前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

文字の大きさ
68 / 233
第四章/杉井豊花(破)

Episode063╱平凡な非日常

しおりを挟む
(103.)
 翌朝、裕希姉と瑠奈は揃って朝食を食べていた。
 私も遅れながら朝食の席に着く。

「本当に大丈夫なの? 母さん、貴女たちが本当に心配よ」

 母さんは心配そうに呟く。

「不安なのはわかるけど、私が何とかする。私が招いた結果だからさ。それに裕希姉には瑠奈がついてるから大丈夫だよ」

 実際には不安だが、私がしっかりしないと家族も不安がるだろうと考えてそう答えた。

「そうそう。ゆきりんは大船に乗った気持ちでドーンと構えといてよおっけぃ。わたしがついてるだけで、たとえ相手が軍隊だろうと傷は負わせないからさ? で」瑠奈は私の方に顔を向ける。「もし相手が来たとして、脅して立ち去らせる? 殺しちゃう?」
「殺しちゃって」

 私は真顔でそう答えた。

「ちょっとゆったー、昨日からおかしいよ。人殺しなんて間違ってる」

 自分が被害に遭ったっていうのに、なにを言い出すのやら。

「べつにいいけどさ? 多分さとりんなら不殺は貫くと思うよ? だって自分を人身売買で買って強姦しつづけて捨てた男を未だに殺しちゃいないからね」

 え?
 そういえば、あまり沙鳥の過去とか訊いたことはないけど、ちょくちょく話には挙がる。そこで犯されたとか聞き覚えがある。
 裕璃が殺人した際に庇ってくれたから、てっきり本人はとっくのとうに加害者を殺害しているのかと思った。

「じゃあ……まあ裕希姉の判断に任せるよ。つまり沙鳥は自分を害した相手に関して不殺を貫いてるの?」
「基準がわからないんだよね。自分を売った両親は殺したらしいし、舞香を害した相手には容赦しないし。ただ自分を買った男に関しては恨みはあるけどわざわざ殺しに行ったりはしてないみたい」

 うーん、たしかに基準がわからない。
 自分の両親を殺しておきながら、自分を害した男には興味なさそうな態度だ。
 普通、殺したいくらい恨んでいそうなものだけど。特に沙鳥って容赦ないイメージがあるし。

「物騒な話はやめてよ。母さん本当に心配だわ……あなただけは犯罪とは無縁と思っていたのに……どうして」
「ママ、ゆったーを責めないであげて。この子がしてきたことは間違いだとは思っていないから。ただ、たまたま不運がつづいちゃっただけに思えるんだよね」

 裕希姉はこんなときでも庇ってくれる。昔の暴君みたいな姿が嘘みたいだ。

「裕希がそういうなら……ただ気を付けなさいよね? 豊花もよ?」

 私と裕希姉は同時に頷く。
 六花が遅れて起きてきた。ただリビングには席がもうない。父さんは一足早く朝食を食べ終わったらしく自室で二度寝しているらしい。席が四つしかないから仕方ないといえば仕方ないが……。
 私は席を立ち六花をそこに促す。

「じゃあ、父さんと母さんは六花が守ってあげて。荷物とか来ても絶対六花をつけること。裕希姉も必ず瑠奈と離れないでね」
「おっけい、トイレも一緒に入ってあげるねゆきりん?」
「ちょーっち不安なんだけど……学校で体とかべたべた触らないでね」

 今だけは瑠奈の過剰な同性愛が助かると思ってしまう。
 しかし、瑠奈はアレだな……女の子だったら裕希姉みたいのでもお構いなしか。
 私は少し心配に思いながらも、一足さきに家を出ることにした。

 さあ、いつでも来い。沙鳥が真実の愛を壊滅させるというけれど、私も私で情報を集めて沙鳥に伝えてやる。そう覚悟を決め私は家を出た。



 私は普段の登下校の道を、やや緊張しながら平常どおり歩く。当然だが、来るなら登下校の最中ということになるだろう。
 と、細道に入った瞬間、私は急に肩を叩かれた。
 驚いて振り向くと、そこには瑠衣や瑠璃、そして制服に身を包んだありすがいた。

「豊花、おはよう……」

 瑠璃は少し疲れぎみだ。

「おはよう、瑠璃。おはよう、ありす、瑠衣」
「おはよう、豊花」「おはよー」

 瑠衣とありすは瑠璃に比べるとケロリとしている。
 当事者のひとりだというのに、瑠衣はあまり緊張している様子がない。肝が座っているのか、状況を理解できていないのか……判断が難しい。

「あれ? 瑠美さんは?」
「ひとりで大丈夫だって言うのよ……だから三人で登校しなさいって。あと、なるべく固まって行動していなさいって。第一、お母さんが学校に来ても偽装できないじゃない……」
「まあ、たしかに……」

 それに、あの自宅ならそうそう攻められないか。狙われる可能性も一番低いだろうし。
 問題なのは瑠衣と瑠璃だ。どうしても個別に別れて行動しなくてはならない。
 そこで考えた結果、直接金沢を傷つけた瑠衣のほうが狙われる可能性が高い(以前も狙われたのは瑠衣だった)ことから、ありすは瑠衣を陰ながら見守ることに決めたという。

 何気ない日常生活。しかしそれは非凡だ。平凡な非日常とさえいえるかもしれない。
 こんな生活があと何日つづくのか、考えていたら憂鬱になってくる。
 でも、憂鬱になっている暇はないのであった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...