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76.人材探し

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「メニューを増やすのはいいんだけどよ・・」

厨房の改築が決まり、その工事が始まったため、『おやすみ処』は臨時休業となった。

そこで、俺は『アトラスの牙』の面々と村の集会所にいた。

なぜなら、トマトソースのパスタをメニューに加えるのは決定していたが、それだけでは物足りないということになり、さらに新メニューを追加するため、集会所の厨房を借りて検討会を開いていたのだ。

「どうした?ネイサン」

俺は、腕を組んで口ごもるネイサンを見た。

「俺は料理を作るのが好きだが、本職の料理人じゃあない。メニューが1、2品なら問題ないと思うけど、さすがにそれ以上となると、上手く捌けるかどうかわからないなあ・・」

いつにない真剣な表情で、ネイサンが言った。

「確かにそれはあるかもしれないな・・」

「それに・・」

今度は、ポールが口を開いた。

「そうなると、もうほとんど普通の食堂と変わらなくなってきますよね?」

「まあ、そうだな」

厨房も広くなるけど、客席もスペースが大きくなるからな。

規模からしても、そうなるか・・。

「メニューが増えて、お客さんが多くなれば、食材もそれだけ必要になるんじゃないですか?」

「ああ」

「いままでみたいに、定休日に採取だけでは足りなくなるかもしれません。だから、私たちが採取に行く回数を増やすのがいいと思います」

そうなると、その間に代わりになる人材が必要になるということか。

「言いたいことは分かった。専門の料理人とホールのスタッフを新しく補充した方が良いってことだな」

「はい」

ポールがうなずく。

「それに、俺もプロの料理人から技術を学びたいしな」

ネイサンが言う。

「リンとキースもおんなじ考えか?」

「ボクはマモルさんの判断に任せます」

「オレはクエストの時間が増えるなら、全然いいぜ!」

「分かった。じゃあ、スタッフの募集をするか!」

「「「「おお!」」」」

4人が拳を突き上げた。

「・・で、どうやって募集すればいいんだ?」



俺の問いに4人がズッコケた後、ポールのアドバイスで商業ギルドへと向かった。

商業ギルドの前まで来ると、見覚えのある馬車が停まっていた。

「確かあの馬車は・・・」

俺がギルドの前で立ち止まって見ていると、馬車から30代の男が降りてくる。

領都の商人で、イワンさんと言ったか・・。

「やあ、またお会いしましたね。今日は入られるんですか?それとも・・」

突っ立っている俺に、イワンさんが会釈して、相変わらずの人の良さそうな笑顔で聞いてきた。

「えっ?ああ、入ります、入ります!」

「そうですか。では、お先にどうぞ」

そう言ってニッコリ笑うと、イワンさんが右手で招き入れる様な動作をする。

「あ、ありがとうございます」

俺は、お礼を言ってギルドの扉を開けて中へと進んだ。

「ところで、前に来た時より随分と村が活気があるように思うんですが?」

イワンさんが、一緒に扉をくぐりながら言ってきた。

「そうですか?私はしばらく村から出ていないので、違いがよくわかりませんが・・」

「ええ。私は月に1度、領都から・・ああ、すいません。自己紹介がまだでしたね。私は領都に店を構える『イワン商会』の会頭でイワンと申します」

「これはご丁寧に・・私は『ふじの湯商会』のマモルといいます」

「ふじのゆ?・・どこかで聞いたことがあるような・・・」

イワンさんが首を傾げる。

「銭湯・・いや、風呂を提供する風呂屋です」

「フロ?・・・フロというのは、確か東島の風習でお湯に浸かるという?」

「そうです!その風呂です!!よくご存知ですね?」

ようやくこの世界で、風呂を知っている人に会えた嬉しさで、俺は思わず声をあげてしまった。

「ええ、商売柄あちこちに情報源つてがありますので、イーサン皇国経由で聞いたことがあったんです」

「そうだったんですね。うちは、その風呂に誰でも入れるようにして、皆さんに提供しているんです」

「ほう!それは是非、私も入ってみたいですね」

「ええ、ぜひ入ってみてください!お待ちしています・・でも、『おやすみ処』は改装中ですので1週間ほどお休みですが」

「『おやすみ処』ですか?それはどんなもので?」

「簡単に言えば、風呂上りに休憩できて、簡単な食事もできるスペースです」

「そちらも興味深いですね。1週間ですか・・少し滞在を伸ばしてそちらにも寄らせてもらいます」

「ありがとうございます」

俺は頭を下げた。

「イワン様」

すると、ギルド職員がイワンさんの名前を呼んだ。

「マモルさん、すいません。私はこれで」

「はい、またお会いしましょう」

そう言って俺はイワンさんと別れ、『その他ご相談』の窓口へと向かった。







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