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プロローグ

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 ―――――君にこのゲームがクリアできるかな?

 ある日、そんな書き込みをオレのブログにコメントとして送って来た奴がいた。

「あ? 差出人は……“退屈な神”? 知らねえネームだなぁ。しかもダイレクトメッセージじゃねえか」

 オレ   富士咲扇は、自他ともに認めるゲーマーだ。特にギャルゲー(18禁含む)とシューティング系は神の域に達している(自称)ほど熟達している。どんな女の子も、ゲームの中じゃハートも狙い撃ちだぜ! ゲームの中だけだけどな!
ゲーム配信やブログもやってて、ブログにはこれまで攻略したゲームの感想など膨大な量を記載してる。

 ブログのアクセス数はそれほどでもないけど、コアなファンもついており、マメにチェックしてコメントに返信したりしているのだ。
 中にはオレのコメントが面白いと喜んでくれて、ゲームを攻略した記念にそのエンディング場面の画像を送って来たりするので、何となく親しみ易さを感じてほっこりする。

 それでもやはりアンチと呼ばれる者たちもいて、お前はただボスを倒しただけで、真の攻略に達してないから、安易に攻略したと言うななどの意見もあったりするけど、オレとしてはラスボスを倒してエンディングを見ればそれはもう攻略なのだ。

 確かにアイテムなどをコンプリートし、ミニゲームやクエストなどもすべて網羅して初めてそのゲームの攻略と言えるのかもしれないが、オレはそこまで隅々まで楽しむようなゲーマーじゃない。
 できれば一つのゲームをガッツリやるというよりは、数をこなしていきたいタイプ。まあでも、レベル性のRPGに関してだけでいえば、レベルカンストまで行きたいと、レベル上げに執着したりはしている。

 何故かって? だってレベル上げって楽しいじゃん。強くなっていき、ステータスが上がっていくのを見ると高揚感に包まれるんだよなぁ。
 だからこそ、ラスボス前には最高のレベルまで達して挑むから、基本的には苦戦した覚えがないのも事実。それ面白い? とかよく聞かれるけど、オレは過程を楽しむし、別にラスボス戦にそれほど求めてるものはハッキリ言ってない。

 どっちかってーと、ストーリー重視……かな? だからまあ、エンディングを見ることができるなら、さっさとラスボスとの戦いを終わらせる。まあ、賛否両論はあるけどな。

 たまに書き込みにはコラボ配信、オススメの市場ゲームのクリアをしてほしいといった依頼もあったりする。だから今回もそういう人種なのだろうと思ってメールをチェックしてみると、何やらファイルが送られてきていた。

「画像ファイル? いや、にしては容量がバカデケェな」

 もしかしたら自作のゲームでも送って来たのかもしれない。

 ちょうど暇潰しにもなるし、ダウンロードしてみっか。

「おいおい、ダウンロード完了まで十時間以上……? こりゃちょっと本格的なヤツか?」

 最新のパソコンでCPUも最速、メモリも他のとは一線を画すほどある。それなのにダウンロードにこの時間ということは、かなり綿密に作られたゲームかもしれない。

「ふぅん、何か面白そうじゃん」

 でも時間がかかるので、今日は寝て明日しよう。ちょうど休日で授業もないし。
 部屋の電気を消してベッドに横になると、すぐに寝入ってしまった。
 だから気づかなかった。パソコンがバチバチッと妙な音を立てていることも、自分の身体が淡く発光していることも、そしてこの日から、オレの運命が変わり始めていたということも。



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