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第四章/杉井豊花(破)
Episode063╱平凡な非日常
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(103.)
翌朝、裕希姉と瑠奈は揃って朝食を食べていた。
私も遅れながら朝食の席に着く。
「本当に大丈夫なの? 母さん、貴女たちが本当に心配よ」
母さんは心配そうに呟く。
「不安なのはわかるけど、私が何とかする。私が招いた結果だからさ。それに裕希姉には瑠奈がついてるから大丈夫だよ」
実際には不安だが、私がしっかりしないと家族も不安がるだろうと考えてそう答えた。
「そうそう。ゆきりんは大船に乗った気持ちでドーンと構えといてよおっけぃ。わたしがついてるだけで、たとえ相手が軍隊だろうと傷は負わせないからさ? で」瑠奈は私の方に顔を向ける。「もし相手が来たとして、脅して立ち去らせる? 殺しちゃう?」
「殺しちゃって」
私は真顔でそう答えた。
「ちょっとゆったー、昨日からおかしいよ。人殺しなんて間違ってる」
自分が被害に遭ったっていうのに、なにを言い出すのやら。
「べつにいいけどさ? 多分さとりんなら不殺は貫くと思うよ? だって自分を人身売買で買って強姦しつづけて捨てた男を未だに殺しちゃいないからね」
え?
そういえば、あまり沙鳥の過去とか訊いたことはないけど、ちょくちょく話には挙がる。そこで犯されたとか聞き覚えがある。
裕璃が殺人した際に庇ってくれたから、てっきり本人はとっくのとうに加害者を殺害しているのかと思った。
「じゃあ……まあ裕希姉の判断に任せるよ。つまり沙鳥は自分を害した相手に関して不殺を貫いてるの?」
「基準がわからないんだよね。自分を売った両親は殺したらしいし、舞香を害した相手には容赦しないし。ただ自分を買った男に関しては恨みはあるけどわざわざ殺しに行ったりはしてないみたい」
うーん、たしかに基準がわからない。
自分の両親を殺しておきながら、自分を害した男には興味なさそうな態度だ。
普通、殺したいくらい恨んでいそうなものだけど。特に沙鳥って容赦ないイメージがあるし。
「物騒な話はやめてよ。母さん本当に心配だわ……あなただけは犯罪とは無縁と思っていたのに……どうして」
「ママ、ゆったーを責めないであげて。この子がしてきたことは間違いだとは思っていないから。ただ、たまたま不運がつづいちゃっただけに思えるんだよね」
裕希姉はこんなときでも庇ってくれる。昔の暴君みたいな姿が嘘みたいだ。
「裕希がそういうなら……ただ気を付けなさいよね? 豊花もよ?」
私と裕希姉は同時に頷く。
六花が遅れて起きてきた。ただリビングには席がもうない。父さんは一足早く朝食を食べ終わったらしく自室で二度寝しているらしい。席が四つしかないから仕方ないといえば仕方ないが……。
私は席を立ち六花をそこに促す。
「じゃあ、父さんと母さんは六花が守ってあげて。荷物とか来ても絶対六花をつけること。裕希姉も必ず瑠奈と離れないでね」
「おっけい、トイレも一緒に入ってあげるねゆきりん?」
「ちょーっち不安なんだけど……学校で体とかべたべた触らないでね」
今だけは瑠奈の過剰な同性愛が助かると思ってしまう。
しかし、瑠奈はアレだな……女の子だったら裕希姉みたいのでもお構いなしか。
私は少し心配に思いながらも、一足さきに家を出ることにした。
さあ、いつでも来い。沙鳥が真実の愛を壊滅させるというけれど、私も私で情報を集めて沙鳥に伝えてやる。そう覚悟を決め私は家を出た。
私は普段の登下校の道を、やや緊張しながら平常どおり歩く。当然だが、来るなら登下校の最中ということになるだろう。
と、細道に入った瞬間、私は急に肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、そこには瑠衣や瑠璃、そして制服に身を包んだありすがいた。
「豊花、おはよう……」
瑠璃は少し疲れぎみだ。
「おはよう、瑠璃。おはよう、ありす、瑠衣」
「おはよう、豊花」「おはよー」
瑠衣とありすは瑠璃に比べるとケロリとしている。
当事者のひとりだというのに、瑠衣はあまり緊張している様子がない。肝が座っているのか、状況を理解できていないのか……判断が難しい。
「あれ? 瑠美さんは?」
「ひとりで大丈夫だって言うのよ……だから三人で登校しなさいって。あと、なるべく固まって行動していなさいって。第一、お母さんが学校に来ても偽装できないじゃない……」
「まあ、たしかに……」
それに、あの自宅ならそうそう攻められないか。狙われる可能性も一番低いだろうし。
問題なのは瑠衣と瑠璃だ。どうしても個別に別れて行動しなくてはならない。
そこで考えた結果、直接金沢を傷つけた瑠衣のほうが狙われる可能性が高い(以前も狙われたのは瑠衣だった)ことから、ありすは瑠衣を陰ながら見守ることに決めたという。
何気ない日常生活。しかしそれは非凡だ。平凡な非日常とさえいえるかもしれない。
こんな生活があと何日つづくのか、考えていたら憂鬱になってくる。
でも、憂鬱になっている暇はないのであった。
翌朝、裕希姉と瑠奈は揃って朝食を食べていた。
私も遅れながら朝食の席に着く。
「本当に大丈夫なの? 母さん、貴女たちが本当に心配よ」
母さんは心配そうに呟く。
「不安なのはわかるけど、私が何とかする。私が招いた結果だからさ。それに裕希姉には瑠奈がついてるから大丈夫だよ」
実際には不安だが、私がしっかりしないと家族も不安がるだろうと考えてそう答えた。
「そうそう。ゆきりんは大船に乗った気持ちでドーンと構えといてよおっけぃ。わたしがついてるだけで、たとえ相手が軍隊だろうと傷は負わせないからさ? で」瑠奈は私の方に顔を向ける。「もし相手が来たとして、脅して立ち去らせる? 殺しちゃう?」
「殺しちゃって」
私は真顔でそう答えた。
「ちょっとゆったー、昨日からおかしいよ。人殺しなんて間違ってる」
自分が被害に遭ったっていうのに、なにを言い出すのやら。
「べつにいいけどさ? 多分さとりんなら不殺は貫くと思うよ? だって自分を人身売買で買って強姦しつづけて捨てた男を未だに殺しちゃいないからね」
え?
