前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

文字の大きさ
120 / 233
第五章/異能力者

Episode114╱女になったのだから……?

しおりを挟む
(160)
 翌日。
 早朝に目が覚め、隣で寝ている鏡子を起こして顔を洗っている最中、背後から声が聴こえた。

「ただいま帰ったぞ、沙鳥」
「おかえりなさい、澄さん。一応連絡したとおり、非常事態です」
「ふむ、だからここを拠点にしているんじゃな?」

 澄が帰ってきたのか。なんか安心感がスゴいな。

「澄さんには刀子さんと合流してもらいます」沙鳥は紅茶に口をつけ、しばらくしたら離した。「ここは既に無敵の要塞と化しています。わざわざこれ以上堅牢につくる必要性は薄いでしょう」

 澄がいてくれれば更なる強固な守りになるんだけどなぁ……。
 沙鳥はチラリとこちらを見る。

「たしかにここをさらに堅牢にするのもありかもしれませんが、そしたら相手はここ以外を攻めていくだけになってしまいます。ここ以外の保護団体も攻めるのは容易じゃないーーと敵対者に思わせることのほうが重要です」
「あい、わかった。なればわしは、関東地方をぐるりとまわることにしよう」
「ええ、お願いします」

 ああ、澄は行ってしまうのか……。
 昨日は戦闘訓練したし、きょうはなにを訓練するか……顔を拭きながら思考する。

 ーーそうだ。

 同性にも思わずかわいいと見惚れてしまうほどの美少女になれば、瑠璃たちも恋愛として意識してくれるかもしれない。

 と唐突に思い付いた。だって休日だし、やることないし。

 戦闘技術を磨けないなら女を磨くのもありかもしれない。
 が、化粧品としての知識は私にはない……そもそも未だにすっぴんってどうなんだ?

「おお、おはよう、豊花」
「え、あ、澄、おはよう……」

 ジーっ、と顔を見つめてみる。
 澄も化粧使っていないのかな?

「なんじゃ、気持ち悪い」
「き、キモい!? え、私の顔キモかったの!?」
「いや、見つめてくるのがキモいと言ったんじゃ。顔は美人じゃろうが」
「はー……よかった」

 行動を改めていけば美少女より上を目指せるんじゃないか?
 寝起きになにを考えているのやら、自分でもわからなくなっている。
 でも、今しがた夢の中でナンバー1アイドルになる夢を見たんだ。あの夢で、私は男女共に人気があった。なら、現実でも男女共に人気が勝ち取れるのではないか!?

 と、そこに美夜さんが歩いてきた。
 あれ……。

「おはようございます、美夜さん。美夜さんはここにはいないはずじゃ……」
「少し寄れと頼まれたんだ。未来の奴にな。言っておくが、おまえの侵食率はとっくにステージF末期だ。見る必要性はない。邪魔だ、瑠衣たちを見に行かないといけないんだからな、ボクは」

 美夜さんは怒り混じりに私を押し退けて道を歩いていく。
 それを追いかけ、美夜さんの横顔をジーっと眺める。
 これは……化粧を使っているのかな?
 そもそも化粧をつかった顔というのが私には判断できない。

「な、なんだ?」
「化粧とかって、使ってます?」
「バカにするのもいい加減にしろ! ボクは24だ! 化粧くらい普通にする! きみはボクを怒らせたいのか!?」

 す、すみません……。と脳裏で謝りつつそそくさと美夜さんから離れた。
 自室に入る。

「……なにを……してるんですか……?」
「杉井はなにがしたいのさ?」
「豊花、化粧、する?」

 同室のメンバー……ありすと鏡子と瑠衣に声をかけられた。
 心配そうにしている鏡子は、化粧はしたことなさそうだ。そりゃそうだろう。化粧するには他人の目を借りなければいけないんだ。つまり、誰かに毎回やってもらうなど大変だろう。それにまだまだ中三だ。化粧には早い。

 ありすは……ありすはどうなんだろう?

