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足を踏み入れた寝室は薄暗く、寝台近くの魔術灯だけが薄い灯りをともしていた。
月光が窓辺の薄絹のカーテンを透かして床を照らす中、髪を後ろに流したエルナドが窓辺で外を見つめている。
いつものように黒衣の寝衣姿の彼は、シアを見つめるとかすかに目元を緩めた。
ゆらり、と一度、魔術灯が揺れる。
いつかの日のようだ、とシアはエルナドと初めてこの部屋で出会った日のことを思い出していた。
あの時、いきなり寝衣を脱ぎ落とし「孕ませてください」と言い放った自分のこと。
しでかしたことの恥ずかしさに、いまだに顔が赤くなる。
今夜は、いえ、今夜こそ、あんなことはしない。
昔のわたしとは違うのよ、とシアは小さく息を吐いた。
「シア」
「……エルナド様。あの、……ひゃぁっ!?」
寝衣をどうしようか、と腰紐に手を触れたシアは、歩み寄ってきたエルナドにつよく抱きしめられて声を上げる。
そしてそのまま横抱きに抱き上げられると寝台へと運ばれてしまった。
「え、エルナド様? ま、って……っ、ん……っ!」
優しいながら性急な手つきで寝台に寝かされ、そのまま上からのしかかるように唇を奪われる。
この寝台の上で唇を重ねるのは初めてだった。顔の横にエルナドの長い黒髪がさらりと流れ、かすかに頬に触れてくすぐったい。
けれど息をつく暇もなく続く口づけに、シアの小さな白い手が何かに縋るようにシーツを強く握りしめた。
彼の手が、唇が、自分を熱く求めている。その事実がたまらなく嬉しかった。
一度唇が離れて、見つめあう。
黒の眼差しが本当に愛おしげに細められ、シアははぁ、と一度熱い吐息を吐きだした。
すり、と手で頬を撫でられて、そのまま唇が再び重なる。
熱量のこもった愛撫に、シアは身体を震わせた。
うれしい。熱くて、気持ちがいい。身体が喜びで震えて止まらない。
――もっと、もっと、彼が欲しい。
まるでそんなシアの胸の内を読み取ったかのように、腰紐が強く引かれて、寝衣がはだけられる。
肩からするりとそれを落とし――たところで、エルナドの手が止まった。
「シア」
「はい」
「……その、格好は?」
シアに注がれるエルナドの瞳、その視線が熱く、じっとりとしている。
怒ってらっしゃるのかしら、いえ、違う――とシアはその視線に惑った。
熱くて、優しい、でも、なんだか少しだけ怖い。
背筋がぞくりとするようなその目つきと声音に、シアは少しだけおびえながら端的に答えた。
「ノ、ノルンが、用意して、くれました」
「そうか」
「あの、変かしら? ノルンがこれを着るのが当たり前だという顔をしていたので、てっきり……そのこれが、夫婦の夜の、常識なのかと」
「……」
「ええと……エルナド様?」
今夜のシアは、白レースの下着を身に付けていた。
真っ白なレースはシアの胸の頂と局部だけを覆い、却って何も身に着けていない時よりもその肢体をひどく扇情的に見せている。
飾りのリボンと紐が緩く腹と腕と脚に巻かれており、そのわずかな食い込みに柔らかな肢体と肌触りを見る者に夢想させていた。
胸が豊かではない分、レースがぴったりと胸の頂に張り付くようになっており、かすかに反応を見せていることがその形のゆがみからわかってしまう。
つまり、ひどくいやらしく、男の欲情を掻き立てる姿をしていた。
下着といえるのかも正直怪しい、確かに知っている下着とは布面積が随分と違うわ、とはシアも思っていたし、着付けられたときにも少し恥ずかしいな、すうすうする、とは思ったのだ。
だが、知識を付けたといってもシアはいまだにこういったことには疎かった。
ノルンは「これが当たり前です」というような顔つきをしていたし「ちょっと変じゃないかしら」と問いかけたシアに「大変お綺麗ですよ」とにっこり笑ってくれたので、大丈夫だと思ったのだ。
「ごめんなさい……」
「謝るな」
この会話、最初の夜のときみたいだわ、とシアの背中に嫌な汗が伝う。
最初に子の成し方も知らず、無知を晒し、彼を完全に困らせたあの夜と同じような。
ええと、と言葉を詰まらせ、シアはうつむいた。
今夜こそは呆れられたくないと思っていたのに、また彼を困惑させてしまっている。
「……変、ですよね」
「誓って、変ではない」
「でもエルナド様、なんだか妙なお顔をなさってるから」
「これは――その、なんだ」
そう言って、エルナドは片手を額について長いため息をついた。
どこか憮然とした表情で、つぶやくように吐き出す。
「……きみに、たまらなく興奮しているんだ」
その耳は、薄闇でもわかるほどに赤く染まっていた。
「え?」
「触れてもいいか」
「は、はい……、っ! ん、んぁっ!?」
興奮。わたしに。エルナド様が――? そう言葉を咀嚼しているうちに、熱い唇が降ってきて重なり、同時に長い指がすり、と胸の左右の頂を撫でた。
