを慌てて追いかけたのだった。


「・・という訳なんじゃが、引き受けてはもらえんかの?」

雑貨屋の前に着いてみると、店の前を20代半の女の人が箒で掃いていた。

その人が、スージーさんだった。

結構若いじゃん。

出戻りっていうから、もう少しいっているのかと・・。

あ、睨まれた。

ハサンさんが、そのスージーさんに声をかけて、一緒に店の中に入った。

そして、帳場にいたザイル婆さんに、事情を一通り説明したのだった。

「・・ど、どう・・で、しょうか?」

目が開いているのかどうかもわからない、皺くちゃの顔を見つめておずおずと聞いてみる。

「・・・・・ふむ」

長い沈黙の後、ひとこと呟いた。

笑った・・のか?

口の端がわずかに上がった様に見えたけど・・。

「面白そうじゃし、いいじゃろ。ここは、娘に任せる」

「え?あたしが?!」

ギロリと細い目で、スージーさんを睨んだ。

「わ、わかったわ」

慌てて、スージーさんがうなずく。

「で、でも。まだ完成していませんので、後日改めてお伺いしますので」

俺も思わずその迫力に、どもりながらも、そう言ったのだった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

処理中です...