前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

文字の大きさ
101 / 233
第五章/異能力者

Episode095╱周囲の反応

しおりを挟む
(136.)
 翌朝、私は父と母と、珍しく遅く起きた裕希姉と共に、テレビを見ながら朝食を摂っていた。
 テレビでは被害状況を報じたうえ、異能力者保護団体の人たちが会見を開いている。

『まず初めに言っておきます。今回の事件を引き起こしたのは異能力者の仕業ではありません。第一級異能力特殊捜査官のボクが断言します』

 美夜さんのそれに対し、インタビュアーが責めるように言葉を発する。

『それは責任追求を避けているだけなのでは!?』
『今回の問題、異能力者以外にどう引き起こせると!?』
『異能力者保護団体としてはどうお考えかを一言』

 口々に美夜さんたちは責め立てられる。
 母親が無言でチャンネルを変えた。

『やっぱり異能力者は隔離すべきですよ! 何人もの犠牲者が出たかわかっているのですか!?』
『待ってください! その異能力者を止めたのも異能力者だと聞き及んでいます! 犯罪者の異能力者が素直に隔離されるとは考えられない! 法律が意味を成していないのだから』

 母さんは苛立ちながらテレビを切った。

「ゆったー……大丈夫? きょう、学校休む?」

 裕希姉は心配そうに声をかけてきた。
 裕希姉はきょう、大学が休みらしい。

「いや、大丈夫だよ。さっきの会見でも言っていたとおり、異能力者がやったことじゃないんだよ、あれは」

 とはいえ、原因の大本は異能力者である朱音だ。
 それを口に出すことはないけど、いつ追求されるかわからない。

「今回の荒事が止んだのは一時的なことなのか?」

 父さんが心配そうに訊いてくる。

「いいや、もう心配ないよ。信じてもらえないかもしれないけど、今回の騒動を解決したのは愛のある我が家の一員なんだ」

 騒動を起こしたのも愛のある我が家の一員だけど……とは口が裂けても言えない。

「それはなんというか……すごいな。それが本当なら、愛のある我が家というのは案外、特殊指定異能力犯罪組織と云われながらも正義の味方なのかもしれないな、はは」

 父さんはそんな冗談を口にする。
 正義の味方……飯の味がしなくなる。
 私が引き起こした事件ではないのに、罪悪感に蝕まれそうだ。

「ごちそうさま。そろそろ学校に行くよ」

 私は席を立ち自室に戻る。鞄を手に取り玄関に向かう。

「本当に大丈夫なの?」

 母さんは不安そうな表情で玄関まで付き添う。

「なんかあったら言うんだぞ、ゆったー」

 裕希姉もリビングから声をかけてくれた。

「大丈夫。行ってきます」

 私は静かに玄関を開けて外に出た。




 いつもどおりの通学路、なのにドラゴン二名が通学路で待ち構えていた。

 え?

 なぜ?

「大丈夫でしたか姉御!?」
「心配しましたよ姉御!」

 姉御姉御うるさい!
 どうやら心配してくれたらしいが、わざわざ様子を見に来ることじゃないだろう。

「豊花……その人たち誰よ?」

 げ?

「だれ?」

 げげ!

 背後から瑠璃と瑠衣の二人が歩いてきた。

「姉御のご学友っすか!? 俺たち暴走族ドラゴンメンバーの一員っす! 姉御にはいろいろ救われまして」

 名前が変わっていた。
 ドラゴンメンバーって、ただくっつけただけやないかい。

「あ、あんた……暴走族とまで関わり持ってるの?」

 瑠璃に呆れられてしまったじゃないか。

「いいからいいから、ドラゴンメンバーさんたち、私たち学校があるから、また今度」
「わかりやした! 行ってらっしゃいませ!」

 ドラゴンメンバー二人はわざとらしく敬礼しながら、僕らを見送った。

「……それより豊花、昨日休んでたでしょ? まさか昨日の異能力者問題に関わってたの?」

 瑠璃に追求される。
 答えに迷いながら、仕方なく頷いた。

「どうしてあんなこと……」
「違うよ、私はただ見守ってただけ。蛮行を働いてた魔女三名を止めるため、愛のある我が家が動いてたんだ」
「魔女?」

 そこから説明しなくてはならないのか。

「でも、たしかにオーラはあったし、異能力というには凶悪過ぎるし種類も豊富よね」
「で、でしょ? 異能力者だけじゃないんだよ。ほら、結愛のように異能力者が産み出した異能力を持つ人間みたいな奴らなんだよ」
「で、呼び出した犯人は?」
「……わからない」

 歩きながら答えをはぐらかす。
 仲間が原因なんて知られたら、どうなるかわかったもんじゃない。

「それと……異能力者に対する風当たりが強くなりそうだから、瑠衣も豊花も気を付けなさいよ。あんなことする犯罪者、一部だってみんな心ではわかっていても、やっぱり異能力者に対する恐怖が深層心理に刻まれただろうし」
「わかってるよ」
「ん」

 私と瑠衣は同時に頷いた。




 学校に着き、それぞれの教室に向かう。
 なんだか、周りから嫌な目線を向けられている気がしてならない。
 教室に入り自分の席に着く。

「おはよう豊花ちゃん……昨日は大変だったんだぜ? この学校付近にも件の異能力者が通ったとかでさ」
「そ、そうなんだ……風邪引いてて助かったよ」
「ま、豊花ちゃんなら何とか倒しちゃいそうだけどよ」

