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#15 Free as a bird 〜The End(2)
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4月の阿寒湖は結氷が解けてくるとはいえ、周辺はまだ深い雪に埋れているはずだ。しかし今見える湖は悠々とした水を湛え、森は新緑の生命力にあふれている。どうやら季節は2ヶ月ほど先らしく、だとすると、澄香は時間の壁をも易々と突破したことになる。
雲間からは陽光が幾筋かの太い光束となって差し込み、湖水をキラキラと輝かせていた。
「これね、天使のはしごって言うんだよ。空から見ると一段と綺麗だね」
「へえ…ってか天使よりも澄香がすげえよ。好きな場所に行けて、空を飛べて、タイムトリップ。何この比類なきFree as a bird感…俺の能力がゴミカスに思えてきたよ」
「あはは、澄香じゃないよ。お姉ちゃんがすごいんだよ」
貴明が心配するまでもなく、澄香は貴明を従えながらもすいすいと空中遊泳している。能力は相当に強いようだ。首元には、ネックレスに仕立て直したあのシンセのチャーム。真っ白な肌に楽しそうに揺れている。
「ね!お兄ちゃんとお姉ちゃんが澄香を助けてくれたのは、このへんだよね」
2人は湖の中央部上空を飛ぶ。
「お前が死にかけた姿を思い出すと今でも悲しいよ。でもさ、氷がないと、ここは天国のように綺麗だな」
「ごめんね。でもみんなに命をもらったあの時、私は確かにここで新しく生まれたと感じたの。それにね、お姉ちゃんと一緒になってから、澄香はもっともっとお兄ちゃんのことを…」
切なそうな表情の澄香。だがすぐに一変、悪い顔でニカっとしながら、ついっと貴明の手を離した。
「阿呆なのかー!落ち…お前なっ!帰ったら折檻だハード折檻だ!」
澄香は慌てず、すいっと下方移動して貴明の体を支える。だが貴明が仰向けの状態で上から抱き抱えたものだから、顔がやたらと至近距離にあった。それに気づき赤くなる2人。
「す、澄香?顔、近…」
「お兄ちゃん…私…」
2人はどちらからともなく、自然に唇を合わせた。
温もりと柔らかさを確かめるように抱き合い、優雅に旋回しながら初夏の湖上空を遊泳する。2人とも夢見心地のまま。兄妹と思っていた相手と、こんな形で生を実感する日が来るなんて。その不思議さも相まって、2人は唇を重ねたままふわふわと気持ち良さそうに飛び続けた。
…が、澄香は心地よさに油断したのか、翼が消えて自然落下が始まった。貴明は慌てることなく、今度は自分でドアを作りその中に入る。部屋に戻った2人は、手を取り合う姿勢で赤面しながら向き合った。
「えへー、澄香はついにキスされてしまいました。さてどうでしょう」
「いや今のは澄香から…というか事故だ」
「むー!何か気に入らないことでも⁉︎」
「い、いえ…一切ございません」
「よろしい。だったら今度は改めてお兄ちゃんから、きちんとしてくださいね」
と言って澄香は後ろ手に組み、唇を少し差し出して目をつぶる。これはいかん。仕草も表情も全部可愛すぎる。貴明はハートに火がつきそうに昂る。
「わ、わかったよ!問題なし!どうにでもなれ。澄香、好きだ!」
真紅に染まる貴明は澄香の両肩をがしっと抱き、ぐぐっと近づく。吐息の熱を感じる距離。残り1cmで唇が重なる寸前…
ピポーン!ピポピポピポーン!グワシャピポーン!
ドアチャイムがけたたましく鳴り響いた。グワシャってなんだろうな。いいだけ鳴らしまくっておきながら、結局ドアを開けずにスッと入ってきたのは、やはり梨杏だった。
「いるんだろー!久しぶりに澄香のご飯が食べたくてさ。ごは…お?おおおお⁉︎」
2人はキス寸前の形で抱き合ったまま、真っ赤な顔で梨杏を見ている。
「ちが、違うぞ、それは違うに違いないと俺は思うのさ。まあ落ち着けよ梨杏」
「りり梨杏さん、誤解も曲解もよくないことと知るがいいですよ。ご飯ね、今日は何作ろうかな、じゃが肉、いや肉じゃが?あ、じゃがいも買ってないや、はははは」
まったく取り繕えていない言い訳も虚しく、一瞬の沈黙が支配する。その後、梨杏は久しぶりに充足した様子の下衆な悪い笑顔で、ただ無言で出て行こうとした。
「待てー!ここで無言はよせ!違うだろ、ここはいつもどおり大騒ぎすべきとこだろ!むしろ騒いでくれ!」
「も、もうやだ…澄香恥ずかし…これダメなやつだ…」
「いえいえ、私とてそれほど野暮天では…うひひ、ごゆっくり、うひ…」
2人は梨杏を追ってダッシュ。間延びした追いかけっこのような、締まらない絵面だ。
「梨杏さん待って!私の話を聞いて!」
「そうだ待て…っておい澄香?嫌な予感がするが、何を話す気だ?」
「お兄ちゃんが、嫌がる私にどうしてもキスしたいって無理やり迫るから、澄香はやむを得ず…」
「だーっ!甚だしい事実誤認!梨杏、そんな話は聞かなくていい!だがとにかく待てー!」
「あーっはっは!やっぱあんたらいいわー!これからも濃密エロシーンをよろしくね、エクストリーム変態偽兄妹!」
「濃密って何ー!」「濃密って何ー!」
相変わらずバタバタとやかましい3人。追いかけっこの最中、澄香はふと、すみかを深く想う。
