185 / 246
第七章
切り札
しおりを挟む
記憶を失くした優星はオーウェン新王国軍の象徴として特別待遇を与えられて、宰相の隣に専用の天幕が用意されていた。優星は宰相の天幕で共に食事をすることが多いが、主な話題は世界情勢についてだ。
記憶のない彼にとって、彼の話はいろいろと勉強になったが、しまいには宰相の自慢話で終わる事が多くて、やや食傷気味であった。どうやら彼は聞き上手な優星に自分の話をすることが楽しいようだ。
オーウェン軍は首都を出て領土内を回り、地方からの兵も合流し、その数は20万に膨れ上がっていた。
アトルヘイム領を抜けてヨナルデ大平原を南下して更に西へ進むとペルケレ共和国領に入る。目指すはゴラクドールという都市だ。
宰相は、天幕に主要な部隊長を集めて、今後の方針を話していた。
宰相は首都セウレキアの市長に面会して傭兵部隊の協力を取り付けるつもりだという。
カラブという騎士に化けているカラヴィアは、優星の護衛としてその天幕の隅に立ってその話を聞いていた。
その時、天幕の外がなにやら騒がしいことに気付いて、カラヴィアはそっと外へ出てみた。
するとそこには見知った顔があり、護衛の兵士たちと何やら言い争いをしていた。
「だ・か・ら~!宰相に会わせなさいってば!この人を誰だと思ってんのよ!?ね、ゾーイ、何とか言ってやんなさいよ!」
「そうだ、こいつは宰相の息子なんだぞ!」
まるで子供の口喧嘩のように騒いでいたのはエリアナたち勇者候補の4人だった。
「あの子たち…!どうしてここに…」
大司教公国で祭司長をしていたカラヴィアにとって、エリアナは弟子であり、彼ら勇者候補たちは教え子でもある。
人間にはそれほど肩入れしない主義ではあったが、なぜか彼らとは縁があると感じていた。
カラヴィアはしばらく彼らの様子を見ていたが、護衛の兵士は彼らのことを知らないらしく、通さないの一点張りで、言い争いは激化していった。そろそろ双方が実力行使に出そうになったので、仲裁に入ることにした。
カラヴィアは護衛の兵から彼らを引き取り、優星の天幕にこっそり彼らを連れ込んだ。
「ちょっと、あんたたち何でここにいるのよ!?」
将たちは兵士の正体がカラヴィアだったと知って驚いた。
「オネエ言葉の兵士なんて変だと思ったわよ」
エリアナはそう云って納得していた。
「なによ~!これがワタシのアイデンティティなのよ!で、あんたたちはどうしてここにいんの?」
「んなのこっちが聞きたいわよ!あんの役立たずの大男!どこ行ったんだか」
「俺たちはイシュタムの転移にまた巻き込まれたんだよ!ったく、肝心のイシュタムはいねぇし、どこだかわかんねえとこに置き去りだしよ!散々だぜ」
「あの、私たちゾーイさんがここの兵士に見覚えがあるって言うので、お邪魔しに来てみたんです」
アマンダの説明にゾーイが頷いた。
「ふーん?ゾーイって言ったっけ?あんた宰相の息子だっけ?」
「…そうです」
「父親が権力を持ったから戻ってきたってわけ?」
「いえ、私は戦いをやめさせるために来たんです」
「へえ…無駄だと思うけど?あの宰相、図に乗ってるからさ」
「…無駄でも、説得はしてみるつもりです」
「…ま、頑張って。とりあえず宰相のとこへ一緒に行こ。あんたたちも居場所がないと困るでしょ?」
カラヴィアはここに優星の姿のエウリノームがいることと、宝玉の力で彼の記憶をすべて消したことを話すと、彼らは驚いた。
「エウリノームに関しては、あいつ自分のことを本物の優星だと思い込んでるから、そのつもりで接してやってくれない?」
「マジかよ!そいつ、あの高飛車な偽優星だろ?俺は相手にしたくねーな」
「そう言わないでさ、今は普通の人間なんだから。あ、そうそう、ワタシのことはここではカラブって呼んでね」
そう云いながらカラヴィアは将たちを宰相の天幕に連れて行った。
