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しおりを挟む「あぁっ、だめ、です、やぁ……!」
今夜も、夫婦の寝室から漏れ聞こえてくる声はひどく甘かった。
吐息を漏らしながらシアは身をよじるが、エルナドの指は解放してくれない。
そのまま敏感な胸の頂を撫でられて、視界が滲んでいく。
結婚から、二週間が過ぎた。
シアの全身はこの「準備」の日々で、随分と悦び、喘ぐようになっている。今日もすでに身にまとうものは何もない。それなのに彼は「準備」だからといって、まだガウンを羽織った寝衣姿のままだ。
自分だけがこんな格好でという羞恥はもちろんあり、なんだか女性側だけ脱いでるなんて不公平な気がするわと思うものの、エルナドの大きな手のひらから与えられる刺激は、シアを簡単に快楽の波へいざなっていった。
彼の名誉のために断っておくと、無理強いは一切されていない。
ただ日にちを時間をかけて自分の身体がやわやわと溶かされていくような心地がする。
昨日は左腕、その前は右腕、その前は左脚――日にちをかけてその部位に丹念に触れられて手のひらとその体温に慣らされていく状況は、なんとなく、食べるために解体されていく動物に似ていた。
「やっ、ほんとに、あ、あぁっ……」
寝台に縫い留められ、身体を探られる。
指先がうなじを撫で、そのまま首筋の血管の上を的確にたどっていく。
なぜかはわからないが、エルナドに触れられるとそれだけで声が勝手に出て身体が跳ねてしまう。この二週間でじっくりとシアの弱いところを暴いた指先が、くすぐるように、時には引っかくようにして触れてくるのだ。
首をたどっていたはずの長い指先はすでに胸の先に至り、そのまま引っかくように先端だけを摘ままれ、シアはかすかに身をよじった。
キュンと少し強く力をこめて抓られ、目を閉じる。今日はどこに触れられるのだろうか――
「……? えるなど、さま?」
ひょい、と抱き上げられるような格好で、なぜかエルナドの膝上に抱き上げられたシアはきょとんと振り向く。
いつも寝台に横たわり上から触れられるばかりだった。
こんな格好は初めてだ。
「今日は背中を」
「! っ」
端的にそう部位を告げられて、まだ触れられていないのに快楽の予感がシアの背中をたどってゾクゾクとした快感を生み出す。
ひたりと当てられる細い指先。つつ、と滑っていくそれに変な声を上げてしまい、背筋がはねた。
反射的に背をのけぞらせるが、その瞬間今度は手のひら全体で背をさすられ、思わず手元にあった彼のガウンをぎゅうと掴んでしまう。
「ん、ぁ……っ、あぁあっ」
ただ、背中をなぞられているだけ。
本当にそれだけなのに、この二週間ですっかり「触れられる」ことに慣れたシアの身体は、うちがわにさざ波のような快楽を生み出した。
押し寄せてくる。一瞬脳内がくらりとしてシアの意識は揺らいだ。
――また、だわ。
「あぁっ、んっ、くぅん、ん……っ」
最近、触れられると脳がおかしくなる。
具体的には白くうっすらと靄がかかったようになってしまうのだ。そして、鳴き声のような声が喉から勝手に上がり、部屋に響いていく。
最初は、こんな声を上げて始めてしまう自分が恥ずかしかった。でも「何か口をふさぐものが欲しいです、ええと、布か何かで縛っていただけないですか……?」と持ち掛けたときに、エルナドに何とも言えない顔をされ、ただひとこと「声は出していい」とだけ言われたので、その言葉に甘えている。
「はぁ、あっあ、……背中、せ、なか、だめ……っ」
もうエルナド様に触れられてない場所なんかないんじゃないかしら、とシアはぼんやりしていく意識の中でおもう。股や臀部はまだだけれど、脚に触れられたときに太腿の付け根辺りまで指先で触れられたし、頬や首筋、胸は触れられる前から身体がヒクヒクとする程度にはその手をもう待ちわびている気がする。
背後で背をなぞっていた手が前へ回り、胸をしっかりと掴んで揉みしだかれる。やめて、だめ、よして、とシア自身喘ぐけれど、この二週間ですっかり本心を悟られている拒否の言葉は当たり前に無視された。
「んあっ、く、ぅん……っ」
シアはうっすらと涙の張った目で、眼下で形をぐにぐにと変える自分の胸を見ていた。
白かった自分の肌が興奮からか淡い桃色に染まっているのが、なんとなく恥ずかしい。
さっきからの愛撫で赤みを帯びて充血した突起は何かを期待するように震えている。うぅん、と一言呻けば、わかっている、とでもいうように、胸全体に触れていた手の親指が、両方の胸の淡い頂を指腹で転がすように撫で、シアは甲高い声を上げて啼いて身体を震わせた。
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