前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

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第五章/異能力者

Episode106╱一時の休息

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(150.)
 戻ってきた私たちを見て、みんなは倒しきれなかったのを悟る。

「私は鏡子さんの目を借りていましたが、見るのが次第に嫌になってくるタイプの敵でしたね……」

 もっともだ。
 あんな憎悪を固めたような怪物を操るだなんて知らなかった。

「やはり成長しているな。以前までは召喚できるサイズも量も、もっと少なかったはずだ」

 刀子は愚痴るように沙鳥に溢した。

「師匠ー、ここ本当に安全地帯なんですか?」
「それに代わりはないが、居場所は判明されてしまっているのは痛いな」

 今回は愛のある我が家だけになく異能力者保護団体本体に喧嘩を吹っ掛けてきたのだ。それに対し、刀子は悔しそうに歯噛みする。

「あれ……ここどこかしら……」
「!?」

 舞香がまぶたを擦り、額の汗を拭うとようやく意識を取り戻す。 

「舞香さん! 寝起きには辛いですが、いったいなんの異能力に成長したのでしょうか? 今までの異能力ではあの場面で対処法はなかったはずです」

 舞香は迷う素振りを見せたあと、ようやく説明してくれた。

「私の異能力は、今までは空間置換だけだったんだけど、どうやら死に物狂いで異能力を使えば、“時空間”を触らずに切り抜くことが可能になったみたい」

 じ、時空間ーー名前だけ聞くととんでもない異能力な気がしてならない。

「ですが、使うたんびに倒れられていたら使い道が限られます。ピンチのときだけにお使いくださいね?」

 沙鳥に指示され、舞香はぐったりしたまま頷いた。

「弥生ひとりにてこずるとは、これから先が思いやられるな」

 刀子さんは片手で頭をこすり首を振るう。

「まさか、異能力者保護団体と愛のある我が家が表だって協力することになるとはねー」

 ありすは少しおちゃらけたように言う。

「敵の異能力者の全貌が掴めていないのが痛いな。本来我々は相手の特徴を研究して処分していく。睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走ーーこのなかで討伐したのは皐月と葉月だけ。遭遇したのは神無月のみ。異能力が判明しているのは水無月と弥生のみだ。こうなってくると対策を練ろうにも練られない」

 弥生はわからないけど、他のメンバーにもそれぞれ部下がいるはずだ。
 それを踏まえると、恐ろしい数の異能力者が神奈川県に集中していることになる。

「全員が……判明しないと……逆に……返り討ちにあうかも……」

 鏡子は恐る恐る口にした。
 鏡子に言うとおり、異能力者というのは皆それぞれ予測できない力を持っているのだ。正面からぶつかりあえば不利になるのは必須。

「ひとまず休もう。みんな疲れているだろう。五階に患者用のベッドがあるからそれを使えばいい。相部屋だが、今に限ってはそれは好都合だろう。なにかあったらブザーを鳴らせ、皆で駆けつける」

 刀子さんの言葉を閉めに、皆はぞれぞれ室外へと出ていった。
 みんな暗い表情をしている。無理もない。いつ異能力の世界が襲撃をかけてくるかわからないのだから……。

 なぜか私は鏡子と同室になった。
 目の関係性から、敵襲が把握しやすく、なおかつ敵意のある攻撃を防げるといった理由での采配らしい。

「……豊花さんと……一緒ですね……」

 ベッドににじりよってくる。
 いやいやいや、布団は二つあるのだから、わざわざ私の布団に潜り込む必要はないだろう。

「でも……このほうが安心します……」

 それなら仕方ない……って普通はならないだろう。
 どうにか説得して、空いているもうひとつのベッドに誘導した。
 女の姿の筈なのに、やたらと積極的に迫ってくるのは、鏡子といい瑠衣といい瑠奈といい、女の子ばかりだ。これはあれか? 謎のフェロモンでも醸し出しているのだろうな?

 とにかく、私は貞操を守り続ける気だ。瑠璃相手ならやぶさかではないけど、瑠璃は同性愛者ではなさそうだし……。

「豊花さん……私たち……どうなってしまうんですかね……」
「私にもわからない」

 相手は皐月と葉月を除いても、まだ十人はリーダー格がいるはずだ。
 そして、ひとりひとりの異能力は桁違いに凶悪なものばかりだ。
 果たして、異能力者保護団体と愛のある我が家だけで対処できるのかが心配になってくる。

 でも……。

「大丈夫、なんとかなるはずだよ」

 鏡子に弱い自分は見せたくない。私まで怖がれば、鏡子にまで伝染してしまうだろう。

「鏡子は異能力者を無理ない範囲でつかって、それらしき異能力者を見つけることに徹しればいい」
「……はい……」

 鏡子は布団にこもり、両目を手で覆う。義眼だから元より見えないはずだが、そうすることによって、異能力の精度が上がるのかもしれない。
 私は私で、今までの疲弊がどっと押し寄せて来て、いつの間にか夢の中へと堕ちていった。
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