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第二十一話
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深夜にいろいろあったが、あれから旅に出る準備を整えると、宿屋にて三人で朝食を取った。
その際に、宿屋の店主から、「昨日の夜に何かあったのかい?」と聞かれたので、連れが泣いてしまって宥めていたんだと写楽は言っておいた。
勝手に向こうが「怖い夢でも見たようだね~」と勘違いしてくれたので良かったが、一応三人一緒に、他の部屋に泊まっている客にも店主にも謝罪をしておいた。
宿屋の外に出ると、ノージュたちは雑貨屋に行って必要なものを買いに行くことに。
「さて、オレはそろそろ一人旅に戻って――」
そう思って村の外を眺めていた時、空から黒い翼を生やした人物が村へと降りてきた。
すると他にも空から次々と物々しい雰囲気を醸し出している者たちが降り立つ。
皆一様に眼光が鋭く、村中を値踏みするかのように観察し始める。
(……何だ?)
耳が尖っているし、翼も生えていたので、恐らくは魔人っぽいが、何の用があって、大人数でこんな小さな村にやってきたのだろうか。
(冒険者って感じでもないな。まるで何かを探してるような……)
その一人の魔人と目が合い、スタスタと近づいてくる。
「――おいガキ」
……ガキだと? と頬が引き攣る。
「貴様、この者らを知っているか?」
そう言って見せられたのは二枚の手配書。その似顔絵は、写楽も見覚えがあるものだった。
「おい! どうなんだ! 聞いているんだからさっさと答えろ!」
「……さっきから聞いてると、何なんだお前たち」
「あ?」
「人にものを尋ねる時は、それなりの礼儀があるだろうが」
「……人間のくせに、生意気言うな!」
するといきなり拳で殴りかかってきたので、咄嗟に身をかわして、そのまま腕を掴み一本背負いで大地に叩きつけた。
「ぐはぁっ!?」
当然その光景を見た、他の魔人が殺気を含ませた視線をぶつけながら近づいてくる。一気に周囲を魔人で囲まれてしまった。
「おいおい、たかが人間ごときが、何してくれてるんだ? ああ?」
「別に。コイツが礼儀を欠いた言動をしたから、それ相応に返しただけだ」
「テメエ……殺してやろうかっ!」
この世界に来てどれだけ浴びたか分からない殺気が全身を刺してくる。
(ちょうどいい。アレを試してやる!)
写楽はリザードマン(亜種)から獲得したスキル――《威圧》を発動した。
「――――っ!?」
空気が一気に重くなり、写楽から威圧感が膨れ上がる。ほぼ同時に、魔人たちは息を呑みながら一歩退く。
この《威圧》は、その名の通り相手を威圧するスキルである。弱い敵ならそれだけで逃げたり、動けなくなったりする便利な技。
「こ、このガキ……一体何者だ!?」
魔人たちが焦燥感を露わにしているのが分かった。
※
建物の物陰にて、写楽と魔人が対峙しているところを観察しているコニムとノージュ。
「お姉ちゃん! 早くシャラクさんを助けなきゃ!」
「しっ、黙っていろ」
「で、でもあのままじゃ!」
「……いいや、やはりアイツ、只者じゃない」
「え?」
「見ろ、アイツの威圧感で、完全に魔人たちがビビってしまっている」
「……ほんとですね」
信じられなかった。恐らく自分たちを捕まえに来たであろう魔人たちは、並みの兵士程度なら圧倒することができるはず。
それなのに誰もが写楽の覇気に気圧されてしまい動けなくなっている。
「す、すごい……シャラクさん……!」
「隙を見て全員ぶった切ってやろうと思ったが、これは必要ないかもしれないな」
確か写楽は冒険者だと言っていた。それにまだこの世界に来て一カ月も経ってないと。それなのに、あれだけの魔人と渡り合える実力を備えていること自体がすでに異常なことだ。
(“異界者”って、皆さんあんなにすごいんでしょうか……?)
