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倒れ込むシアを、エルナドが支える。
「大丈夫か」
「は、はい……」
走り続けているため大事はなさそうだが、傾いだ馬車の勢いそのままに、シアの体はエルナドの胸に飛び込んでしまった。
膝上に乗り上げる形になり、思わず不安定さからぎゅっと抱き着く。
一緒に眠気もすっとんでしまった。神様のいたずらかしら、と信仰心がないながらに思ってしまう。
こんな馬車の中で抱き着くなど、はしたないけれどこれは不可抗力だもの。少しだけためらうけれど、優しい温度に負けて、シアはそのままエルナドの胸に体重を預けた。
「……こう、していても、いいですか?」
「あぁ……」
「重く、ないです?」
「重くない」
そっと耳元でささやかれるだけで、頬が赤くなり、胸がふつふつと沸き立つように熱くなる。
改めて思う。エルナド様はわたしを選んでくれた。そしてわたしも、彼を選んだんだ、と。
そう思うと、心臓がますます大きく脈を立てる。そして、絶対にこの場所を手渡したくないと思ってしまった。
「もう、大丈夫ですよね。ずっと一緒ですよね?」
彼の腕の中にいると、あたたかくて、嬉しくて、今さらになって怖くなるのだ。
「こうなることがわかっていた」などと、あの虹の目の王は言っていたけれど、あのままシアたちが王命を受け入れて離縁するという道も、あの虹色は見ていたような気がする。
「シア」
「もし、あのまま離縁させられていたらって、少し考えてしまって。エルナド様以外に、あんなことされたくありません……あなた以外に、触れられたくない」
ぎゅ、と胸に縋りつく。シアの言葉に切実な響きを感じたのだろう、エルナドはそっとその髪を撫でた。そのまま髪に指を差し入れられ、あやすように梳かれる。
「大丈夫だ。――誰にも、渡さない」
そっと顎を取られて顔を上げると、再び唇が重なった。
今度はもう少しだけ深く。吐息が混じりあうそれに、シアは縋りつくようにして応えた。
膝上で抱かれ、唇を重ねて、身体の熱が互いに伝わる。
「……愛している」
唇から離れた口が、耳元でささやく。
ふと唇がシアの耳朶に触れ、熱くなった。
「館に着いたら、きみを抱きたい」
「!」
甘く、切実な声だった。
以前だったら、その言葉と行為はもっと違う意味を持っていただろう。
王命に従い、子を成すため。
でも、違う。
今のこの誘いは、ただの愛する妻への欲だ。
「……」
エルナドの言葉に、シアは顔を真っ赤に伏せたまま、その胸元で頷いた。
抱き合ったまま、馬車は進む。
そのままシアは、エルナドの腕の中でじっと動けずにいた。
「大丈夫か」
「は、はい……」
走り続けているため大事はなさそうだが、傾いだ馬車の勢いそのままに、シアの体はエルナドの胸に飛び込んでしまった。
膝上に乗り上げる形になり、思わず不安定さからぎゅっと抱き着く。
一緒に眠気もすっとんでしまった。神様のいたずらかしら、と信仰心がないながらに思ってしまう。
こんな馬車の中で抱き着くなど、はしたないけれどこれは不可抗力だもの。少しだけためらうけれど、優しい温度に負けて、シアはそのままエルナドの胸に体重を預けた。
「……こう、していても、いいですか?」
「あぁ……」
「重く、ないです?」
「重くない」
そっと耳元でささやかれるだけで、頬が赤くなり、胸がふつふつと沸き立つように熱くなる。
改めて思う。エルナド様はわたしを選んでくれた。そしてわたしも、彼を選んだんだ、と。
そう思うと、心臓がますます大きく脈を立てる。そして、絶対にこの場所を手渡したくないと思ってしまった。
「もう、大丈夫ですよね。ずっと一緒ですよね?」
彼の腕の中にいると、あたたかくて、嬉しくて、今さらになって怖くなるのだ。
「こうなることがわかっていた」などと、あの虹の目の王は言っていたけれど、あのままシアたちが王命を受け入れて離縁するという道も、あの虹色は見ていたような気がする。
「シア」
「もし、あのまま離縁させられていたらって、少し考えてしまって。エルナド様以外に、あんなことされたくありません……あなた以外に、触れられたくない」
ぎゅ、と胸に縋りつく。シアの言葉に切実な響きを感じたのだろう、エルナドはそっとその髪を撫でた。そのまま髪に指を差し入れられ、あやすように梳かれる。
「大丈夫だ。――誰にも、渡さない」
そっと顎を取られて顔を上げると、再び唇が重なった。
今度はもう少しだけ深く。吐息が混じりあうそれに、シアは縋りつくようにして応えた。
膝上で抱かれ、唇を重ねて、身体の熱が互いに伝わる。
「……愛している」
唇から離れた口が、耳元でささやく。
ふと唇がシアの耳朶に触れ、熱くなった。
「館に着いたら、きみを抱きたい」
「!」
甘く、切実な声だった。
以前だったら、その言葉と行為はもっと違う意味を持っていただろう。
王命に従い、子を成すため。
でも、違う。
今のこの誘いは、ただの愛する妻への欲だ。
「……」
エルナドの言葉に、シアは顔を真っ赤に伏せたまま、その胸元で頷いた。
抱き合ったまま、馬車は進む。
そのままシアは、エルナドの腕の中でじっと動けずにいた。
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