宰相は食卓を囲んで優星と向かい合って座っていたが、天幕に入って来たゾーイを見て、思わず立ち上がった。
「ゾーイ!いつ戻った?」
宰相はゾーイの隣にいる将たちを見やった。
さすがに宰相は将たち勇者候補のことを覚えていた。
「いつ戻ったのだ?…おお、勇者殿らを連れ帰ったのか!さすがは私の息子だ!戦力は少しでも多い方が良いからな!」
宰相はゾーイの傍に来て大いに喜んだ。彼は息子が自分のために勇者候補を連れて駆け付けてくれたと思っているのだ。
その父親を前にしてもゾーイは冷静だった。
「父上。この軍はどこへ向かっているのです」
「ペルケレ共和国のゴラクドールだ。魔王を倒して、あの都市を取り戻すのだよ」
「…なぜ他国の問題に兵を出すんです」
「他国の問題ではない、これは人間の国全体の問題だ。魔族に取られた人間の国を取り返すための戦だ。そうして我々オーウェン新王国がこの世界を導く存在となるのだ」
「相手は魔王ですよ。勝算はあるんですか」
ゾーイが尋ねると、宰相はフッと笑った。
「心配するな。切り札はちゃんとある」
「切り札?」
「まあ、すぐにわかる」
宰相は息子が戻ったことを喜び、将たちに優星と同じく特別待遇を与えると云った。
息子に腹は減っていないか、何か必要なものはあるか、などとかいがいしく世話を焼く姿は、1人の父親にしか見えなかった。
その場にいた優星は黙って初対面の彼らを見ていた。
彼らは優星と同じ天幕で寝泊まりすることになった。
下士官のカラヴィアは雑用を片付けるために出て行き、天幕の中は優星と勇者候補たちだけになった。
天幕の中はしばらく沈黙が訪れた。
優星には将たちの記憶がなく、お互いどう話しかけたらいいのかわからず戸惑っていた。
彼らは天幕の硬い敷物の上に輪になって座ったまま、目だけが動いていた。
沈黙に耐えられなくなった優星は、おそるおそる彼らに話しかけた。
「あの、あなた方は私のことを知っているんですか?」
「…ああ」
「私が、異世界人だというのは本当なんでしょうか」
優星の話を聞いて、エリアナは「そこから説明しないとダメなの?」と溜息をついた。
「あんた、ほんっとーに何にも覚えていないのね?」
「すいません…」
「別に、謝ることは無いんですよ、優星様」
アマンダが優しくフォローした。
エリアナは「まあ、中身は別人なんだけどね…」と彼に聞こえないように呟いた。
「あっちの優星のことは置いといて、こっちはリセットかかったってことでいいのかしら」
「記憶がないって、そういうことだろ。だいたい俺たちはコイツの中身の奴のことなんて知らねーんだし」
「あの、中身が違うって、何です?私は一体、誰なんですか?」
「なんだか調子狂うわね…」
「本物の優星様より真面目な感じですね」
「アマンダ、コイツは優星を殺した悪人なのよ。それを忘れないで」
エリアナはアマンダをジロッと睨んだ。
アマンダは「そ、そうでした…」と目を伏せた。
「ああそうだ、いっこだけ言っとくとな…」
「はい?」
「俺たちの知ってる優星は、自分のことを『僕』って呼んでたぜ」
「僕…ですか。なんだか言いなれないな…」
「ま、どっちでもいいけど、その顔で『私』って言われると気持ちわりーんだよ」
「そ、そうですか…」
「あと敬語もやめろよな」
優星は困ったような顔をした。
「…それより、切り札というのが気になります。何かご存知ですか?」
ゾーイが優星に尋ねると、彼は例の黒塗りの馬車のことを話した。
「ああ、俺たちその馬車の傍に転移してきたんだよな。周りに誰もいなかったし、あの馬車も無人だと思ってたけど。あれにその切り札ってのが乗ってたのか?」
「はい」
「どんな奴が乗ってるの?」
「わかりません。とんでもないバケモノが乗っていて、決して近づいてはならないと言われているので中を見たことはありません。ですが一瞬で多くの人間を消し去ってしまう恐ろしいヤツです」
「え?だって姿を見たことないのになんでわかるの?」
