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噂話
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アコーウルドの注意に俺がコクンと頷くと、それを確認したようにアコーウルドは話し始めた。
「前魔王であるヴァロルート様が崩御なされてから、今年で百年目になるんだけどね。表面上はヴァロルート様のご意志を尊重する形であるけれど、実際は人間に対して、混沌の時代を再来させようとする動きがあるらしいと言う噂があるんだ。もちろんこれを鵜呑みには出来ないから、人間軍がこちらを分断するために流した嘘情報の可能性もあると見ているみたい」
アコーウルドはそこまで話し終えると、息を吐いた。
どうにも信じ難いな。
混沌の時代は二度と起こしてはならないものだ。
それを起こそうとするなど、正気の沙汰ではない。
我々の世代は混沌の時代を生きた者はいないが、それでも起こしてはならないものだと理解できる。
人間側に被害が出ること以外に、魔王領、軍にも負傷者や金銭的な問題か生じることは少し考えれば明々白々だ。
「混沌の時代といえば二度と起きてはならないものだと、父上から教えていただきました」
「そうだね。混沌の時代は他がためにと言うより、人間軍、魔王軍それぞれの自らの為に行われた争いだからね。いつも争いごとの被害を受けるのは一般の市民たちなんだよ。このことは忘れてはいけないものだ」
「はい」
アコーウルドはこのことを絶対に俺に伝える、と言う気持ちが言葉の各所から滲み出ていた。
なんだか、そう考えるものがこの時代にいてくれるというのは嬉しいものだ。
俺が転生する前、魔王としての業務にあたる以前は、まだ、混沌の時代が再来を望む声が少なくない数いた。
俺が魔王として就任し、改革を推し進めていく間にも、いくつかの批判的な言葉があったりした。
それから考えると、アコーウルドのように起こしてはならないもの、その争いで本当に傷つくのは一体誰なのか、それをしっかり理解してくれている者がいるだけでほっとした気持ちになるのだ。
「空気が悪くなったね。今話した噂話は単なる一例にすぎないけれど、何が正しくて、何が誤っているか、それをしっかり見極めてほしいな」
「はい。分かりました」
「じゃあ、中断してたけど、省についての説明を再開しようかな」
アコーウルドは俺が返事をしたのを満足そうに聞くと、再び黒板に文字を書き始めた。
後確か、貴族省が残っていたはずだ。
「じゃあ、最後に貴族省に着いて説明するよ。貴族省はその名の通り貴族のための省だ。詳しく説明すると、貴族の取り締まりを行ったりする。混沌の時代を再来させようとする者、ヴァロルート様のご意志を無視し、身勝手に事を運ぼうとする者とかを摘発するんだ。ここまで質問はあるかな?」
「じゃあ一つ。貴族省は昔からそのような省だったんですか?」
俺の記憶が正しければ、昔は確かアコーウルドが言った説明とは真逆のことを行う省だったはずだ。
今でこそ四天王のお陰で多少貴族と平民の意識的な格差は埋まってきているが、昔は貴族とは平民に対して踏ん反り返って接しており、平民はなんでも言うことを聞く奴隷とでも思っていた。
そんな状況を見かねて、前世の俺が四天王と協力してなんとか基礎をつくった。
まぁ、俺自身出身が平民、それも孤児だったから人ごとに思えなかったし。
「いいや。確かに今も昔も貴族のための省ではあるけれど今と違って昔は貴族が平民に対して不平不満を言う場所だったらしい。例えば、誰それが無礼を働いたから即刻、首を刎ねろ!とかあの施設に平民を入れるな、穢れる!とかね」
アコーウルドは当時の貴族の真似をするように口調を変えながら言う。
