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・目覚めた少年
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「ううっ...ん?ここは...何処?」
白を基調とした小綺麗な部屋で少年、叶人は目覚めた。彼はとても混乱していたが冷静に、そして慎重に、警戒しながら辺りを見渡した。
自分が横になっていた真っ白なベッド、薄茶色の木の脚がついた白い机と椅子、そしてその机の上で違和感を放つスマートフォンの様な小さな端末...しかしそれら全てが彼には身に覚えの無い物ばかりだった。
「知ってるとこじゃないんだけど...もしかして誘拐?」
不安に駆られて動けなくなり、どうすればいいのかを考える。幸いなことに部屋はさほど広くなく正方形に近いため、死角はないし監視カメラもないようだ。一つしかないが扉もあるため、鍵がかかっていなければ逃げることも出来そうだ。
「逃げるか、探索か...とにかく今の状況を理解しないと...っ...。」
少年は混乱し痛む頭を押さえながら、躊躇しつつベッドから降りた。床は冷たく、いつの間に着替えていたのか素足であった少年は、不安も相まって些か今の環境が辛く感じた。
少年は齢15にしては背が低く、中性的な顔立ちで血色の悪い白肌のため弱々しい。今身につけている淡い水色の入院着、そのおかげかその少し病的な容姿は際立っていることだろう。今外に出て助けを求めれば、誰か助けてくれるだろうかと頭を回して考える。自分が知らぬ間に着替えていたことに対し、疑問を抱いたが今はそんなことを気にしてはいられない。
「まずはここから出られるのか確認しないと...。」
扉は部屋と同様に白を基調としており、これといった違和感はない。ドアノブが設置されており、少年はそっとそれに手をかけた。しかし施錠されているのか開きそうにない。部屋からの脱出の可能性を無くした少年は静かに座り込んだ。椅子のある場所まで歩く気力は無く、少年は冷たい床を呆然と見つめた。
多少冷静になったからか、それとも脱出を考える事を放棄したからか、少年の頭には嫌な想像が渦巻く。ここに居たままでいいのか、自分はこれからどうなるのか、何をされるのだろうか。悪い考えは収まらず、少年は冷や汗を流した。
しかし少年は諦めようとはしなかった。悪い予想をしまい込み、ふと後ろを向いた。そこには自分が先程までいたベッドと微々たる光の差し込む窓があった。何故今まで気づかなかったのだろうかと、新しい希望を見つけた少年は窓へ駆け寄った。窓はもとより開かない構造であったが、外は夜で自分は高い建物にいるのだと知った。下の方を見ると木や、花壇のある公園の様な場所が見受けられた。空を見ると左手にオリオン座が見えた。
「さすがに窓を割って逃げることはできないか...オリオン座があるなら今は冬ってこと?おかしいな...」
少し希望が見えたが自分の手が届かない。どうにかしないといけないと少年は、小さな疑問を無視して辺りを見渡した。
「これはスマートフォン....なのかな。よく見る携帯会社の商品とそっくりだけど...」
少年はスマートフォンの様な携帯端末を手に取り電源を入れることにした。電源ボタンを見つけ、押してみる。小さく起動音の鳴ったそれはスマートフォンと酷似しているがやはり見たことがない物だった。
少し待つと画面には、本人確認をするために質問へ回答してくださいと文字が映し出された。少年は、警戒こそしたが脱出経路の絶たれた今、この可能性にかけるしかないと腹をくくった。
「貴方の名前は何ですか。生年月日はいつですか。好きな食べ物は何ですか。大切な人は誰ですか。」
単純な質問が続き、少年は全ての質問に答えた。
「僕は叶人です。青木叶人。生年月日は2025年の4月1日で、甘いものが好きです。大切な人は...」
文字を打つのではなく音声入力をするものだった事に驚きつつ、少年は全ての質問に答えた。すると端末の画面が切り替わり、アプリケーションがいくつか表示された。
「基本情報にメモ、カメラに記録日記?...何これ?スマホじゃないの?電話もメールも使えないけど...」
少年は、端末が自分の知っている携帯電話とは違っていることに驚きつつ基本情報と書かれたアプリケーションを開いた。そこには自分の情報が載っていたが、少年は情報に誤りがある事に気づいた。
「年齢が25歳になってる...なんでだろ?情報管理部所属?よく分かんないけど間違ってるし知らないな...まあ気にすることじゃないよね。」
少年は疑問を抱きつつも端末の電源を落とし、これからどうするかもう一度考えだした。
「これからどうしようかな...」
ここまで来た経緯も方法も全く思い出せない少年は、次に自分の身体を調べだした。はっきり言ってしまえばすることが無いのだ。しかし少年には、何もしないことが不安だった。だから少年は自然と調べだしていた。袖をまくったり、端末のカメラ機能を使い首や背中もしっかりと調べた。しかし自身の体には全くといっていいほどなんの傷も無かった。少年は表情を曇らせる。
「誘拐されたんじゃないの?でも怪我もないし、殴られたならもっと頭は痛いはずだよね...」
更なる疑問が浮上し、少年の思考は混乱を極めた。自分の置かれている状況も、ここに来た経緯も分からない。そして逃げ出すことさえままならない。調べるという行為自体出来なくなってしまった。