「あの馬車から黒い霧が出て、その霧に触れると人間は食われてしまうのです」
「霧に食われる?そんなことありえるのか?」
「実際、霧に取り込まれた人間が衣服を残して忽然と消えてしまうのを見ました」
「霧が相手だなんて、恐ろしいですね…。そんなのとどうやって戦うんですか?」
アマンダが不安そうに云った。
「想像もつかねーな」
「形のないものだしね」
「…本当にそうでしょうか」
優星が彼らの意見に疑問を呈した。
「あのバケモノには、毎日1人、生贄として奴隷が捧げられています。おそらくは食べられているのでしょう。では、食った人間はどこへ行くんだと思います?」
「どこへって…消化されて霧の一部になってるんじゃないの?」
「わた…僕はあの馬車の中に本体がいるんだと思っています。あの霧は、本体へ食べたものをエネルギーにして送るための出先機関なんじゃないかと考えているんです」
「ふーん、言われてみればそうね。霧が本体ならわざわざ馬車を仕立てる必要ないもんね」
「宰相が云うには、そのバケモノの名前はテュポーンというらしいです」
「テュポーン!?」
将とエリアナは同じタイミングで叫んだ。
「知っているんですか?」
「…名前だけな。伝説の怪物だって有名らしいぜ」
「…ってことはさ、あの馬車に乗ってるのはイドラなんじゃない?」
「あ!」
将が声を上げた。
「…もしかしてイシュタムはその馬車の中にいるんじゃないか?」
「え?」
「テュポーンがあの馬車の中にいるってんなら、イシュタムはそこへ転移してるはずだ。馬車の中は狭いから俺たちだけが馬車の外に転移したのかもしれん」
「だとしたら大変じゃない!」
「た、食べられちゃうんじゃないですか?」
「確かめてみよう」
アマンダとゾーイがそういうと、全員が慌てて立ち上がった。
「転移してから結構経ってるぞ。ヤバイかもな」
「わた…僕も行きます!いや、行くぞ!」
「もうそれ、無理に言い直さなくていいから…」
優星を加えた全員は、天幕を出て馬車へと向かった。
記憶のない彼にとって、彼の話はいろいろと勉強になったが、しまいには宰相の自慢話で終わる事が多くて、やや食傷気味であった。どうやら彼は聞き上手な優星に自分の話をすることが楽しいようだ。
オーウェン軍は首都を出て領土内を回り、地方からの兵も合流し、その数は20万に膨れ上がっていた。
アトルヘイム領を抜けてヨナルデ大平原を南下して更に西へ進むとペルケレ共和国領に入る。目指すはゴラクドールという都市だ。
宰相は、天幕に主要な部隊長を集めて、今後の方針を話していた。
宰相は首都セウレキアの市長に面会して傭兵部隊の協力を取り付けるつもりだという。
カラブという騎士に化けているカラヴィアは、優星の護衛としてその天幕の隅に立ってその話を聞いていた。
その時、天幕の外がなにやら騒がしいことに気付いて、カラヴィアはそっと外へ出てみた。
するとそこには見知った顔があり、護衛の兵士たちと何やら言い争いをしていた。
「だ・か・ら~!宰相に会わせなさいってば!この人を誰だと思ってんのよ!?ね、ゾーイ、何とか言ってやんなさいよ!」
「そうだ、こいつは宰相の息子なんだぞ!」
まるで子供の口喧嘩のように騒いでいたのはエリアナたち勇者候補の4人だった。
「あの子たち…!どうしてここに…」
大司教公国で祭司長をしていたカラヴィアにとって、エリアナは弟子であり、彼ら勇者候補たちは教え子でもある。
人間にはそれほど肩入れしない主義ではあったが、なぜか彼らとは縁があると感じていた。
カラヴィアはしばらく彼らの様子を見ていたが、護衛の兵士は彼らのことを知らないらしく、通さないの一点張りで、言い争いは激化していった。そろそろ双方が実力行使に出そうになったので、仲裁に入ることにした。
カラヴィアは護衛の兵から彼らを引き取り、優星の天幕にこっそり彼らを連れ込んだ。