俺も魔王として何度か貴族省に訪れたことがあるが、とりあえず言えることは理不尽極まりなく、どこにも絶対的な根拠のないことばかりだった。
あの当時の平民はそんな貴族たちを恐れて大っぴらに事を起こそうとはしなかった。
やる事をする事も、貴族の顔色を伺い、満足に発展もしない状況だった。
下に見られがちな平民だけど、実際は貴族、四天王、そして魔王よりも力を持っている。
自由な発想と圧倒的多数という力。
平民が暮らしやすいそんな環境であったなら、それは今以上にこの領は発展していただろう。
「イルマークくん、どうした?続けるけど大丈夫かな」
「あ、はい。問題ありません。続きをお願いします」
当時のことを思い出に浸っていると、心配するような声が耳に入ってきて、過去の思い出から抜け出した。
「本当に?キツくなったらいつでも言ってね」
「はい」
「じゃあ続けるよ。そんな状況にあった貴族省を改革したのが、前魔王ヴァロルート様と四天王の方々だったんだ。これは一部の人しか知らない情報だけど、ヴァロルート様は平民出身だったらしい。魔王っていうのは世襲制じゃないからね。まぁ、魔王については別の機会に詳しく。でね、そんなヴァロルート様だからこそ、そんな貴族省のあり方に疑問を持てたんだろうね。そこからは四天王の方々と協力して今の貴族省をつくりあげたらしい」
憧れの人の武勇伝を語るようにアコーウルドは目を輝かせながら言う。
こいつ、何故ここまで詳しい?
確かにこいつが言ったように俺、ヴァロルートが平民出身ということを知るのは四天王と公爵、侯爵に連なり、俺が就任した時に当主であったなものだけだ。
今までの会話の中に知りすぎている部分はあったが、それは学園での学び、それに統括省に勤めているのなら、と考えないようにしてきていたが、今回のこれに関しては見逃せない。
こいつが何者か。
何故、俺に関しての機密情報を知っているのか確認しなければ、不穏の芽は摘んでおきたい。
「ワラレさん」
「ん?私のことはアコーウルドでいいよ?始める前にもそう言ったと思うけど」
「いえ。僕は家庭教師のアコーウルド先生ではなく、統括省に勤めているただのアコーウルド・ワラレさんに言っているんです」
「‥‥‥なんでしょう」
俺の真剣な表情に顔を強張らせたのか、今から俺の聞く質問が分かってい、顔を強張らせているのかはわからないが、アコーウルドは覚悟を決めたように俺の言葉に対して返した。
そしてその口調は家庭教師のアコーウルドではなかった。
まるで赤の他人に接するときのようだった。
「単刀直入に聞きます。あなたは何者ですか?」
「‥‥‥きみはどう思いますか?」
「僕はあなたがただの統括省に勤める人物とは思えません。僕には学園の学習内容というものが分かりませんがワラレさん、あなたの情報量は異常です。本来知らないはずの前魔王様の情報まで知っていたことを踏まえると、可能性としては二つ出てきます。一つはなんらかの諜報機関に属し、領内の平穏を乱すための者、分かりやすく言うならば反乱者の可能性。二つ目は高貴な生まれ、それも四天王家に系譜を持つ者の可能性」
俺の追及にアコーウルドはどう答えるべきか返答に困っているようだった。
「はぁ、では仮に私が一つ目の可能性の反乱者であると仮定して、きみはどうしますか?私をお父上であるナリス様に報告しますか?」
「いいえ、そんなことはしません。報告したところで現状、確固たる証拠がないのなら父上は取りなってはくれないでしょう」
しばらく考え込んだアコーウルドは挑戦的な目で俺に質問をした。
俺がそれにの質問に否定する返答をするたアコーウルドは意外そうな顔をした。
「そうですか。やはり五歳とは思えない考えです。きみが私から学ぶことはないでしょう?」
「いいえ、各省についてだって知らないことはたくさんありました。それを教えてくれる先生、あなたがいないといけませんよ」