 その言葉にクラスの数名が苦笑いをした。
 どうやらクラスメートたちは私に対して表だって嫌悪感を剥き出しにはしていないらしい。嫌な空気を感じない。

「まっ、俺たちになんかあったら、豊花ちゃんが守ってくれよな」
「うん、約束するよ。宮下やクラスメートが危機に瀕したら、私は必ず助けに向かう」

 私を受け入れてくれる。こんなクラスメートたちを失いたくはない。
 強い決心と共に、約束する、と断言した。

 そうこうしているうちに雪見先生が教室に入ってきた。

「はーい、みなさん席に着いてくださ~い。昨日は大変でしたね~」

 雪見先生は相変わらずのんびりした口調で騒がしい教室を宥める。

「豊花ちゃん。テレビではいろいろ言われてますが~学校側は貴女たちの味方ですよ~。なにかあったら先生に言ってくださいね~?」
「は、はい……」

 なんか注目を集めているみたいでつらい。
 どうやら学校側は、瑠衣や私みたいな在学中の異能力者の味方という立場でいてくれるらしい。
 私はともかく、瑠衣にとっては助かるだろう。

 普段からハブられ気味の瑠衣にとっては……。








(137.)
 昼休憩、私はいつもどおり瑠衣の教室に向かった。
 ん?
 なにやら瑠衣がクラスメートに囲まれている?

「あんたの仲間がやったんでしょ? このクズ人間!」
「まえまえから危ないと思ってたのよ! もう学校にくんな!」

 瑠衣は無言で周囲から責め立てられていた。私の教室とは大違いだ。
 普段からの素行と、異能力の内容と、態度などが合わさり異能力者に対する視点が違うのだろうか?

「みんなやめろ! 瑠衣によってたかって、苛めるんじゃない!」

 私が割って入った。

「ほーら異能力者同士傷のなめあいしちゃって。あんたらみたいなクズがいるから何百人も犠牲になったのよ!」
「それは瑠衣がやったことじゃないでしょ! 邪魔よ! 退きなさい!」

 いつ来たのか、瑠璃がクラスメートの肩を掴んで瑠衣から距離を取らせる。

「このことは先生に報告させてもらうから、いいわね?」
「せーんせいにいっちゃーお、だって。おー怖い怖い。妹があれなら姉もこれよね」
 クラスメートたちは文句を口々に垂れながら瑠衣から離れていった。

「まえからなの?」

 瑠璃は瑠衣に問いかける。

「違う、きょう、いきなり」

 おそらく昨日の出来事が発端となり、まえまえから瑠衣に対して感じていたフラストレーションが爆発したのだろう。
 たしかに朱音が異世界から呼んだのが原因だけど、人質に取られたのは、私が助けた裕璃だ。つまり、私も原因の一端を担っている。
 悔しくて歯噛みしてしまう。

「うるさい奴らはあとで担任に報告して、早めにお昼を食べちゃいましょ」

 未だに教室の隅でこそこそと陰口を叩いている。
 どうしてクラスが違うだけで、こんなにも人間が違うのだろうか?

「おい、聞き捨てならねーな」

 と、教室の入り口付近で陰口を叩いていた女子三名に、男子がーー偶然通りかかったのか、宮下が声をかけた。

「昨日は瑠衣ちゃん学校に来てただろ? お前らあれか? 殺人者が出たとき人間は危ないから隔離しろとか言う気か? 凶器に包丁が使われてたら包丁が存在するのが原因だとかいう頭いかれポンチか? どうなんだよオイ」
「な、なによあんた? 葉月の知り合い?」
「友達だよ。テメーらが言ってんのはな? 犯罪者が刃物を使ったからって、刃物は危険だすべて管理しろって言ってんのとおなじなんだよ。人間が殺人を犯したら人間全員が危ないか? よーく考えろ。気分悪いこと言ってんじゃねー」

 そう言い捨て、宮下はそのまま通りすぎて行った。
 本当に偶然通りがかっただけなのか、こちらには気づいていなかった。
「なにあいつ? 先輩面してむかつく」
「本当本当、異能力者の味方しちゃってさ。偽善者みたい」

 反論できないからなのか、ただの悪口へと変わっていく。
 宮下の言うことには一理あった。いや、それ以上あった。
 なんだか宮下が言ってくれたおかげか、胸のつかえが若干取れ、スッキリした。

「いい友達を持ってるのね、豊花?」

 瑠璃に言われて、私は力強く頷く。

「うん、最高の友達だよ」

「私は?」

 くいくい、と瑠衣に衣服を引っ張られる。

「もちろん、瑠衣も友達だよ」
「最高、の?」
「う……うん、最高の友達さ」

 ちょっといいよどんでしまった。

 瑠衣だってたしかに友達だ。けど、宮下との付き合いは瑠衣よりずっと長い。男時代から、なにかと話しかけてくれた、気のいいやつだ。
 瑠衣とはまだまだこれから仲良くなるだろう。いつか、心から親友と呼べるように。瑠璃も……瑠璃は……。

「ん? なによ」

 いつの間にか瑠璃をジッと見ていたらしい。いかんいかん。
 瑠璃とは、いつか真の意味での恋人になりたい。心から願っている。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...