「ちょっと、あんたたち何でここにいるのよ!?」
将たちは兵士の正体がカラヴィアだったと知って驚いた。
「オネエ言葉の兵士なんて変だと思ったわよ」
エリアナはそう云って納得していた。
「なによ~!これがワタシのアイデンティティなのよ!で、あんたたちはどうしてここにいんの?」
「んなのこっちが聞きたいわよ!あんの役立たずの大男!どこ行ったんだか」
「俺たちはイシュタムの転移にまた巻き込まれたんだよ!ったく、肝心のイシュタムはいねぇし、どこだかわかんねえとこに置き去りだしよ!散々だぜ」
「あの、私たちゾーイさんがここの兵士に見覚えがあるって言うので、お邪魔しに来てみたんです」
アマンダの説明にゾーイが頷いた。
「ふーん?ゾーイって言ったっけ?あんた宰相の息子だっけ?」
「…そうです」
「父親が権力を持ったから戻ってきたってわけ?」
「いえ、私は戦いをやめさせるために来たんです」
「へえ…無駄だと思うけど?あの宰相、図に乗ってるからさ」
「…無駄でも、説得はしてみるつもりです」
「…ま、頑張って。とりあえず宰相のとこへ一緒に行こ。あんたたちも居場所がないと困るでしょ?」
カラヴィアはここに優星の姿のエウリノームがいることと、宝玉の力で彼の記憶をすべて消したことを話すと、彼らは驚いた。
「エウリノームに関しては、あいつ自分のことを本物の優星だと思い込んでるから、そのつもりで接してやってくれない?」
「マジかよ!そいつ、あの高飛車な偽優星だろ?俺は相手にしたくねーな」
「そう言わないでさ、今は普通の人間なんだから。あ、そうそう、ワタシのことはここではカラブって呼んでね」
そう云いながらカラヴィアは将たちを宰相の天幕に連れて行った。
宰相は食卓を囲んで優星と向かい合って座っていたが、天幕に入って来たゾーイを見て、思わず立ち上がった。
「ゾーイ!いつ戻った?」
宰相はゾーイの隣にいる将たちを見やった。
さすがに宰相は将たち勇者候補のことを覚えていた。
「いつ戻ったのだ?…おお、勇者殿らを連れ帰ったのか!さすがは私の息子だ!戦力は少しでも多い方が良いからな!」
宰相はゾーイの傍に来て大いに喜んだ。彼は息子が自分のために勇者候補を連れて駆け付けてくれたと思っているのだ。
その父親を前にしてもゾーイは冷静だった。
「父上。この軍はどこへ向かっているのです」
「ペルケレ共和国のゴラクドールだ。魔王を倒して、あの都市を取り戻すのだよ」
「…なぜ他国の問題に兵を出すんです」
「他国の問題ではない、これは人間の国全体の問題だ。魔族に取られた人間の国を取り返すための戦だ。そうして我々オーウェン新王国がこの世界を導く存在となるのだ」
「相手は魔王ですよ。勝算はあるんですか」
ゾーイが尋ねると、宰相はフッと笑った。
「心配するな。切り札はちゃんとある」
「切り札?」
「まあ、すぐにわかる」
宰相は息子が戻ったことを喜び、将たちに優星と同じく特別待遇を与えると云った。
息子に腹は減っていないか、何か必要なものはあるか、などとかいがいしく世話を焼く姿は、1人の父親にしか見えなかった。
その場にいた優星は黙って初対面の彼らを見ていた。
彼らは優星と同じ天幕で寝泊まりすることになった。
下士官のカラヴィアは雑用を片付けるために出て行き、天幕の中は優星と勇者候補たちだけになった。
天幕の中はしばらく沈黙が訪れた。
優星には将たちの記憶がなく、お互いどう話しかけたらいいのかわからず戸惑っていた。
彼らは天幕の硬い敷物の上に輪になって座ったまま、目だけが動いていた。
沈黙に耐えられなくなった優星は、おそるおそる彼らに話しかけた。
「あの、あなた方は私のことを知っているんですか?」
「…ああ」
「私が、異世界人だというのは本当なんでしょうか」
優星の話を聞いて、エリアナは「そこから説明しないとダメなの?」と溜息をついた。
「あんた、ほんっとーに何にも覚えていないのね?」