悩んだ末、抗った末がこの状況であり、たった15の少年には余りにも認めがたい現実だ。何を思ったか少年は、無表情で再度眠りについた。
白を基調とした小綺麗な部屋で少年、叶人は目覚めた。彼はとても混乱していたが冷静に、そして慎重に、警戒しながら辺りを見渡した。
自分が横になっていた真っ白なベッド、薄茶色の木の脚がついた白い机と椅子、そしてその机の上で違和感を放つスマートフォンの様な小さな端末...しかしそれら全てが彼には身に覚えの無い物ばかりだった。
「知ってるとこじゃないんだけど...もしかして誘拐?」
不安に駆られて動けなくなり、どうすればいいのかを考える。幸いなことに部屋はさほど広くなく正方形に近いため、死角はないし監視カメラもないようだ。一つしかないが扉もあるため、鍵がかかっていなければ逃げることも出来そうだ。
「逃げるか、探索か...とにかく今の状況を理解しないと...っ...。」
少年は混乱し痛む頭を押さえながら、躊躇しつつベッドから降りた。床は冷たく、いつの間に着替えていたのか素足であった少年は、不安も相まって些か今の環境が辛く感じた。
少年は齢15にしては背が低く、中性的な顔立ちで血色の悪い白肌のため弱々しい。今身につけている淡い水色の入院着、そのおかげかその少し病的な容姿は際立っていることだろう。今外に出て助けを求めれば、誰か助けてくれるだろうかと頭を回して考える。自分が知らぬ間に着替えていたことに対し、疑問を抱いたが今はそんなことを気にしてはいられない。
「まずはここから出られるのか確認しないと...。」
扉は部屋と同様に白を基調としており、これといった違和感はない。ドアノブが設置されており、少年はそっとそれに手をかけた。しかし施錠されているのか開きそうにない。部屋からの脱出の可能性を無くした少年は静かに座り込んだ。椅子のある場所まで歩く気力は無く、少年は冷たい床を呆然と見つめた。
多少冷静になったからか、それとも脱出を考える事を放棄したからか、少年の頭には嫌な想像が渦巻く。ここに居たままでいいのか、自分はこれからどうなるのか、何をされるのだろうか。悪い考えは収まらず、少年は冷や汗を流した。
しかし少年は諦めようとはしなかった。悪い予想をしまい込み、ふと後ろを向いた。そこには自分が先程までいたベッドと微々たる光の差し込む窓があった。何故今まで気づかなかったのだろうかと、新しい希望を見つけた少年は窓へ駆け寄った。窓はもとより開かない構造であったが、外は夜で自分は高い建物にいるのだと知った。下の方を見ると木や、花壇のある公園の様な場所が見受けられた。空を見ると左手にオリオン座が見えた。
「さすがに窓を割って逃げることはできないか...オリオン座があるなら今は冬ってこと?おかしいな...」
少し希望が見えたが自分の手が届かない。どうにかしないといけないと少年は、小さな疑問を無視して辺りを見渡した。
「これはスマートフォン....なのかな。よく見る携帯会社の商品とそっくりだけど...」
少年はスマートフォンの様な携帯端末を手に取り電源を入れることにした。電源ボタンを見つけ、押してみる。小さく起動音の鳴ったそれはスマートフォンと酷似しているがやはり見たことがない物だった。
少し待つと画面には、本人確認をするために質問へ回答してくださいと文字が映し出された。少年は、警戒こそしたが脱出経路の絶たれた今、この可能性にかけるしかないと腹をくくった。
「貴方の名前は何ですか。生年月日はいつですか。好きな食べ物は何ですか。大切な人は誰ですか。」
単純な質問が続き、少年は全ての質問に答えた。
「僕は叶人です。青木叶人。生年月日は2025年の4月1日で、甘いものが好きです。大切な人は...」
文字を打つのではなく音声入力をするものだった事に驚きつつ、少年は全ての質問に答えた。すると端末の画面が切り替わり、アプリケーションがいくつか表示された。
「基本情報にメモ、カメラに記録日記?...何これ?スマホじゃないの?電話もメールも使えないけど...」
少年は、端末が自分の知っている携帯電話とは違っていることに驚きつつ基本情報と書かれたアプリケーションを開いた。そこには自分の情報が載っていたが、少年は情報に誤りがある事に気づいた。
「年齢が25歳になってる...なんでだろ?情報管理部所属?よく分かんないけど間違ってるし知らないな...まあ気にすることじゃないよね。」
少年は疑問を抱きつつも端末の電源を落とし、これからどうするかもう一度考えだした。
「これからどうしようかな...」
ここまで来た経緯も方法も全く思い出せない少年は、次に自分の身体を調べだした。はっきり言ってしまえばすることが無いのだ。しかし少年には、何もしないことが不安だった。だから少年は自然と調べだしていた。袖をまくったり、端末のカメラ機能を使い首や背中もしっかりと調べた。しかし自身の体には全くといっていいほどなんの傷も無かった。少年は表情を曇らせる。
「誘拐されたんじゃないの?でも怪我もないし、殴られたならもっと頭は痛いはずだよね...」
更なる疑問が浮上し、少年の思考は混乱を極めた。自分の置かれている状況も、ここに来た経緯も分からない。そして逃げ出すことさえままならない。調べるという行為自体出来なくなってしまった。
悩んだ末、抗った末がこの状況であり、たった15の少年には余りにも認めがたい現実だ。何を思ったか少年は、無表情で再度眠りについた。
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