そういえば、あまり沙鳥の過去とか訊いたことはないけど、ちょくちょく話には挙がる。そこで犯されたとか聞き覚えがある。
裕璃が殺人した際に庇ってくれたから、てっきり本人はとっくのとうに加害者を殺害しているのかと思った。
「じゃあ……まあ裕希姉の判断に任せるよ。つまり沙鳥は自分を害した相手に関して不殺を貫いてるの?」
「基準がわからないんだよね。自分を売った両親は殺したらしいし、舞香を害した相手には容赦しないし。ただ自分を買った男に関しては恨みはあるけどわざわざ殺しに行ったりはしてないみたい」
うーん、たしかに基準がわからない。
自分の両親を殺しておきながら、自分を害した男には興味なさそうな態度だ。
普通、殺したいくらい恨んでいそうなものだけど。特に沙鳥って容赦ないイメージがあるし。
「物騒な話はやめてよ。母さん本当に心配だわ……あなただけは犯罪とは無縁と思っていたのに……どうして」
「ママ、ゆったーを責めないであげて。この子がしてきたことは間違いだとは思っていないから。ただ、たまたま不運がつづいちゃっただけに思えるんだよね」
裕希姉はこんなときでも庇ってくれる。昔の暴君みたいな姿が嘘みたいだ。
「裕希がそういうなら……ただ気を付けなさいよね? 豊花もよ?」
私と裕希姉は同時に頷く。
六花が遅れて起きてきた。ただリビングには席がもうない。父さんは一足早く朝食を食べ終わったらしく自室で二度寝しているらしい。席が四つしかないから仕方ないといえば仕方ないが……。
私は席を立ち六花をそこに促す。
「じゃあ、父さんと母さんは六花が守ってあげて。荷物とか来ても絶対六花をつけること。裕希姉も必ず瑠奈と離れないでね」
「おっけい、トイレも一緒に入ってあげるねゆきりん?」
「ちょーっち不安なんだけど……学校で体とかべたべた触らないでね」
今だけは瑠奈の過剰な同性愛が助かると思ってしまう。
しかし、瑠奈はアレだな……女の子だったら裕希姉みたいのでもお構いなしか。
私は少し心配に思いながらも、一足さきに家を出ることにした。
さあ、いつでも来い。沙鳥が真実の愛を壊滅させるというけれど、私も私で情報を集めて沙鳥に伝えてやる。そう覚悟を決め私は家を出た。
私は普段の登下校の道を、やや緊張しながら平常どおり歩く。当然だが、来るなら登下校の最中ということになるだろう。
と、細道に入った瞬間、私は急に肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、そこには瑠衣や瑠璃、そして制服に身を包んだありすがいた。
「豊花、おはよう……」
瑠璃は少し疲れぎみだ。
「おはよう、瑠璃。おはよう、ありす、瑠衣」
「おはよう、豊花」「おはよー」
瑠衣とありすは瑠璃に比べるとケロリとしている。
当事者のひとりだというのに、瑠衣はあまり緊張している様子がない。肝が座っているのか、状況を理解できていないのか……判断が難しい。
「あれ? 瑠美さんは?」
「ひとりで大丈夫だって言うのよ……だから三人で登校しなさいって。あと、なるべく固まって行動していなさいって。第一、お母さんが学校に来ても偽装できないじゃない……」
「まあ、たしかに……」
それに、あの自宅ならそうそう攻められないか。狙われる可能性も一番低いだろうし。
問題なのは瑠衣と瑠璃だ。どうしても個別に別れて行動しなくてはならない。
そこで考えた結果、直接金沢を傷つけた瑠衣のほうが狙われる可能性が高い(以前も狙われたのは瑠衣だった)ことから、ありすは瑠衣を陰ながら見守ることに決めたという。
何気ない日常生活。しかしそれは非凡だ。平凡な非日常とさえいえるかもしれない。
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