少年刑事レオンの冒険──犯罪者を出し抜け!

作家志望の怠惰な学生

文字の大きさ
26 / 35
科学施設の陰謀

訓練再び──そして新たなる悲劇。

しおりを挟む
 三人して事務所に戻ると、廊下のシャンデリアが不気味にゆらめいていた。あれほどの事件だったのだ──当然宿泊はパーになった。そもそもの目的であるスパイの排除も達成できたわけだし……

 それに、俺は毒ガスで死にかけた。幸い後遺症はなかったが、思いだしただけで嘔吐しそうだ。研究所が潰れてしまうとしたら、これが一番の原因になるはずだ。

「さっさと家に帰りたい」

 チャックが軽く伸びをし、ジェームズをにらんだ。

「分かっているだろう? まだ勤務時間だ。本当に子供じみているぞ」

 ジェームズは笑みを浮かべて俯いた。

「と言っても今日は、急ぎの仕事がない。つまり──」

「訓練かよ」

 俺がそう呟くと、ジェームズは満足げに頷き、細い人差し指をこちらに向けた。

「その通りだ。前回はあまりに差がつきすぎたからな、今日は二人まとめて相手してやるぞ」

 とたんに俺は安堵し、ニヤリとした。

「それは傲慢にも程があるんじゃないか?」

「そいつは、どうだろうな。さあ来い、実力を見せつけるときだぞ」

 二番目の鉄製ドアをくぐって、相変わらず異質に見えるジムに入った。部屋を両断するネットを全員でくぐり、靴を脱いだ。

「いつでもいいぞ」

 ジェームズは相変わらず傲岸不遜な顔をして、両腕を広げ、挑発する。俺は素早く飛び掛かった。案の定避けられるが、体が倒れる寸前で回し蹴りを入れた。いくらかダメージが入ったらしく、ジェームズは膝をついた。すかさず、チャックが殴りにいく。

 一発、二発──チャックは次々と打撃を与えるが、ジェームズは怯まない。大ダメージを与えようとしたのか、思い切り振りかぶったチャックに、ジェームズは拳を突き出す。

 チャックはネットにぶつかって倒れこんだ。俺はとっくに立ち上がっていたが、有効な攻撃ができずにいた。ジェームズが手刀で上半身を狙う。腕を組んで防御するが、彼の腕にするりとかわされ、肋骨に手痛い一撃を食らわされた。そのまま連続で拳を叩きこまれ、後退していく。

 チャックが復帰し、後ろからジェームズに体当たりするが、闘牛使いのごとくかわされる。彼は俺の上に倒れ込んできた。うめきながら彼を押しのけ、ジェームズに掴みかかった。体をひねらせ、彼を背負い投げる。しかし、ジェームズは上手いこと受け身をとった。今度はよろけた俺の足を取って浮かせ、全身を地面に叩きづける。

 チャックが連続で拳を振るう。俺はその間に体勢を立て直し、加勢しようとしたが、ジェームズの派手な回し蹴りで、二人とも吹っ飛ばされた。

〈だめだ、この男は強すぎる──俺たちだって並の不良より遥かに強いはずなのに──〉

「息を合わせていくぞ……」

 横たわりながら、チャックが囁いてきた──そうだな。二人なら不可能なんてない。心の中のロウソクが、何時ぶりかメラメラと燃え盛る。

「ああ、一緒にいくぞ!」

 起き上がり、二人顔を見合わせ、見下すような表情のジェームズに怒涛の攻撃をしかける。交互にはたき、掴み、殴る。蹴る、叩く──ジェームズに反撃の隙を与えず、打撃を入れ込んでいく。

「うおぉぉぉッ──!」

 二人して雄たけびを上げ、拳を重ねてジェームズの顔面にめり込ませた。彼は一言も発さず、地面に崩れ落ちた。

「まだやるか、うん?」

 勢いづいた俺はジェームズを見下ろした。

「……いいや」

 ジェームズはすっくと立ち上がった。

「もう、帰っていいぞ」

 そう言って、彼は部屋から出ていった。

 まだ朝だった。僕は中途半端に明るくなった路地を駆け、黒ずんだ三階建てのアパートにたどり着いた。不安と喜びが入り混じっていて、何とも言いがたい心情だ。錆びた階段を駆けると、ドン、ドドン、ドン、と一定の間隔で鈍い音が聞こえてきた。

 いや、階段とその音は無関係だった。建物の中から聞こえる──うちの部屋だ!

 全速力で階段を抜け、自宅のドアを叩きまくった。それにつれて、中から聞こえる音も強くなっていた。

 首に下げた小さなカバンに手を突っ込み、しばらくまさぐった末、鍵を取り出した。ドアの穴に差し込み、カチャリという音と共に僕は部屋へ飛び込んだ。

 ──なんて惨劇だ! 部屋の家具は倒れ、窓は派手に割れて散っている。電灯も粉々だ。僕は息をのんでもう一つの部屋──弟の部屋に入った。

 弟は、いない。代わりにいたのは、鎖で縛られ、もがいている兄のジェイク──

〈どういう、ことなんだ──!〉

 まさか弟が、誘拐された?
 
「う、う、嘘だぁぁッッ──!」

 自身の叫び声が、辺りにこだまする。






 あとがき

 ここまで読んでいただきありがとうございます! 第三編「科学施設の陰謀」完結です! タイトルの割に科学施設のくだりなかったですよね……この先も乞うご期待! いいね・お気に入り登録、お願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...