「慕ってくれるんですね。私のこと」
アコーウルドは家庭教師としての表情に戻った。
俺はそれに合わせるように生徒として言葉を返した。
その言葉にアコーウルドは寂しそうに呟いた。
「当たり前です」
「この領に仇をなす可能性のある裏切り者かもしれないのに?」
「いいえ、あなたは裏切り者とは思いません。僕は単に現状で考えられる可能性を挙げただけです。あなたは僕に混沌の時代は二度と起こしてはならないことだと教えてくれました。そんな人が裏切り者なわけがないです。僕、人を見る目はありますから」
茶目っけを持たせて言うと、アコーウルドは静かに微笑した。
「私はきみのお眼鏡に叶ったわけか。ふっ、確かに私は裏切り者ではないよ。でもね、イルマークくん、人は意外と強かなんだ。そう簡単に人を信用してはいけないよ。特にきみは次期四天王の一柱になる可能性があるんだから」
「‥‥‥そうですね」
次期四天王か‥‥‥。
魔族の寿命は数千年といわれる。
ナリス含め、四天王たちはそう考えるとまだまだ若い方だ。
それでも望まないが、人間との争いで命を落とす可能性だってないわけじゃない。
現状、魔王がいない状態で四天王が一人でもかけたら一大事だ。
だからこそ四天王の嫡子である子は四天王の一柱になる可能性があることを考えなければならない。
本来やりたいこととは違う者だっているかもしれない。
嫡子だからといって才能が秀でているとも限らない。
まぁ、新たに誰が魔王が就任すればもしかしたら変わるかもしれないけど。
「あ、そうだ。一つ聞きたいことがあったんだ」
「なんですか?」
アコーウルドは思い出したように両の手を叩いた。
突然の行動に若干驚いてしまった。
「イルマークくんがさっき言ってた、私の正体で考えられる可能性だけど、二つ目の理由聞いてなかったね」
「あ、そういえばそうですね。聞きたいですか?」
「出来るなら」
俺の質問にアコーウルドは目を輝かせながら食い気味に答えた。
「分かりました。先生が四天王家に系譜を持つ可能性があると考えたのは単に情報量の多さでした。後は思い出したんです。先生が使っていた砂時計ですが、よく見たらその砂時計、市場に出回っていない意匠なんです。通常であればヴァロルートさまのご意向が反映されて貴族には特別な意匠を施すことは考えにくいです。それでだったらその砂時計はなんなのか考えてみてわかったんです。これは四天王家に売るためではなく完成記念として血柱のナトハルト家から配られたものだと。以上が四天王家の系譜に連なるものだと思った理由です」
説明をし終えるとアコーウルドは開けた口が閉じないのか、魚のように口をパクパクさせている。
「先生?」
「あ、いえ、想像以上の理由説明に混乱しているだけで‥‥‥」
アコーウルドは慌ててながら一生懸命言葉を紡ごうとすると、扉が誰かにノックされた。
「誰だろう?どうぞ」
アコーウルドは声を張り、その人物に声をかけるとドアが開き入ってきたのはナリスとアルフォードだった。
「父上!」
「アルフォード様!」
急な思ってみなかった来客に俺たちは姿勢を正した。
「いい、いい。堅苦しくならないでくれ」
「そうそう。見学に来ただけだから」
そう言いって、部屋の中にあるソファに二人は腰掛けた。
「前魔王であるヴァロルート様が崩御なされてから、今年で百年目になるんだけどね。表面上はヴァロルート様のご意志を尊重する形であるけれど、実際は人間に対して、混沌の時代を再来させようとする動きがあるらしいと言う噂があるんだ。もちろんこれを鵜呑みには出来ないから、人間軍がこちらを分断するために流した嘘情報の可能性もあると見ているみたい」
アコーウルドはそこまで話し終えると、息を吐いた。
どうにも信じ難いな。