コニムはキリッとした顔を保つ写楽の横顔を見て、深夜のことを思い出し顔に熱がこもる。
実際あんあふうにトランス状態になったことは数えるほどしかなかった。しかもここ数年はまったくなかったというのに、何故か昨日は暴走してしまい、とんでもないことをしでかしてしまった。
幸い写楽が規格外だったお蔭で事なきを得たが、それでも深夜の出来事はコニムの心に棘となって深く突き刺さってしまっている。
ただ痛みもそうだが、それ以上に何故か彼といると心地好さも感じている自分がいることに気づく。この棘の痛みが、懐かしいとさえ感じるほどに。
その理由は分からない。ただ。
ただだからこそ、もっと彼のことを知りたいと思っているのだ。
コニムは黒髪の少年の横顔を見つめながら、胸のドキドキを感じていた。
その際に、宿屋の店主から、「昨日の夜に何かあったのかい?」と聞かれたので、連れが泣いてしまって宥めていたんだと写楽は言っておいた。
勝手に向こうが「怖い夢でも見たようだね~」と勘違いしてくれたので良かったが、一応三人一緒に、他の部屋に泊まっている客にも店主にも謝罪をしておいた。
宿屋の外に出ると、ノージュたちは雑貨屋に行って必要なものを買いに行くことに。
「さて、オレはそろそろ一人旅に戻って――」
そう思って村の外を眺めていた時、空から黒い翼を生やした人物が村へと降りてきた。
すると他にも空から次々と物々しい雰囲気を醸し出している者たちが降り立つ。
皆一様に眼光が鋭く、村中を値踏みするかのように観察し始める。
(……何だ?)
耳が尖っているし、翼も生えていたので、恐らくは魔人っぽいが、何の用があって、大人数でこんな小さな村にやってきたのだろうか。
(冒険者って感じでもないな。まるで何かを探してるような……)
その一人の魔人と目が合い、スタスタと近づいてくる。
「――おいガキ」
……ガキだと? と頬が引き攣る。
「貴様、この者らを知っているか?」
そう言って見せられたのは二枚の手配書。その似顔絵は、写楽も見覚えがあるものだった。
「おい! どうなんだ! 聞いているんだからさっさと答えろ!」
「……さっきから聞いてると、何なんだお前たち」
「あ?」
「人にものを尋ねる時は、それなりの礼儀があるだろうが」
「……人間のくせに、生意気言うな!」
するといきなり拳で殴りかかってきたので、咄嗟に身をかわして、そのまま腕を掴み一本背負いで大地に叩きつけた。
「ぐはぁっ!?」
当然その光景を見た、他の魔人が殺気を含ませた視線をぶつけながら近づいてくる。一気に周囲を魔人で囲まれてしまった。
「おいおい、たかが人間ごときが、何してくれてるんだ? ああ?」
「別に。コイツが礼儀を欠いた言動をしたから、それ相応に返しただけだ」
「テメエ……殺してやろうかっ!」
この世界に来てどれだけ浴びたか分からない殺気が全身を刺してくる。
(ちょうどいい。アレを試してやる!)
写楽はリザードマン(亜種)から獲得したスキル――《威圧》を発動した。
「――――っ!?」
空気が一気に重くなり、写楽から威圧感が膨れ上がる。ほぼ同時に、魔人たちは息を呑みながら一歩退く。
この《威圧》は、その名の通り相手を威圧するスキルである。弱い敵ならそれだけで逃げたり、動けなくなったりする便利な技。
「こ、このガキ……一体何者だ!?」
魔人たちが焦燥感を露わにしているのが分かった。
※
建物の物陰にて、写楽と魔人が対峙しているところを観察しているコニムとノージュ。
「お姉ちゃん! 早くシャラクさんを助けなきゃ!」
「しっ、黙っていろ」
「で、でもあのままじゃ!」
「……いいや、やはりアイツ、只者じゃない」
「え?」
「見ろ、アイツの威圧感で、完全に魔人たちがビビってしまっている」
「……ほんとですね」
信じられなかった。恐らく自分たちを捕まえに来たであろう魔人たちは、並みの兵士程度なら圧倒することができるはず。
それなのに誰もが写楽の覇気に気圧されてしまい動けなくなっている。
「す、すごい……シャラクさん……!」
「隙を見て全員ぶった切ってやろうと思ったが、これは必要ないかもしれないな」
確か写楽は冒険者だと言っていた。それにまだこの世界に来て一カ月も経ってないと。それなのに、あれだけの魔人と渡り合える実力を備えていること自体がすでに異常なことだ。
(“異界者”って、皆さんあんなにすごいんでしょうか……?)
コニムはキリッとした顔を保つ写楽の横顔を見て、深夜のことを思い出し顔に熱がこもる。
実際あんあふうにトランス状態になったことは数えるほどしかなかった。しかもここ数年はまったくなかったというのに、何故か昨日は暴走してしまい、とんでもないことをしでかしてしまった。
幸い写楽が規格外だったお蔭で事なきを得たが、それでも深夜の出来事はコニムの心に棘となって深く突き刺さってしまっている。
ただ痛みもそうだが、それ以上に何故か彼といると心地好さも感じている自分がいることに気づく。この棘の痛みが、懐かしいとさえ感じるほどに。
その理由は分からない。ただ。
ただだからこそ、もっと彼のことを知りたいと思っているのだ。
コニムは黒髪の少年の横顔を見つめながら、胸のドキドキを感じていた。
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