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とある双子の冒険者
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「義父さんがギルドをやめたってどういうことだ!」
俺はアルバ。冒険者ギルドのマイルズという受付係の養子だ。
幼いころ、村が盗賊に襲われ、妹と2人で必死に逃げている時、運良く冒険者パーティに拾われた。
その後、孤児となった俺たちを、当時冒険者パーティの担当をしていた養父さんが俺たちを養子に迎え入れてくれた。
あの時の養父さんの優しい目、そして温もりは忘れない。
「今朝クエストの完了報告に行ったときに聞いたんだけど、ギルド長が変わったらしいのね。その人の方針に意見したらクビになったんだって。しかも、クビだけじゃなくて、帝都からの追放のおまけ付きよ?信じられる?」
こいつは俺の妹のエリン。兄バカと言われるかもしれないが、頭が非常に切れるて優秀なやつだ。
俺は恵まれた体格を生かした剣術や体術が得意だが、エリンは魔術や、集団戦術など頭を使う事に秀でている。
ちなみに俺たちは双子だ。
帝都の学園に通いながら、あの時助けてくれた冒険者パーティー「炎龍の牙」のようになりたいと、冒険者をしながら力を磨いている。
俺たちはすでに成人しており、ともに拠点を中心として活動を行っている。
これでも新進気鋭の冒険者兄妹として、帝都から旅立った「炎竜の牙」の後継を担うかもしれない…と評価を受けている。
最近は帝都近くでは難易度の高い依頼は少なくなっており、俺とエリンは距離の離れた場所での長期の依頼を受けていた。
帰ってきたときには、養父さんが帝都から追放されていた…という訳だ。
「信じられるわけないだろ。養父さんは受付係として長い間ギルドを助けてきたんだ!これまでの実績を加味すると、あのギルドを支えているといってもいいだろ?なぜなんだ?」
「なぜそうなったのか、私にも不明な点が多すぎて…。経緯を調べてみたんだけど…前ギルド長が急に失踪してしまったらしいの。直後、宮廷から派遣されてきた人物が即日、ギルド長に正式に就任したそうよ。その時、宰相の推薦状と、要望書があったっていう話。」
エリンは額を押さえながら、ため息をついている。
「宰相…?ちっ…、あのうさん臭いやつか…」
貴重な素材を入手し、皇帝陛下に献上した際、傍らに控えていた宰相の姿を思い出す。なんといえばいいか…いやな眼をしていたことが印象的だった。
現在の宰相は3年前に突然帝都に現れた貴族。皇帝に気に入られ、あれよあれよという間に上り詰めた。
優秀なのは間違いないようだが、前宰相も確か、突然の行方不明となっていたのではなかったか?
「匂うな…。」
「でしょ?急いで情報を集めてるんだけど…。すでに義父さんも帝都を出ているから、話を聞くこともできないの。」
これは義父さんからの手紙よ、とエリンは俺に手紙を渡す。
手紙には、突然帝都を離れることになり、碌な挨拶もすることができないことに対する詫びの言葉がかかれていた。
「これだけか?なんていうか…養父さんなら、何らかのメッセージがあるのかと思ったんだが…。せめでどこに行くかだけでも伝えてほしいんだけどな。」
あまりに簡単な内容で少し驚いてしまった。
「何かあったときの為に養父さんと取り決めている暗号はあるけど…これにはそういったものもないもんね。ひょっとしたら…私たちにはこの件に関わってほしくないのかもしれない。」
何を考えているかわからない宰相については俺たちよりも養父さんのほうが何か情報を掴んでいるのかもしれない。
帝都を中心に活動をしている俺たちに影響が及ばないようにしたいのだろうか。
「水臭いぜ。俺たちももう守られるだけの子供じゃないってのに。」
俺は手紙に目を落としながらふと漏らしてしまった。数々の大物冒険者を担当してきた養父さんからみれば、俺達はまだまだひよっことみられているのかもしれない。
「エリンはどうしたい?一応、俺たちは帝国のギルド登録ではあるが…必要なら養父さんを探すこともできる。」
エリンは腕を組み、右のほほに人差し指をトントン…と当てている。
これはエリンが様々な情報を整理しているときの癖だ。
「そうね…。養父さんには養父さんの考えがあるかもしれない。今は私たちにも大きな影響があるわけじゃないから、このまま内情を探ろうかなって思ってる。」
「そうか…。養父さんを探しに行っても俺たちにできることは少ない…かもな。むしろ、養父さんがやろうとしていることを邪魔してしまうかもしれない。」
「私たちは私たちでできることをやりましょ。」
俺たちは顔を見合わせうなづく。
怒りに任せて帝都を出て養父さんを追いかけるのではなく、離れていても、養父さんの力になれるというところを見せたい。
これまで、血の繋がらない俺たちに沢山の愛情を注いでくれた恩を少しでも返していくために。
「しっかし、養父さんの為に買ってきたこの酒、一緒に飲みたかったぜ」
養父のマイルズはお酒に目がない。そんな背中を見て育った俺達も例外なく酒が好きだ。
「私もおいしいお菓子買ったのに!」とエリンもほほを膨らませている。
「養父さんも死んでしまったわけじゃない。あの人ならきっとどこでも無事に過ごしてるはず。こっちの問題をさっさと解決してさ。迎えに行くか。」
そうね、とエリンも同意する。
行き場のなかった俺たちの居場所を作ってくれた父さんのために全力を尽くすことを誓いあった。