 瑠衣は瑠璃からいろいろ買ってもらってはいるものの、洗顔しかしていないというバカにした回答をして瑠璃から締められていた。

「あ、ありすって化粧とかする?」
「しないかな~。まだ小じわとか気にならないし、仕事には関係ないからね。ナチュラルにはするときあるけど、稀だね稀」
「豊花、化粧、する?」

 うわ~、瑠衣がいろいろ鞄から出してきた~。

ーー豊花は化粧よりこっちのほうが知りたいのではないか?ーー

 こっち?

ーーいや、なに。まずはやさしく撫でるんだ。回りからやさしく撫でていき慣れてきたら中心を弱く触り……。ーー

 あーはいはいはいはいそれはいいから!
 今はそれは置いといて!

ーー胸もな、小さいから刺激に弱いのだろう。何事も刺激を加える前はやさしく回りから徐々に中心に行く、やさしくちょろっと撫でてみて……。ーー

「私が、美少女を、美人に、するため、化粧を、する!」

 下品なほうは放置して、化粧についていい加減に瑠衣から学ぼう。
 こういうときでしか学べないはずだ。

「化粧水、乳液、下地、ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、リップ……」

 おいおいおーい。なんかいろいろテーブルに並べ始めたんだが、これ何時間かかるの?

「まずは、スキンケア、から。洗面所、行こ?」
「はい……」

 洗面所で洗顔して自室に戻る。
 瑠衣は私の顔に化粧水と乳液を塗り始めた。
 ぬ、塗りすぎじゃない……鑑がないからわからない。

「ファンデーション~フェイスパウダー……だっけ?」
「いいんじゃない?」

 いいんじゃない!?
 なんていい加減なんだこの二人組!
 私の初化粧がどうなるか二人にかかっているんだぞ!?

「ふふんふんふん、アイシャドウ~……うっ……アイシャドウ~」

 うっ……って今言わなかった?
 ねぇねぇ、うって言わなかった?

「アイライナー……塗り塗り……アイライナー引く~引く」

 え……塗りすぎじゃ……てか塗るって?
 引くものじゃ……。

「引く引く……アイブロウ~シェーディング~濃く~」
「ぶはっ!」

 ありすが噴き出しているんだけど、本当にこのひとに頼んで大丈夫だったのだろうか?

「あ、あの……大丈夫?」
「大丈夫~ハイライト入れて~チークチーク~マスカラ~」

 ぐりぐりと化粧品が下地の上に重ねられていく。
 なんか、絵の具のキャンパスになった気分だ。
 化粧品の違いがわからない私には、なんの抵抗もできない。

「リップ~口紅~」

 ぐいぐい塗り塗り……あ、ダメだこりゃ。唇からはみ出しておられる。

「ふぅ……傑作!」
「ぴ……ピカソの絵並みに美しいよ……ぷぷっ」
「…………」

 鏡のある洗面所までダッシュで向かった。
 途中、沙鳥と舞香とすれ違うと、瞼を大きく見開き、唖然としていた。

 鏡の前に立つ。

 そこに映っていたのは……ギャルなどを超越した存在。
 そう、モンスターと思わしき顔面が映りこんでいた。
 首と肌の色が妙に違う。殴られた跡みたいにも見える目のまわり。唇からはみ出た口紅は口裂け女の様相を呈している。めちゃくちゃ太いアイライン。まるで宝塚のよう……。
 美少女が跡形もなくなっていた。

 化粧って……これじゃ塗装だ!
 瑠衣は塗装をしてくださったんだ。
 ありがとう! ってなるか!

 私の顔に塗装されてしまった…!



 二度と瑠衣には頼まないと意志を固め、私はなかなか落ちない化粧を流水でひたすら落としていくのであった
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

リアルフェイスマスク

廣瀬純七
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...