前代未聞の異能力者-自ら望んだ女体化だけど、もう無理!-

砂風

文字の大きさ
192 / 233
第七章╱杉井豊花(急)

Episode184╱精霊操術師⑤

しおりを挟む
(274.)
 ついに異世界への滞在が四日になった。
 ルーナエアウラさんが起こしてくれなかったら、まだだらだら過ごしていただろう。
 とっくのとうにルーナエアウラーー本名はルーナ=エ・アウラ・アリシュエール∴シルフは目を覚ましていた。
 裕希姉もちょうど目覚めたらしく、うとうとしたまま布団で横たわっている。

「今日は精霊操術の基本的なマナと精霊操術について説明するね」
 
 生憎外はザーザー降りの大雨が聴こえてきて、窓ガラスから見なくても容易に大雨なのが想像できてしまう。
 さすがに雨の日は実践しないのだろう。

「マナがどういう流れになるのか、再確認として説明しておくわ」

 それだけ口にすると、おそらく異世界から運び込まれたであろう、やや大きめのホワイトボードを室内の端から持ってきた。
 そこに説明を書き始めた。

「精霊操術に必要な事項はマナと精霊と魔力が必須なの。最後のひとつだけはこっちの世界ではあまりイメージしないことだけど、マナの存在しない地域にも行けるように、精霊操術師は常に体内にマナを溜め込んでいるんだよね」

 魔力?
 魔力なんて初耳なんたけど……。

「まずは原理としてはーー」

 まずマナを周囲から集める。
 次に契約した精霊のちからを借りて攻撃したり防御したりするのだとか。
 そしえ異世界に行くならマナだけは必ず貯蔵しておくことーーと注釈を入れてくれた。
 そして扱いたい能力を精霊に借りて、精霊操術を発動する。
 ただし、いくら高尚な精霊を従えていても、マナがなければ精霊を操ることは不可能であり、生まれ持つ魔力の多さによって、同じ精霊操術を放っても、他者の慣れた精霊操術師と比較してしまうと、よくて相手を焼けどさせるくらいしか威力が出せない場合もあるらしい。精霊も同様で、精霊の強弱によって精霊操術の威力に大きな差が現れ、大精霊との契約をしなければ大々的なちからをつかっても、ほとんど不発に終わってしまう。

「まあ、豊花はこっちの世界で生きていくわけじゃないんでしょ? だったら魔力を強めるのよりも、まずはマナを溜められるようにしなきゃダメね」
「ダメですか……」
「落ち込まない。あなたは成長が早いんだから、マナもなるべく多めに溜めておいて損はないわよ?」
「マナを集める……か」

 これに関してはスピードを上げるのには役立つけど、魔力がなければ火の玉くらいしか私は出せない。
 同じ火属性の精霊操術師であるメアリーさんと比較すると、とても矮小な存在に思えてしまう。
 まあ、序列持ちの魔女と精霊操術数日の自分を比べる時点で失礼かもしれない。

「マナは心臓部に貯めておくの。ちょっとやってみて」
「はい」

 ルーナエアウラさんに言われたとおり、まずはマナを集めてみて、心臓部に貯まるイメージをしてみる。
 少しずつ貯まるイメージが湧いてくるが、いきなりたくさんを集めたりはできない。

「そういえば瑠奈もマナを貯めてから行ってるんですか?」
「そうよ。ただ事情があってこっちの世界には来づらいから、この部屋で溜めてから出掛けるだけね」

 そのとき、部屋に朱音が現れた。
 端から見たらいきなり出現したように瞳に映る。

「裕希さん、ちょっといいかな?」
「え、なに?」
「ご両親の件について、警察と異能力者保護団体が尋ねたいことがあるらしくてさ。ちょっとこっちに帰ってきてくれないかい?」
「あ……うん」

 両親……まだ実感が薄いけど、亡くなったんだよな……。
 思い出すと鬱々としてきてしまう。
 自分のせいでもある原因で、さっと殺されてしまうだなんて。

 学校にも行っていない。その辺りの説明はきちんとしてもらえているのだろうか?
 考え事をしながらマナをひたすら集める。しかし、ある程度集まると限界なのかそれ以上溜められなくなってしまった。

「それが限界ね。一通り精霊操術の基本も覚えてもらったし、一度帰ってもいいんじゃないかしら?」

 ルーナエアウラさんは朱音をチラリと見るとそう言ってきた。
 たしかに、そうしたほうがいいかもしれない。
 ここ何日かは無断で学校を休んでいるし、向こうの現状がわかっていない。

「もう覚えられたの? 早いね」
「でしょ? 才能あるわよ、その娘」

 実は裕希姉も試してみたらしいが、サッパリだったらしい。
 そう言われると、もしかしたら感覚の異能力によって自分は覚えやすい体質なのかもしれない。
 感覚的になぜかスーっと頭に入ってきたのだ。

「じゃあ魔法円のなかに入って。二人とも一度帰るよ。あと二代目風月荘の場所も決まったし、そこで暮らしてくれてもいいから」

 どうやら風月荘の新たな拠点も決まったらしい。
 そこで大家として瑠奈が暮らしているらしく、部屋の掃除も行き届いているのだとか。
 やはり拠点として活用していくことになるだろう。

「私は職場近くに物件を借りようかな?」
「そうしてくれたほうが安全だと思う」
「あ、重要なこと言い忘れてたけど、件の犯人はとっくに捕まったよ」
「え……?」

 件の犯人?
 両親を殺害した犯人を捕まえた!?

「そいつはどうなったの!?」
「落ち着いてくれ。警察も関わっているから殺害はできないけど、教育部併設異能力者研究所送りになった。二名の単独犯だったよ。本人たちは悪を成敗した気になってるらしいけど、今頃後悔しているんじゃないかな?」
「教育部併設異能力者研究所送りに……そう」

 あそこは死よりも辛い未来が待っている。
 なら妥当だ。
 本当なら私自身が拷問して殺してやりたいくらいだ。

「とりあえず、向こうに行ってから君たちの方針について考えよう。もう学校も辞めてうちに正確に就いたらどうかなって話は出ている」

 学校を辞めて……か。
 瑠璃や瑠衣、宮下たちのことを思い出すが、べつに学校に行かなくても会いたいときに会える仲だ。
 本格的にやめる頃合いなのかもしれない。

 そんなことを考えながら、私も魔法円の内側に入った。
 そうして、現実へと転移する。
 これまでとは打って変わった現実が待っている。そんな想像を抱きながらーー。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...