(私楽しいよ、お姉ちゃん。でもさ、お姉ちゃんならこんな時どうするの?あははっ)
その刹那、澄香と貴明の胸にあの悪戯っぽく可愛らしい笑い声が聞こえた。気がした。
「くすくすくすっ、まだまだ物足りないなー。もっと頑張ってよね、澄香!」
雲間からは陽光が幾筋かの太い光束となって差し込み、湖水をキラキラと輝かせていた。
「これね、天使のはしごって言うんだよ。空から見ると一段と綺麗だね」
「へえ…ってか天使よりも澄香がすげえよ。好きな場所に行けて、空を飛べて、タイムトリップ。何この比類なきFree as a bird感…俺の能力がゴミカスに思えてきたよ」
「あはは、澄香じゃないよ。お姉ちゃんがすごいんだよ」
貴明が心配するまでもなく、澄香は貴明を従えながらもすいすいと空中遊泳している。能力は相当に強いようだ。首元には、ネックレスに仕立て直したあのシンセのチャーム。真っ白な肌に楽しそうに揺れている。
「ね!お兄ちゃんとお姉ちゃんが澄香を助けてくれたのは、このへんだよね」
2人は湖の中央部上空を飛ぶ。
「お前が死にかけた姿を思い出すと今でも悲しいよ。でもさ、氷がないと、ここは天国のように綺麗だな」
「ごめんね。でもみんなに命をもらったあの時、私は確かにここで新しく生まれたと感じたの。それにね、お姉ちゃんと一緒になってから、澄香はもっともっとお兄ちゃんのことを…」
切なそうな表情の澄香。だがすぐに一変、悪い顔でニカっとしながら、ついっと貴明の手を離した。
「阿呆なのかー!落ち…お前なっ!帰ったら折檻だハード折檻だ!」
澄香は慌てず、すいっと下方移動して貴明の体を支える。だが貴明が仰向けの状態で上から抱き抱えたものだから、顔がやたらと至近距離にあった。それに気づき赤くなる2人。
「す、澄香?顔、近…」
「お兄ちゃん…私…」
2人はどちらからともなく、自然に唇を合わせた。
温もりと柔らかさを確かめるように抱き合い、優雅に旋回しながら初夏の湖上空を遊泳する。2人とも夢見心地のまま。兄妹と思っていた相手と、こんな形で生を実感する日が来るなんて。その不思議さも相まって、2人は唇を重ねたままふわふわと気持ち良さそうに飛び続けた。
…が、澄香は心地よさに油断したのか、翼が消えて自然落下が始まった。貴明は慌てることなく、今度は自分でドアを作りその中に入る。部屋に戻った2人は、手を取り合う姿勢で赤面しながら向き合った。
「えへー、澄香はついにキスされてしまいました。さてどうでしょう」
「いや今のは澄香から…というか事故だ」
「むー!何か気に入らないことでも⁉︎」
「い、いえ…一切ございません」
「よろしい。だったら今度は改めてお兄ちゃんから、きちんとしてくださいね」
と言って澄香は後ろ手に組み、唇を少し差し出して目をつぶる。これはいかん。仕草も表情も全部可愛すぎる。貴明はハートに火がつきそうに昂る。
「わ、わかったよ!問題なし!どうにでもなれ。澄香、好きだ!」
真紅に染まる貴明は澄香の両肩をがしっと抱き、ぐぐっと近づく。吐息の熱を感じる距離。残り1cmで唇が重なる寸前…
ピポーン!ピポピポピポーン!グワシャピポーン!
ドアチャイムがけたたましく鳴り響いた。グワシャってなんだろうな。いいだけ鳴らしまくっておきながら、結局ドアを開けずにスッと入ってきたのは、やはり梨杏だった。
「いるんだろー!久しぶりに澄香のご飯が食べたくてさ。ごは…お?おおおお⁉︎」
2人はキス寸前の形で抱き合ったまま、真っ赤な顔で梨杏を見ている。
「ちが、違うぞ、それは違うに違いないと俺は思うのさ。まあ落ち着けよ梨杏」
「りり梨杏さん、誤解も曲解もよくないことと知るがいいですよ。ご飯ね、今日は何作ろうかな、じゃが肉、いや肉じゃが?あ、じゃがいも買ってないや、はははは」
まったく取り繕えていない言い訳も虚しく、一瞬の沈黙が支配する。その後、梨杏は久しぶりに充足した様子の下衆な悪い笑顔で、ただ無言で出て行こうとした。
「待てー!ここで無言はよせ!違うだろ、ここはいつもどおり大騒ぎすべきとこだろ!むしろ騒いでくれ!」
「も、もうやだ…澄香恥ずかし…これダメなやつだ…」
「いえいえ、私とてそれほど野暮天では…うひひ、ごゆっくり、うひ…」
2人は梨杏を追ってダッシュ。間延びした追いかけっこのような、締まらない絵面だ。
「梨杏さん待って!私の話を聞いて!」
「そうだ待て…っておい澄香?嫌な予感がするが、何を話す気だ?」
「お兄ちゃんが、嫌がる私にどうしてもキスしたいって無理やり迫るから、澄香はやむを得ず…」
「だーっ!甚だしい事実誤認!梨杏、そんな話は聞かなくていい!だがとにかく待てー!」
「あーっはっは!やっぱあんたらいいわー!これからも濃密エロシーンをよろしくね、エクストリーム変態偽兄妹!」
「濃密って何ー!」「濃密って何ー!」
相変わらずバタバタとやかましい3人。追いかけっこの最中、澄香はふと、すみかを深く想う。
(私楽しいよ、お姉ちゃん。でもさ、お姉ちゃんならこんな時どうするの?あははっ)
その刹那、澄香と貴明の胸にあの悪戯っぽく可愛らしい笑い声が聞こえた。気がした。
「くすくすくすっ、まだまだ物足りないなー。もっと頑張ってよね、澄香!」
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