「すいません…」
「別に、謝ることは無いんですよ、優星様」
アマンダが優しくフォローした。
エリアナは「まあ、中身は別人なんだけどね…」と彼に聞こえないように呟いた。
「あっちの優星のことは置いといて、こっちはリセットかかったってことでいいのかしら」
「記憶がないって、そういうことだろ。だいたい俺たちはコイツの中身の奴のことなんて知らねーんだし」
「あの、中身が違うって、何です?私は一体、誰なんですか?」
「なんだか調子狂うわね…」
「本物の優星様より真面目な感じですね」
「アマンダ、コイツは優星を殺した悪人なのよ。それを忘れないで」
エリアナはアマンダをジロッと睨んだ。
アマンダは「そ、そうでした…」と目を伏せた。
「ああそうだ、いっこだけ言っとくとな…」
「はい?」
「俺たちの知ってる優星は、自分のことを『僕』って呼んでたぜ」
「僕…ですか。なんだか言いなれないな…」
「ま、どっちでもいいけど、その顔で『私』って言われると気持ちわりーんだよ」
「そ、そうですか…」
「あと敬語もやめろよな」
優星は困ったような顔をした。
「…それより、切り札というのが気になります。何かご存知ですか?」
ゾーイが優星に尋ねると、彼は例の黒塗りの馬車のことを話した。
「ああ、俺たちその馬車の傍に転移してきたんだよな。周りに誰もいなかったし、あの馬車も無人だと思ってたけど。あれにその切り札ってのが乗ってたのか?」
「はい」
「どんな奴が乗ってるの?」
「わかりません。とんでもないバケモノが乗っていて、決して近づいてはならないと言われているので中を見たことはありません。ですが一瞬で多くの人間を消し去ってしまう恐ろしいヤツです」
「え?だって姿を見たことないのになんでわかるの?」
「あの馬車から黒い霧が出て、その霧に触れると人間は食われてしまうのです」
「霧に食われる?そんなことありえるのか?」
「実際、霧に取り込まれた人間が衣服を残して忽然と消えてしまうのを見ました」
「霧が相手だなんて、恐ろしいですね…。そんなのとどうやって戦うんですか?」
アマンダが不安そうに云った。
「想像もつかねーな」
「形のないものだしね」
「…本当にそうでしょうか」
優星が彼らの意見に疑問を呈した。
「あのバケモノには、毎日1人、生贄として奴隷が捧げられています。おそらくは食べられているのでしょう。では、食った人間はどこへ行くんだと思います?」
「どこへって…消化されて霧の一部になってるんじゃないの?」
「わた…僕はあの馬車の中に本体がいるんだと思っています。あの霧は、本体へ食べたものをエネルギーにして送るための出先機関なんじゃないかと考えているんです」
「ふーん、言われてみればそうね。霧が本体ならわざわざ馬車を仕立てる必要ないもんね」
「宰相が云うには、そのバケモノの名前はテュポーンというらしいです」
「テュポーン!?」
将とエリアナは同じタイミングで叫んだ。
「知っているんですか?」
「…名前だけな。伝説の怪物だって有名らしいぜ」
「…ってことはさ、あの馬車に乗ってるのはイドラなんじゃない?」
「あ!」
将が声を上げた。
「…もしかしてイシュタムはその馬車の中にいるんじゃないか?」
「え?」
「テュポーンがあの馬車の中にいるってんなら、イシュタムはそこへ転移してるはずだ。馬車の中は狭いから俺たちだけが馬車の外に転移したのかもしれん」
「だとしたら大変じゃない!」
「た、食べられちゃうんじゃないですか?」
「確かめてみよう」
アマンダとゾーイがそういうと、全員が慌てて立ち上がった。
「転移してから結構経ってるぞ。ヤバイかもな」
「わた…僕も行きます!いや、行くぞ!」
「もうそれ、無理に言い直さなくていいから…」
優星を加えた全員は、天幕を出て馬車へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる