異世界で奴隷になったら溺愛されました。

つかさ

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(28)宝石 ☆

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 夜になって、ガイアが戻って来た。
 彼の私室で夕食を共にしてから、ソファで寛ぐ彼の隣に座った。
 婚約者の存在を知ってしまった私は、なんとなく彼に対してよそよそしい態度を取ってしまっていた。
 彼もそれに気づいていたみたいだった。

「何かあったか?」

 ソファに座る私の肩に腕を回しながら、彼は問い掛けた。

「何もないです」
「部屋が気に入らなかったのか?」
「ううん、すごく素敵な部屋でした。…すごく嬉しかったです」
「…そうか」

 彼の手は器用に私の着ているワンピースの胸元のボタンを開いて中に潜り込み、胸を揉んできた。

「あっ…」
「じゃあ何が気に入らないんだ?」
「やん…、何でも、ないって…」
「おまえは嘘がつけん。そんな態度を取って、何でもないわけはないだろ」
「…あん…」

 ガイアには隠し事はできないみたいだ…。
 彼の愛撫に体がすぐに反応してしまう。

「何だ、言え」
「ガイアには、こ、婚約者がいるって…」

 ガイアは手を止めた。

「…誰から聞いた?」

 ヤバ。
 そういえば、言わないでってメアリから言われてたんだった。どうしよう。

「いえ、あの…部屋を移った時に、前の所有者が気になって、いろんな人に聞いて…」
「フン、…大方メイドにでも聞いたんだろう。余計なことをしゃべりおって」
「…どうして黙っていたの?」
「別に、隠していたわけではない。言う必要がなかっただけだ。それに婚約者と言っても親が勝手に決めたものだからな」
「王都に住んでるご令嬢だって聞いたけど…」
「ああ。ルドヴィカという、今年17になる娘だ」
「…!」

 私より年下なんだ。
 …私の前でも平気で婚約者のこと言えるんだな…。

「婚約者がいるのに、どうして私を抱くの…?」
「何を言っているんだ、おまえは」

 ソファの上で服を脱がされ、あっという間に私は下着姿にされてしまった。
 彼の手は私の太股を撫でるように触り、そのまま下着の中に潜り込んできて私の敏感な部分を擦り始めた。

「やあ…ん…、ダメッ…」

 二本の指が私の中に侵入する。
 無意識のうちに熱い吐息を漏らしていた。

「こんなに感じてるくせに、何がダメなんだ?」
「…結婚するのに…こんなのダメ…」
「結婚するからどうだっていうんだ。奴隷のおまえには関係ないだろ?」

 ガイアは鼻で笑い、私の胸の先端に舌を這わせる。
 そのまま胸や首筋に強く吸うようにキスをした。
 それは痣のように私の体に刻印された。

「…だって…、ルドヴィカさんに、悪いとは思わないの…?」
「俺が、ルドヴィカに悪いだって?バカを言うな」
「え…」
「あれは親が決めた婚約者だ。数年前に一度だけ会った程度で、どう思われようと構わん。俺の耳に入るルドヴィカの噂は、気位の高いくだらない女だという話ばかりだ。そんな女のために、なぜ俺が気を遣わねばならん?」
「でも…結婚するのなら、奥さんになる人を愛するべきでしょ?」
「結婚など子供を産ませるためのものだ。そんなことに時間を割くほど俺は暇じゃない」
「だって…結婚したら一緒に住むんでしょう?」
「馬が合わなければ住まん。子供を産ませたら追い出すさ」
「そんな…酷い…!」

 メアリも、結婚は子供を産ませるだけの形式だって言った。
 だけどそんなんでいいの?
 結婚て、後付けでも愛する人とするものだって私は思ってるのに。

「酷い…か」

 彼は私の股間から指を抜いて、舌でペロリと舐めた。

「おまえ、読書は好きか?」
「え…?」

 急に何を言いだすんだろう?