…だが、まだ俺たちは気づいてなかった。
この出来事が大陸全土を巻き込む大きなうねりの端緒となっていたことに。
俺はアルバ。冒険者ギルドのマイルズという受付係の養子だ。
幼いころ、村が盗賊に襲われ、妹と2人で必死に逃げている時、運良く冒険者パーティに拾われた。
その後、孤児となった俺たちを、当時冒険者パーティの担当をしていた養父さんが俺たちを養子に迎え入れてくれた。
あの時の養父さんの優しい目、そして温もりは忘れない。
「今朝クエストの完了報告に行ったときに聞いたんだけど、ギルド長が変わったらしいのね。その人の方針に意見したらクビになったんだって。しかも、クビだけじゃなくて、帝都からの追放のおまけ付きよ?信じられる?」
こいつは俺の妹のエリン。兄バカと言われるかもしれないが、頭が非常に切れるて優秀なやつだ。
俺は恵まれた体格を生かした剣術や体術が得意だが、エリンは魔術や、集団戦術など頭を使う事に秀でている。
ちなみに俺たちは双子だ。
帝都の学園に通いながら、あの時助けてくれた冒険者パーティー「炎龍の牙」のようになりたいと、冒険者をしながら力を磨いている。
俺たちはすでに成人しており、ともに拠点を中心として活動を行っている。
これでも新進気鋭の冒険者兄妹として、帝都から旅立った「炎竜の牙」の後継を担うかもしれない…と評価を受けている。
最近は帝都近くでは難易度の高い依頼は少なくなっており、俺とエリンは距離の離れた場所での長期の依頼を受けていた。
帰ってきたときには、養父さんが帝都から追放されていた…という訳だ。
「信じられるわけないだろ。養父さんは受付係として長い間ギルドを助けてきたんだ!これまでの実績を加味すると、あのギルドを支えているといってもいいだろ?なぜなんだ?」
「なぜそうなったのか、私にも不明な点が多すぎて…。経緯を調べてみたんだけど…前ギルド長が急に失踪してしまったらしいの。直後、宮廷から派遣されてきた人物が即日、ギルド長に正式に就任したそうよ。その時、宰相の推薦状と、要望書があったっていう話。」
エリンは額を押さえながら、ため息をついている。
「宰相…?ちっ…、あのうさん臭いやつか…」
貴重な素材を入手し、皇帝陛下に献上した際、傍らに控えていた宰相の姿を思い出す。なんといえばいいか…いやな眼をしていたことが印象的だった。
現在の宰相は3年前に突然帝都に現れた貴族。皇帝に気に入られ、あれよあれよという間に上り詰めた。
優秀なのは間違いないようだが、前宰相も確か、突然の行方不明となっていたのではなかったか?
「匂うな…。」
「でしょ?急いで情報を集めてるんだけど…。すでに義父さんも帝都を出ているから、話を聞くこともできないの。」
これは義父さんからの手紙よ、とエリンは俺に手紙を渡す。
手紙には、突然帝都を離れることになり、碌な挨拶もすることができないことに対する詫びの言葉がかかれていた。
「これだけか?なんていうか…養父さんなら、何らかのメッセージがあるのかと思ったんだが…。せめでどこに行くかだけでも伝えてほしいんだけどな。」
あまりに簡単な内容で少し驚いてしまった。
「何かあったときの為に養父さんと取り決めている暗号はあるけど…これにはそういったものもないもんね。ひょっとしたら…私たちにはこの件に関わってほしくないのかもしれない。」
何を考えているかわからない宰相については俺たちよりも養父さんのほうが何か情報を掴んでいるのかもしれない。
帝都を中心に活動をしている俺たちに影響が及ばないようにしたいのだろうか。
「水臭いぜ。俺たちももう守られるだけの子供じゃないってのに。」
俺は手紙に目を落としながらふと漏らしてしまった。数々の大物冒険者を担当してきた養父さんからみれば、俺達はまだまだひよっことみられているのかもしれない。
「エリンはどうしたい?一応、俺たちは帝国のギルド登録ではあるが…必要なら養父さんを探すこともできる。」
エリンは腕を組み、右のほほに人差し指をトントン…と当てている。
これはエリンが様々な情報を整理しているときの癖だ。
「そうね…。養父さんには養父さんの考えがあるかもしれない。今は私たちにも大きな影響があるわけじゃないから、このまま内情を探ろうかなって思ってる。」
「そうか…。養父さんを探しに行っても俺たちにできることは少ない…かもな。むしろ、養父さんがやろうとしていることを邪魔してしまうかもしれない。」
「私たちは私たちでできることをやりましょ。」
俺たちは顔を見合わせうなづく。
怒りに任せて帝都を出て養父さんを追いかけるのではなく、離れていても、養父さんの力になれるというところを見せたい。
これまで、血の繋がらない俺たちに沢山の愛情を注いでくれた恩を少しでも返していくために。
「しっかし、養父さんの為に買ってきたこの酒、一緒に飲みたかったぜ」
養父のマイルズはお酒に目がない。そんな背中を見て育った俺達も例外なく酒が好きだ。
「私もおいしいお菓子買ったのに!」とエリンもほほを膨らませている。
「養父さんも死んでしまったわけじゃない。あの人ならきっとどこでも無事に過ごしてるはず。こっちの問題をさっさと解決してさ。迎えに行くか。」
そうね、とエリンも同意する。
行き場のなかった俺たちの居場所を作ってくれた父さんのために全力を尽くすことを誓いあった。
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