前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

文字の大きさ
77 / 233
第四章/杉井豊花(破)

Episode072╱ユタカ

しおりを挟む
(114.)
 混乱しながらも、私は急いで瑠璃に連絡することにした。

『もしもし、どうしたの?』

 瑠璃の何気ない返事が返ってくる。

「ユタカと融解したはずなのに、ある言葉を使うとユタカになってしまうんだ! ユタカはこれはおかしいと言っている。どうにかならない? 美夜さんに繋がらない!?」
『はあ? ちょっとちょっと!? いつ異霊体と融解したのよ? ステージFになったってこと!?』

 瑠璃は突然のことに焦っている。当然だ。こんなに早くステージFになった事例はないのだろう。

『わかった。美夜さんに連絡するから、至急異能力者保護団体に来て!』

 もう夜も近いと言うのに、瑠璃はすぐに対応してくれた。それくらい心配してくれているのだろう。

ーー会話が再びできるようになったのも不自然だ。それも会ったら訊いてみるべきであろうか。ーー

 わかっている。個人的には嬉しいことだが、異霊体からすれば異常事態なのだろう。
 と、沙鳥から連絡がかかってきた。
 あれ、瑠璃じゃない?

「もしもし?」

 通話に出る。

『伝えにくいのですが、柊 ミミさんは戦力にならないとありすさんに伝えられました。ありすさんが言うには、豊花さんのほうが余程戦力になると』
「は、はあ……」
『ですから、しばらくの間は豊花さん個人で動くのはなしにします』

 少し安心する。いきなり行動しろと言われても無理があるからだ。

『明日も愛のある我が家に来てください。道具とネタの取り扱いを教えますから』
「え……?」

 結局そうなるんかい!

『それでは、また明日』

 そのまま通話は切れてしまった。
 まあいい。そんなことよりまずはユタカのことだ。
 とにかくまずは異能力者保護団体に向かわないと。敵対しているとはいえ、共闘関係でもあるんだ。どうにかしてくれるだろう。

 私は着なれたワンピースを着て、少し寒いなと感じつつ異能力者保護団体に向かうことになった。



 異能力者保護団体に着くと、既に瑠璃と美夜さんがロビーに待っていた。

「で? たしかにステージFに到達しているな。それでボクになにが聞きたいんだい?」
「やっぱりステージFになっているっていうの!? 普通に見えるんですけど!?」

 瑠璃は美夜さんの言葉に驚く。

「見せたほうが早いかな……まずはあまり見せたくないんだけど……ステージが成長して異能力が変化したのがこれーー男体化」

 瞬間、一瞬意識を失い元の僕の姿に戻った。
 あまり瑠璃には見られたくなかった……けどしょうがない。

「へぇ、それがきみの元の姿か。ボクはてっきり不細工を想像していたんだが、普通じゃないか」

 へ?
 普通?

「豊花、あんたが言っていた元の自分は不細工だって、あれ嘘だったの? たしかにイケメンでもないけど、不細工ってほど顔は崩れてないわよ?」

 瑠璃にまでそんなことを言われる。

ーーだから言っただろう? きみは思っているほど不細工ではないと。まあ、並だな。ーー

 皆にそう言われて、なんだか少しだけ自信がわく。いや、でも女性が言う普通って、普通以下のこともよくあるしなぁ……。

「おい……なぜ融解しているステージFなのに異霊体と会話できているんだい?」

 美夜はぎらりと瞳を睨ませる。

「それは今から見せるよ。この間、僕の記憶は曖昧になるから気を付けてね?」そう注意を付けたし、僕は「ーーユタカ化」と唱えた。

 再び意識が途絶える。
 そこには、豊花(わたし)とも豊花(ぼく)とも違う、ファンシーな衣装に身を包んだ少女(ユタカ)が現れた。

「な!?」
「三人目の……変身?」

 二人は驚き声を上げる。

「いや~、違うよ? 私はユタカでありながら豊花ではない。いわゆる異霊体だ。今の豊花は私の精神にしか干渉できない」

ーー……どうして僕と話すときと口調が違うのさ?ーー

「気にしない気にしない。さて、これを何 美夜はどう判断する? 私としても豊花と融解できなくて困っているんだ。これじゃ融解じゃない。分離だ」

 ユタカの言葉に対し、美夜は頭を抱え首を振る。

「どこまで前代未聞なんだ、こいつらは……いっておくが、こんな事例は世界初だ。それに全員幽体が消えている。まるで別人が重なりあっているようだ」
「たしかに……私にも見えません」

 瑠璃は美夜に同意する。

「しかも、だ。私に変身しているときは異能力が使えないときた。ただ、使い道があるかもしれないぞ? なにせ」ユタカはつづけた。「わたしには異能力発露の光が見える。使えないのは男体化時のみだろう」

 まあ、とユタカはつづけた。

「普段は女体化で過ごせ。男体化で過ごすメリットはないしね? ユタカの間は記憶が曖昧になってしまう弊害もあるし、豊花と融解ができなくなってしまうかもしれない。それは嫌だ」

 と拒否するユタカ。

ーー僕はむしろ、融解したくない。一緒にいたい。ーー

「わがままを言うな。それ、戻るぞーー女体化」

 たしかに異霊体が目的にしているのは幽体・霊体の融解だ。これでは分離ではないか!
 とユタカは若干焦りぎみなのはわかる。でも、私は……。

「どうする? これは世界異能力協議に提出したほうがいいのかもしれないぞ?」
「豊花のことも考えてください! 豊花はたしかにステージFに入っていますけど、普通に生活……普通?」

 愛のある我が家に入り犯罪に抵抗がなくなっている私は、普通とは言えるのだろうか?
 瑠璃は言葉を濁して、そのまま口を閉じる。

「とりあえず、なにか変化があったらすぐに知らせたまえ。このままうじうじしていても仕方ない。前代未聞の異能力者ーーそれが今のお前の立場だ」

 こうして、本日は帰宅することになった。



 ステージFになったから悪事を働くのか?
 帰宅道、私はそればかり考えていた。

ーー何度言えばわかる? 異能力者は異能力を持つから確かに悪事に傾きやすいが、異能力者でも異能力者保護団体に協力しているものもいる。だから安心しろ。ーー

 うん……。

 僕はいまいち納得できないまま帰宅するのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...