「読書…?本は好きです」
「女を抱くのは本を読むことと似ている。豪華な背表紙に惹かれて読んでみたものの、内容がつまらなかったなんてことも多いんだ。逆にボロボロの古紙のような本でも素晴らしく面白いこともある」
「…女性を本に例えるなんて不謹慎ですよ。じゃあ、読み終えたら捨てるの?」
「そうだな。気に入った本なら書棚に入れておくさ。いつでも読めるようにな」

 ガイアは私の耳元でクック、と笑った。
 …呆れた。
 本棚に入れるって、後宮ハーレムに入れるって意味?
 こういう考え方が、この世界の常識なんだろうか…。

「俺は読書が好きでね。だが今まで最後まで読みたいと思った本には出会えていない。だから俺の書棚には本が一冊もない。いつも他人から借りてばかりで読み捨てている。だがおまえは俺が初めて自分で買った本なんだ」

 私が、初めて…?
 それ、どういう意味?

「そこへ、親から無理矢理これはいい本だから読めと押し付けられる。しかも最初の何ページ目かくらいは読んでいてつまらないとわかっている本だ。だが捨てるわけにも行かぬ。こんな本は持て余すだけでどうしようもない」
「ガイア…」

 彼は再び私を抱き寄せた。

「俺は好きな本だけ読んでいたい」

 ガイアは私の髪をかき上げてうなじにキスした。
 どうしてこんなに優しくするの…?
 …胸が苦しくなる。

 そんな私の表情を見ながら、彼はフッと笑った。

「…そうか、おまえが不機嫌な理由がわかったぞ」
「…え?」
「おまえ、嫉妬しているんだな?」

 突然、彼はそう言い放った。

「おまえは酷いとか言いながら、俺と結婚するルドヴィカに嫉妬しているんだ。そうだろう?」
「ち、違います!」

 私は体をひねってガイアの胸を押し戻した。

「私はただ…、ガイアが結婚するっていうから…」

 そう言った途端、ポロリと涙がこぼれた。

「…ほら泣いた。図星じゃないか」
「な、泣いてない」
「バカだな。おまえが泣く必要なんかないんだ」
「泣いてないってば…」

 ガイアは私の涙を唇で拭った。

「泣くな。俺が抱くのはおまえだけだ」

 そう言って彼は私に口づけた。
 きっと、これは最上級の言葉なんだろう。
 なのに、私はそれ以上を彼に求めようとしてる。

「ガイア…お願い」
「ん?」
「結婚しないで」

 私はガイアに抱きついて、そう口走った。

「本音が出たな」
「…嫌なの。ガイアが他の子と一緒に居るって考えただけで…胸が痛くて」
「…それで嫉妬して俺に冷たくしたのか」
「私に黙って結婚するんだって思ったら、騙されてたみたいで腹が立って…」

 抑えようとしていた感情が溢れて、涙が止まらなくなった。

「また泣く…」
「ひっく…だって…」

 涙と嗚咽が止まらない。

「わかった、泣くな」

 彼は私を抱きしめて、泣き止むまで背中をさするように撫でてくれていた。
 わかってる。
 こんなの、彼を困らせるだけだってこと。
 奴隷は結婚できないし、異界人の私なんか持て余すってことも。

「サラ」

 名前を呼ばれて、涙でぐしゃぐしゃな顔を上げた。
 ガイアは自分の胸ポケットから無造作に何かを取り出した。

「ほら、見ろ」

 彼の手からシャラッと音を立てて私の目の前に落ちてきたのは、青い宝石のついた銀鎖のネックレスだった。

「これは青竜の涙と言われている宝石だ」

 それはガイアの瞳の色と同じアイスブルーの美しい宝石だった。

「綺麗…」
「髪を上げろ」
「え?こう…?」

 私はうなじの髪を持ち上げた。
 すると彼は、ネックレスを私の首に掛け、うなじのところで留め具を嵌めた。

「あ…」

 自分の首に掛けられたネックレスを手に取って見た。

「すごい…綺麗な宝石…」

 直径三センチ程もあるそのアイスブルーの宝石は美しく輝き、真ん中に金色の筋が一本入っている。それがまるで本物の竜の瞳のように見えた。宝石の周囲には細やかな白銀プラチナの細工が施されている。
 きっと高価なものに違いない。

「真ん中にあるのは金の希少石だ。おまえに似合うと思って作らせておいた。今日街へ出かけた時に受け取ってきたんだ」
「わざわざ、これのために…?ありがとうございます…。でも、こんな高そうなもの、貰っていいの?」
「ああ。褒美をやるといっただろ?」
「嬉しい…大事にします」

 私はそっとそのネックレスの宝石に触れた。
 こんなすごい宝石に触れたのは初めてだった。
 たしか希少石ってものすごく高価だって聞いたけど。
 でも…すごく嬉しい。
 男性からこんなプレゼント貰うのなんて、初めて…!

