前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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第四章/杉井豊花(破)

Episode075╱乱闘の舞台へ

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(109.)
 翌日の放課後、事件は起こった。
 いつもどおりに帰宅しようとすると、校門に不良が溜まっているのだ。
 今日は瑠璃や瑠衣もいないため、あえて避けてとおりたいんだけど……そのなかに以前絡んできた不良もあった。
 私関係……?
 不良はザッと数えて20人くらいはいる。生徒たちが怖がって通れないでいる。
 ため息をつき、私はその不良に近寄った。

「何の用ですか?」
「ああ? テメーら一般生徒にゃ用はねぇよ。おまえ、空西岸って先輩知らねーか?」

 ありゃ?
 私に用はないと?
 と、以前ゲーセンで絡んできた不良を見ると、おろおろしている。
 ああ、あいつらが私に復讐しに来たわけじゃないのはわかった。
 偶然再会してしまったのだろう。
 あの動揺具合は恐怖に対する感じだ。

 ん? 空西岸?

「あ……一応知ってますけど……」
「マジか。なら呼んできてくれ。岸谷(きしたに)が表にいるってよ」
「それは不要だ」

 背後を見ると、空さんと柊がこちらに向かって来ていた。そこには宮下もいた。意外すぎる組み合わせだ。

「また喧嘩っすか?」

 宮下が不良のボスらしき男ーー岸谷に問う。

「ああ。宮下や柊も悪いけど頼む」

 岸谷は頭を下げる。
 喧嘩?

「まったく……今回だけだぞ」
「すんません、近くにバイク止めてあるんで。相手と決めた河川敷まで運びます。面子が足りないんすよ」
「ちょっ……宮下、なにするつもりなの?」

 空さんと岸谷ーー二人の会話が気になり宮下に小声で訊いてみた。

「多数対多数の喧嘩だよ。こいつらは暴走族で、喧嘩する際昔のダチだった空先輩や俺らを誘ってるんだ」

 うわぁ……まあ私には関係ないことか。
 だけど宮下が心配になってくる。喧嘩とか普段からしてたから、以前も喧嘩っぱやかったのか。

「新入りが三人いるけど、こいつらは味方だから気にしないでくれ。宮下はもちろん来るよな?」
「ええ、行きますよ。でもそいつらこのまえゲーセン前で絡んできて喧嘩になったんすよね」

 宮下が新入りと言われたこのまえ戦闘になった三人を指差す。

「なに? 本当か?」
「すみません総長! まさか総長の知り合いだとは思いもよらず……マジすんません!」

 三人で一番歳上のーー私がぼこぼこにした奴が土下座をしながら謝る。

「別に俺は気にしてませんが、こいつに謝ってください」と宮下が私を前に差し出した。「こいつにしつこくナンパして気分を害してたんで」
「うっ……すみませんすみません……!」
 
 なぜか私に怯えながら体を震わせる。

「いえ、こちらこそ何だかすみません……結果的に私は怪我してませんし、そちらの方を殴ってしまって……」
「は? おまえら下級生にナンパしたうえで返り討ちにあったのか?」
「はい……異様に強いっすよ……トラウマになりましたし」

 総長……岸谷は私に顔を向けた。

「なに? おまえも戦えるのか? 柊や空さんだけじゃなくて、そんな喧嘩とは無縁な可愛い顔してるのに?」
「ええと……まあ、ちびっとだけなら「そいつは私や柊より強いぞ?」」

 空さぁぁん!?
 なんだか巻き込まれそうな予感がして、なるべく関わらない回答をしようとしたのに、まさかのまさか、空さんに邪魔されてしまった。

「マジかよ!? 空さんより強い奴がいるのか……? 頼む! 今から始めるのは負け戦並みに人数比が足りないんだ。こっちは二十人しかいないのに向こうは四十人近くいる。頼むよ、えっと……」
「……杉井豊花です」
「杉井、頼むよ! いや、杉井さんお願いします」
「いや、呼び捨てでいいです。敬語も要りません」

 まさかの総長にさん付けで呼ばれてしまった。
 うーん……負け戦にわざやざ関わる宮下も心配だし、私が行っても負け戦なのは変わらない気がするけれど……。
 うん、やっぱり宮下が心配だ。正直つい先日関わったばかりの空さんや柊は心配するほどの仲じゃないけど、宮下が大怪我負わされたら、ここで無視したとき後味が悪い。

「ちょっと待っててください」

 私はそう答えると、沙鳥に手早く連絡を入れた。

「すみません、急用で今日行けなくなってしまいました……」
『またですか? ……はぁ、わかりました。明日こそはきちんと来てくださいね。それまでにしっかり体を治しておいてください』

 なんだか風邪がぶり返したのかと勘違いしているようだ。そっちのほうが都合はいいか。

「はい、失礼します……」私は通話を切り携帯をポケットにしまった。「わかりました。宮下が心配ですし、私もついていきます」
「ありがとう! 空さんがいればだいぶ人数差が狭まるし、空さんより強いんだったら勝ち目が出てくる!」

 総長は汗を袖で拭いながら感謝を述べた。

「おいおい豊花ちゃん、心配してくれるのはうれしいけどよ、下手したら骨折したりするかもしれねぇんだぞ? さすがに死にはしないように互いには気をつけているけど、だからこそ豊花ちゃんが俺を心配する必要はねえって」
「大丈夫、私もナイフは使わないよ」

 殺し殺されの生活を送ってきたからか、最悪死にかねないのが当たり前だと思っていた。なんだ、死なないで済むのか。

ーー豊花、感覚が麻痺しているのではないか?ーー

 心配しないで。私ひとりでも三人くらいは相手にできるよ。
ーーそういう心配ではないのだがな……。以前みたいに殺人は犯すのではないぞ。今は日常生活、愛のある我
が家の後ろ楯もない。ーー

 わかってるって。

「それじゃバイクを停めてある場所まで行くぞ、てめーら」

 総長は族の仲間に声をかけ、ぞろぞろとバイクの場所まで移動するのであった。





 バイクがパーキングエリアに大量に停めてある……。
 みんなそれぞれバイクに跨がり、空さんや柊、宮下は別々の奴の後ろに乗った。
 ええと、私は……。

「好きな奴の後ろに乗って構わないから」

 総長に言われ、せめて顔馴染みが良いと思い、このまえぼこぼこにした不良の後ろに乗ることにした。

「ひぃ! も、もう許してくれませんか? お、俺なにも知らなくて……」
「いや、あの、行くんですよね? 乗せてくれません?」
「わ、わかりました……」

 私は落ちないよう不良の体に手を伸ばして強めに抱きつく。うわ、超振るえている。ガタガタ振動が伝わるくらいだ。
 そんなビビらなくてもいいのに……。

「んじゃ、てめーら喧嘩は人数じゃないってことを教えてやるぞ!」
「「おー!」」

 声で地鳴りがしそうだ。
 みんな目が血走っている。それを隠すようにヘルメットを着けた。これから戦争にでも行くような雰囲気を醸し出している。

 そうして近場の河川敷までバイクを走らせるのであった。
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