弟子に負けた元師匠は最強へと至らん

Lizard

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第二章 冒険者

その十四 受付嬢は驚きやすい

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 冒険者ギルドへ報告に向かう途中、数十人もの衛兵が門へ走っていく様子が見えた。
 森林狼を討伐したことを伝えておこうかと思ったが、後片付けも必要になるしゴンザさん達の説明で十分だろうと思ったのでやめておいた。


 冒険者ギルドの入り口を通り、まっすぐに受付へ向かった。
 既に依頼に出ている冒険者が多いのか、それとも俺が数時間前に殺気を振りまいたからか、ギルド内にはほとんど人がいなかった。



「依頼が終わったので報告に来ました」
「へっ!?で、でも、まだ依頼を受注してから半日も経ってませんよね?」
「??そうですが……それが何か?」

 そんな驚くことでもないだろうに・・・
(『主の見た目では驚かれてもしょうがないじゃろう』)
(『そうですね・・・相手の実力を見抜けるものなら驚かないと思いますが』)

「素材はここで出していいんでしょうか?」
「あっ、えっと……奥でお願いします」
「分かりました」


半信半疑の表情でカウンターの奥に進む受付嬢についていく。
そこは包丁やのこ、ナイフといった刃物がおいてある金属製の机が中央に存在している部屋だった。


「この上に出してください」

受付嬢が金属机を指す。


 言われた通りにヒルルク草、オークの肉、森林狼の毛皮を机にのせていく。


テイルがオーク肉を出した頃には受付嬢は目を丸くしてその様子を見ていた。


「や、やっぱりアイテムポーチですか……それにしても、これだけの素材をこの短時間で……」

ブツブツと小声で喋る受付嬢にテイルは声をかけた。


「あの、他にも報告したいことがあるのですが」
「はい?」
「王都の南門を出て東に進んだ先の森でこれらの素材を取ってきたのですが……そこでハイオークに遭遇しまして。そういったことは普通にあるのですか??」
「……ふぇ?ハイオーク?え、えっと……東の森ってことは、アルバの森ですよね……そこでハイオーク……??」


 あの森はアルバの森って言うのか・・・

 ハイオークが出るのはやっぱり普通じゃないみたいだな。

「よく逃げてこれましたね……証拠などはありませんか?」
「あー……えっと、逃げてはいないです」
「へ?」
「倒してきたので証拠ならありますよ」
「ふぇえ!?!」


 まぁさっきので驚かれるなら、これも驚くよな・・・


ハイオークの死体をアイテムポーチから取り出した。

「…………」


 あれ?もっと騒ぐかと思ったけど・・・

 
「Eランクで……ハイオーク討伐…でもそうよね……ギルドマスターとあれだけ戦ってたんだもの……」

受付嬢が常人ならば聞こえないくらいの声でブツブツと呟く。


「はい……ハイオークですね……ワカリマシタ‥‥」

 あっ、これ現実逃避中だな



「あーっと……他にも報告があるんですが」
「え……まだあるんですか?」

 そんなあからさまに嫌がらないでください


「この街に戻る途中、南門に五十匹以上の森林狼の群れが攻めてきていたので討伐しておきました」
「………え?」 

受付嬢が時間が止まったかのように目を見開いたまま硬直する。


「う、嘘ですよね……?五十匹なんてそんな……」
「あ、衛兵さん達にも手伝っていただきましたが」

「そ、そうですよね‥‥‥」
「森林大狼が群れを率いていました。ソイツを倒したら残っていた、多分十匹もいないくらいの森林狼は逃げていきました」
「………」


 この受付嬢よく固まるなぁ・・・
(『耐性ないのう』)
(『私はしょうがないと思いますが。少なくとも子供が倒せる相手じゃありませんからね』)


「え、えーっと……とりあえず、報酬はこちらになります。ハイオークの素材はギルドで買い取り、ということでよろしいでしょうか?」
「お願いします」
「それでは……素材の状態の確認や鑑定、それと先ほどテイルさんが仰った森林狼に関しても確認しなければなりませんので、報酬はまとめてお渡しします。明日までには終わると思うので、明日またギルドに来てもらえますか?」

 明日の予定か・・・特にないな。

「分かりました」
「こちらは先払いになります」

そう言って受付嬢は五枚の銀貨を取り出した。
それはテイルが現在お金を持っていない可能性を考えての事だった。

「ありがとうございます」
「こちらこそ」


 報酬を受け取った俺は冒険者ギルドを出て教会へと歩いた。
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