少年刑事レオンの冒険──犯罪者を出し抜け!

作家志望の怠惰な学生

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科学施設の陰謀

急展開

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 目の前の光景に息が止まる。ガラス張りの気圧室は薄緑の霧で埋まり、宇宙服を身にまとったジェームズが壁に倒れかかっている。

「ジェームズ!」

 俺の叫びが壁で跳ね返って、辺りにこだまする。空気は薬品の強烈な臭いで重く、目や鼻がチクチクする。

 ガラスの奥に、ハリスが立っていた。ちょび髭をピクピクさせ、こちらを悠々と眺めている。

「おやおや、脱走ですか? もう遅いよ!」

 陽気な声は、もはや猟奇的なものになっていた。殺気づいた俺は、ガラスを蹴りつけてみたが、彼は怯まない。もちろん、ガラスも割れなかった。

「お前、さてはブラッドの手下だな!」

 ふざけた顔で、ハリスがケラケラと笑い声をあげる。

「ブラッド? ハハッ、違う違う、的外れもいいとこデスネ! ワタクシのクライアントはもっとすごいんだから!」

 からかうように叫び、コンソールをガチャガチャ操作する。ガスの臭いが強くなり、肺を焼いていく。

 突然、辺りに耳をつんざくほどの警報が鳴り響いた。どうやったかは見当もつかないが、フェリシアが鳴らしたに違いない。プライスは戸惑った顔をした。再びコンソールをいじると、私物をひっつかみ、荒々しく立ち去った。

「待て、この野郎!」
 
 臓器が痛い。頭も爆発しそうだ。俺は今までの人生で、一番の恐怖に襲われている。

 気圧室のドアに駆け寄るが、触れる前に息が途絶え、その場に倒れこんだ。意識を失おうとしたとき、シュッと音がして運命の女性が近づいてくるのが見えた──美しいなぁ。




 僕はフェリシアの命で、部屋から出された。駆け足で彼女の後を追う。白衣にもかかわらず、自転車並みの走行をしている。数多の研究員を押しのけて、ジェームズの元へ向かおうとしている。

 途中で嫌な視線を送ってくる者が大半だった。眼鏡に高身長の黒人、初老の女性、さらには荷物を抱え、マフラーに顔をうずめて駆ける小さな人物──あれ、こいつには見覚えがある。

「ハリス・プライスか!」

 僕は叫んだ。小男は足を速め、遠ざかっていく。フェリシアも同様で、僕のことなど忘れて駆けていく。

 プライスは、テストルームから真逆の方向へ向かっていた。長いこと続く白い廊下を抜けた先で、広い空間に出た。ガラス越しに外の夜空がくっきりと見え、星が見事にきらめいている。ほんの一瞬意識を奪われてしまったが、すぐに空間の側面にある目立たないドアを蹴破り、駐車場であろう場所に出た。

 白いセダンが急発進して来て、危ういところで転がり避けた。プライスの車だ──さて、どうやって奴を追えばいいのだろう? ジェームズの車を使うか? そのためには、彼から鍵を借りて、研究所の反対側にいって乗り込む必要がある。恐らく、そんな時間はない。

 ──いや、そうでもないかも。ポケットに手を突っ込むと、鉄の臭いとともに、事務所の鍵があることを確認できた──ジェームズの車は、鍵を差し込んでエンジンをかけるタイプではなく、鍵が近づくと反応してボタン一つ押せば機能するというものだ。

〈行けるかもしれない〉

 僕は車が置いてある施設の反対側へ全速力で向かった。こちらを不審そうに見つめている警備員などには目もくれず、地面の芝生がちぎれる勢いで駆け抜けていく。このとき、僕の脳は爽快感であふれていた。どう説明していいのか分からないが、とにかく走るのが楽──今までの自分の限界速度をゆうに超えていると思えるのだ。

 僅かな灯りの暗い庭を抜けて、僕らが車を停めたトンネルへたどり着く。内側へ入ると、またもや謎の車が闘牛のごとくこちらに急接近してきた! だが避ける間もなく、それがジェームズの車だと気づいた。

 それは僕の数歩手前で停止し、僕は運転席に目を凝らした──嘘だろ、中にいるのはジェームズじゃないか!

「あんた、毒ガスで緊急治療中のはずじゃ……?」

 暗い色の窓が開き、いたって健全に見えるジェームズが顔をのぞかせた。 

「僕は君が思っているより丈夫でね。簡単なことさ。助けが来るまでの間、息を止めていただけだ」

「本当にイカレてるな、あんたは」

 悪態じみた言い方で、車のドアを引き、いっそう暗い車内へ入る。

「それで、プライスはどこへ逃げおった?」

「聞くまでもないだろ。山を下ってる」

 ジェームズは今更ながらライトをつけた。明るくなったとたん、彼が興奮気味に薄笑いしているのが分かった。

「奴を捕らえなければ。彼のクライアントというのが何者か確証を得るまでは、逃がすことも、殺すことも許されない」





 あとがき

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