前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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第四章/杉井豊花(破)

Episode066╱敵対者?

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(105.)
『真実の愛なる組織は新たにできた組織で、個々はネットを介して動いているようです』

 トイレ休憩の最中、沙鳥にそう伝えられた。あまり電話の音が響かないようにコッソリと。

「それじゃ、相手の素性を掴むのは難しいんじゃ……」
「いいえ、リーダーである叶多を捕まえればことは収まります」と言う沙鳥。「あなた方は学生生活を謳歌しつつ、情報を集めてください」

 まあ、リーダーにそう言われてしまっては仕方ない。
 ふと、今しがた起きた出来事を沙鳥に伝えることにした。

「とりあえず、梅沢先生は敵対者です。しかも、私ではなく瑠衣を狙いました」

 さらに沙鳥に、過去に瑠衣がやらかした悪事を伝えた。

『あなたの危機察知能力は我々の中では一番優秀なのですから。その直感……とやらを信じて行動してください。それではまた』
「あ、ちょっと待って!」沙鳥が通話を切りそうなのを慌てて止めた。
『はい、なんでしょうか?』
「きょうは私ひとりで帰ります。相手の情報を引き抜けるかもしれない。瑠衣や瑠璃にはありすがついているし」
『まあ、あなたなら大丈夫だと思いますが……』
「ありがとうございます」

 学校でも気が休まらない。いつになったら真実の愛は姿を見せるのかが不安になってくる。
 沙鳥は会話の途中、三原という異能力者を拷問し、沙鳥の異能力で情報を粗方探したという。
 ーー反撃を開始します。私に嘘は通用しない。
 沙鳥はそうも言っていた。どうやら三原は遭遇した人間すべての目を借りることができるとのこと。

 だが疑問が生じる。澄が帰宅してから一転攻勢にしかけるという話はどこにいったのだろう?
 まあ、あの人たちなら大丈夫か。

『あの方がいなくても我々に手を出したこと、その恐ろしさを相手に思い知らさせてあげます』

 今度こそ通話が途切れた。

 自分になにができるのかを考える。
 考えた末、今回は自分ひとりで帰宅することに決めたのだ。
 自分を餌にするんだ、と。

「ちょっと! 危ないわよ、こんな時期にひとりで帰るなんて。あなたに戦う力なんてないじゃない!」

 校門で瑠璃に引き留められる。
 ありすはそこまで心配していなさそうだが、瑠衣や瑠璃は納得していない。それを無視して、僕は半ば無理やりひとりで帰宅することにした。
 追跡されていないのを確認すると、ふぅっと一息。

 途端に、背後から嫌な予感がして振り向く。

 そこに、背後からチェーンを腕に巻いた上級生の女性が歩いていた。片方にはナイフを片手にケラケラ笑っている下級生もいる。
 だけどーーなんていうか、相手は殺し屋でも異能力者でもない気がする。それに、いまいちありすや刀子さんみたいな不気味さはまったく感じない。
 もうひとりのナイフを片手に握る少女ーー見知らぬ少女が前に躍り出る。こちらにも驚異は感じられない。

「お姉さん、いや、お嬢さんが風守学園の最強のひと? あたしってさー、強い相手を見かけると勝負したくなるんだよね!」
「いやいやちょっと待ってくれ! 私は最強なんかじゃない!」
 
 いつそのようなことが決まったのか?
 否定するが、ナイフの少女はがむしゃらに突っ込んでくる。

 ーーん?
 たしかに早いけど、ありすと比べると屁みたいな姿勢。本当にこいつら、真実の愛の一員なのか?
 それを軽くいなし、隠し持っていたナイフをスカートから取り出した。
 そのナイフでナイフをはじきとばし、格の違いを見せつける。

「だから言ったのに……ミミ、いつかそんなんじゃ殺られるぞ?」

 チェーン女がチェーンを拳からほどかさせ、遠距離武器に変えた。チェーンを辺りに展開する。

「こっちもかい! 常識的な奴は誰もいないのか!」

 最初こそ戸惑った。が、チェーンの動作が見える。見切り、痛みの薄そうな箇所を潜り抜けチェーン女に接近する。たしかに傷はついたけど、かすり傷程度だ、痛くない。チェーンを潜り抜けながらも、避けながらも、チェーン女に接近する。

 あわててチェーンを拳に集めて巻き、それで攻撃してこようとする。
 だけど、舞香の蹴りのような痛みや、ありすの切りつけよりは遥かに遅い。私はそれを避け、相手の腕を握り背中側に腕を回す。
 二人は唖然としていた。

「さあ、真実の愛について情報を私に漏らせ。漏らさなければ命はないと……」
「真実の愛?」え?「なにそれ? 先輩知ってる?」
「いや、初めて聞いたな」

 じゃあなんで私を襲ったんだ!
 そう怒り任せに問う。

「いやなに、ミミは強そうな相手を見つけると勝負を挑まないと気がすまない質でな。私はやめておけて言ったんだが……」

 ミミは強そうな相手を見かけると勝負を仕掛けたくなる性質で、私はやめておけといったんだが……じゃないだろうが! 一歩間違えなくても犯罪じゃないか!

「それが真実なのかどうか、嘘発見器より優れた異能力者がいる。少し連絡させてもらうよ」





(106.)
「うーん、嘘はついていないみたいですね。奇っ怪な相手に絡まれたものです」

 唖然とする私に対して、愛のある我が家に入れば強い人と戦えますよ、と勧誘をする。私は無理だ、もう暴走族同士の抗争にはまっぴらごめんだ。

「第一、なぜ路上で会うんですか。相手の追跡は振りきったんですか?」
「ええ、拷問したらあっさり追跡異能力者の場所を教え、処分したところです」

 処分したのか……ならあらかた平気なのかな?
 近場には瑠奈もいる。つまりは裕希姉も勿論近場にいるのだ。
 処分と聞いて昔なら嫌な気分になったのに、今ではなにも感じられない。

「処分……」「処分!」

 チェーン使いは頭を抱え、ミミはキラキラした瞳を目に浮かべている。

「どうやらあなたは、強い相手と戦いたい。ならば、愛のある我が家の傘下になりますが、そこに歓迎しましょうか? ここにいる人たちは私を除き強い者たちばかりで暇はしませんし。それに……豊花さんの仕事は決まりましたね」

 ミミを見たあと、私の顔を見る。

「へ?」
「豊花さんの仕事とは、愛のある我が家のメンバーが増えすぎたことにより、直轄の下部組織が欲しかったのです。リーダーは豊花さん、メンバーはまだ瑠奈さんとミミさんだけですが、決まりです。よかったですね、こんなに早く大任ですよ?」
「いやいやいや。いやいやいやいやいや!」

 嫌がる私を無視して、なにやら決定事項になってしまったらしい。

「奇縁でも縁です。異能力者じゃないので訓練は必要ですし愛のある我が家には入れられません。まだまだ豊花さんに負けるようでは仕事も無理でしょう。そこら辺は学校帰りにでもありすさんに指南を受けていただいてください。頑張って稼いで上納金を集めてくださいね?」

 瑠奈はぶうたれている。厄介払いされたのと、朱音と離されることになるからだろう。
 そんな中、『じゃあお嬢さんも強いんだ!?』とミミは隙有りとばかりに瑠奈に襲いかかる。が、ナイフが弾け飛んだ。

「わたしに並大抵の物理攻撃は効かないよん。あとこう見えてアラサーだからね?」

 瑠奈にそう言われ、先ほどまで明るかったミミの表情が固まる。

「そういえば、あんたらなんなの?」とミミは訊く。
「犯罪集団愛のある我が家。よかったですね、強いかたとこれからさき戦えるようになりますよ?」

 ミミは緊張しつつも喜んでいる。逆に上級生は名前を「空だ」とだけ答えさきに帰路に着いてしまった。

「地味に年下の女の子に負けたのがショックだったんじゃない?」とミミは教えてくれた。

「さて、叶多の潜伏場所が判明しました。目の異能力と併せ大海組の情報を甘く見ないでほしいですね。ああ、一応新生組織のTHE豊花も愛のある我が家傘下に違いないです。ミミさんは愛のある我が家一員ではありませんが豊花さんの一員であることはお忘れなく。でも、豊花さんは愛のある我が家のメンバーですからね。大海さんが総白組の一員であるように、ミミさんは愛のある我が家ではなくTHE豊花のメンバーになりますから」
「ちょっとちょっと! なんなのTHE豊花って……」
「適当に決めただけです。あとで好きに名付けていいです。それでは帰っていいですよ」

 さらなる問題ごとを抱えてしまった気がしてならない。なんなんだあのミミって少女。

 ありすより遥かに格下なのに闘争本能だけは別物だ。思いもよらぬ収穫?を得て、私は自宅に帰ることにした。
 というか、あんな狭い部屋に私も入れるとか、どんだけ人材が足りないんだ……。
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