「フッ…、奴隷の首輪にしては上等なものだろう?」
「えっ?これって首輪…なの?」
「ああ、おまえが俺のものだという証だ」
「もう、せっかく喜んでたのに、どうしてそういうこと言うの?」

 私は口をへの字に曲げたままむくれた。
 そんな私をガイアは笑いながら見ていた。

「この俺に、浮気はダメだなんて説教する女はおまえくらいなものだぞ」
「だからって、そんな意地悪言わなくてもいいじゃない」
「フッ、だが言葉で表すよりもずっと説得力があるだろ?」
「うん…嬉しい」

 私はそっと宝石に手を当てた。

「別に、こんなものでご機嫌を取ろうと思ったわけではないぞ」
「わかってますって」
「…やれやれ、おまえに頼みごとを一つ、しようと思っていたのにな」
「何ですか?」
「いや、いい。気が変わるかもしれんしな」
「…?」

 私が不思議そうに彼の顔を見上げると、彼はいきなり私の体を軽々と持ち上げて、自分の膝の上に乗せた。

「きゃっ」
「機嫌が直ったところで続きをしよう」

 ズボンから取り出したガイアの股間は、既に屹立していた。

「自分で入れてみろ」
「は、はい…」

 私は下着をずらし、彼の分身を自分の中へと導いた。
 私のそこは、屹立した彼のモノをゆっくりと呑み込んでいく。

「はぁっ…あっ…!」
「キツイな。いきなり搾り取るつもりか…?」

 彼はククッと笑い、私の腰を押さえて根元までぐい、と突き入れた。
 その刺激に私は体をのけぞらせ、彼の首に両腕で抱きつきながらそれを受け入れた。

「あッ…深ぁ…ッ、奥、届いちゃう…」

 体の最奥に彼が侵入してくるのを感じる。
 まるで串刺しにされているような感覚だった。
 私の体は、ガイアの形を覚えてしまっているみたいで、彼のモノをぎゅっと包み込んでいるのを感じた。
 彼は私の腰を持ってそのまま激しく上下させた。

「あんッ…気持ちい…」
「ああ、俺もだ…」

 腰を激しく打ち付けられると、快感が押し寄せてくる。
 お互いの息が乱れ始め、リズミカルな皮膚のぶつかる音と混じっていく。
 彼の首にしがみつきながら、私の意識は突き上げられるたび、快感の波にさらわれていった。

「寝室へ行こう」

 彼は繋がったまま、私を抱えて寝室へと移動した。
 香がある場所へ行くためなんだろう。
 …私を妊娠させるわけにはいかないから。

 ベッドの上に下ろされて下着を剥ぐと、そこでまた激しく突かれる。
 両膝を抱え込まれて、真上から突き入れられる時、彼は私を見下ろして言った。

「その石、似合うぞ」
「あ…ありがとう…ございます…」
「俺が留守の間も、いつも着けておけよ」
「はい…あっ…」

 そうしてまた激しく責められる。

「何があっても、俺を信じろ」

 彼はそう言った。
 それがどういう意味なのか、私にはわからなかった。
 結婚しても、私を抱いてくれるってことなんだろうか。
 だけど、それでも…。
 快楽を与えられながらも、頭の片隅ではどこか冷静な自分がいた。

 この人には婚約者がいる。
 彼の子供を産む女性は、私じゃない。
 妻になるべき女性が他にいるんだ。

 私はどうしたいの?
 ヤキモチ妬いて、彼を独占して、それで?
 彼が結婚しても、今まで通りにいられる?
 こんな後ろめたい気持ちのままで、彼に抱かれていいの…?

 自分にそう問いかけながらも、衝動に流されていった。
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