月光が窓辺の薄絹のカーテンを透かして床を照らす中、髪を後ろに流したエルナドが窓辺で外を見つめている。
いつものように黒衣の寝衣姿の彼は、シアを見つめるとかすかに目元を緩めた。
ゆらり、と一度、魔術灯が揺れる。
いつかの日のようだ、とシアはエルナドと初めてこの部屋で出会った日のことを思い出していた。
あの時、いきなり寝衣を脱ぎ落とし「孕ませてください」と言い放った自分のこと。
しでかしたことの恥ずかしさに、いまだに顔が赤くなる。
今夜は、いえ、今夜こそ、あんなことはしない。
昔のわたしとは違うのよ、とシアは小さく息を吐いた。
「シア」
「……エルナド様。あの、……ひゃぁっ!?」
寝衣をどうしようか、と腰紐に手を触れたシアは、歩み寄ってきたエルナドにつよく抱きしめられて声を上げる。
そしてそのまま横抱きに抱き上げられると寝台へと運ばれてしまった。
「え、エルナド様? ま、って……っ、ん……っ!」
優しいながら性急な手つきで寝台に寝かされ、そのまま上からのしかかるように唇を奪われる。
この寝台の上で唇を重ねるのは初めてだった。顔の横にエルナドの長い黒髪がさらりと流れ、かすかに頬に触れてくすぐったい。
けれど息をつく暇もなく続く口づけに、シアの小さな白い手が何かに縋るようにシーツを強く握りしめた。
彼の手が、唇が、自分を熱く求めている。その事実がたまらなく嬉しかった。
一度唇が離れて、見つめあう。
黒の眼差しが本当に愛おしげに細められ、シアははぁ、と一度熱い吐息を吐きだした。
すり、と手で頬を撫でられて、そのまま唇が再び重なる。
熱量のこもった愛撫に、シアは身体を震わせた。
うれしい。熱くて、気持ちがいい。身体が喜びで震えて止まらない。
――もっと、もっと、彼が欲しい。
まるでそんなシアの胸の内を読み取ったかのように、腰紐が強く引かれて、寝衣がはだけられる。
肩からするりとそれを落とし――たところで、エルナドの手が止まった。
「シア」
「はい」
「……その、格好は?」
シアに注がれるエルナドの瞳、その視線が熱く、じっとりとしている。
怒ってらっしゃるのかしら、いえ、違う――とシアはその視線に惑った。
熱くて、優しい、でも、なんだか少しだけ怖い。
背筋がぞくりとするようなその目つきと声音に、シアは少しだけおびえながら端的に答えた。
「ノ、ノルンが、用意して、くれました」
「そうか」
「あの、変かしら? ノルンがこれを着るのが当たり前だという顔をしていたので、てっきり……そのこれが、夫婦の夜の、常識なのかと」
「……」
「ええと……エルナド様?」
今夜のシアは、白レースの下着を身に付けていた。
真っ白なレースはシアの胸の頂と局部だけを覆い、却って何も身に着けていない時よりもその肢体をひどく扇情的に見せている。
飾りのリボンと紐が緩く腹と腕と脚に巻かれており、そのわずかな食い込みに柔らかな肢体と肌触りを見る者に夢想させていた。
胸が豊かではない分、レースがぴったりと胸の頂に張り付くようになっており、かすかに反応を見せていることがその形のゆがみからわかってしまう。
つまり、ひどくいやらしく、男の欲情を掻き立てる姿をしていた。
下着といえるのかも正直怪しい、確かに知っている下着とは布面積が随分と違うわ、とはシアも思っていたし、着付けられたときにも少し恥ずかしいな、すうすうする、とは思ったのだ。
だが、知識を付けたといってもシアはいまだにこういったことには疎かった。
ノルンは「これが当たり前です」というような顔つきをしていたし「ちょっと変じゃないかしら」と問いかけたシアに「大変お綺麗ですよ」とにっこり笑ってくれたので、大丈夫だと思ったのだ。
「ごめんなさい……」
「謝るな」
この会話、最初の夜のときみたいだわ、とシアの背中に嫌な汗が伝う。
最初に子の成し方も知らず、無知を晒し、彼を完全に困らせたあの夜と同じような。
ええと、と言葉を詰まらせ、シアはうつむいた。
今夜こそは呆れられたくないと思っていたのに、また彼を困惑させてしまっている。
「……変、ですよね」
「誓って、変ではない」
「でもエルナド様、なんだか妙なお顔をなさってるから」
「これは――その、なんだ」
そう言って、エルナドは片手を額について長いため息をついた。
どこか憮然とした表情で、つぶやくように吐き出す。
「……きみに、たまらなく興奮しているんだ」
その耳は、薄闇でもわかるほどに赤く染まっていた。
「え?」
「触れてもいいか」
「は、はい……、っ! ん、んぁっ!?」
興奮。わたしに。エルナド様が――? そう言葉を咀嚼しているうちに、熱い唇が降ってきて重なり、同時に長い指がすり、と胸の左右の頂を撫でた。
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