混沌の時代は二度と起こしてはならないものだ。
それを起こそうとするなど、正気の沙汰ではない。
我々の世代は混沌の時代を生きた者はいないが、それでも起こしてはならないものだと理解できる。
人間側に被害が出ること以外に、魔王領、軍にも負傷者や金銭的な問題か生じることは少し考えれば明々白々だ。
「混沌の時代といえば二度と起きてはならないものだと、父上から教えていただきました」
「そうだね。混沌の時代は他がためにと言うより、人間軍、魔王軍それぞれの自らの為に行われた争いだからね。いつも争いごとの被害を受けるのは一般の市民たちなんだよ。このことは忘れてはいけないものだ」
「はい」
アコーウルドはこのことを絶対に俺に伝える、と言う気持ちが言葉の各所から滲み出ていた。
なんだか、そう考えるものがこの時代にいてくれるというのは嬉しいものだ。
俺が転生する前、魔王としての業務にあたる以前は、まだ、混沌の時代が再来を望む声が少なくない数いた。
俺が魔王として就任し、改革を推し進めていく間にも、いくつかの批判的な言葉があったりした。
それから考えると、アコーウルドのように起こしてはならないもの、その争いで本当に傷つくのは一体誰なのか、それをしっかり理解してくれている者がいるだけでほっとした気持ちになるのだ。
「空気が悪くなったね。今話した噂話は単なる一例にすぎないけれど、何が正しくて、何が誤っているか、それをしっかり見極めてほしいな」
「はい。分かりました」
「じゃあ、中断してたけど、省についての説明を再開しようかな」
アコーウルドは俺が返事をしたのを満足そうに聞くと、再び黒板に文字を書き始めた。
後確か、貴族省が残っていたはずだ。
「じゃあ、最後に貴族省に着いて説明するよ。貴族省はその名の通り貴族のための省だ。詳しく説明すると、貴族の取り締まりを行ったりする。混沌の時代を再来させようとする者、ヴァロルート様のご意志を無視し、身勝手に事を運ぼうとする者とかを摘発するんだ。ここまで質問はあるかな?」
「じゃあ一つ。貴族省は昔からそのような省だったんですか?」
俺の記憶が正しければ、昔は確かアコーウルドが言った説明とは真逆のことを行う省だったはずだ。
今でこそ四天王のお陰で多少貴族と平民の意識的な格差は埋まってきているが、昔は貴族とは平民に対して踏ん反り返って接しており、平民はなんでも言うことを聞く奴隷とでも思っていた。
そんな状況を見かねて、前世の俺が四天王と協力してなんとか基礎をつくった。
まぁ、俺自身出身が平民、それも孤児だったから人ごとに思えなかったし。
「いいや。確かに今も昔も貴族のための省ではあるけれど今と違って昔は貴族が平民に対して不平不満を言う場所だったらしい。例えば、誰それが無礼を働いたから即刻、首を刎ねろ!とかあの施設に平民を入れるな、穢れる!とかね」
アコーウルドは当時の貴族の真似をするように口調を変えながら言う。
俺も魔王として何度か貴族省に訪れたことがあるが、とりあえず言えることは理不尽極まりなく、どこにも絶対的な根拠のないことばかりだった。
あの当時の平民はそんな貴族たちを恐れて大っぴらに事を起こそうとはしなかった。
やる事をする事も、貴族の顔色を伺い、満足に発展もしない状況だった。
下に見られがちな平民だけど、実際は貴族、四天王、そして魔王よりも力を持っている。
自由な発想と圧倒的多数という力。
平民が暮らしやすいそんな環境であったなら、それは今以上にこの領は発展していただろう。
「イルマークくん、どうした?続けるけど大丈夫かな」
「あ、はい。問題ありません。続きをお願いします」
当時のことを思い出に浸っていると、心配するような声が耳に入ってきて、過去の思い出から抜け出した。
「本当に?キツくなったらいつでも言ってね」
「はい」
「じゃあ続けるよ。そんな状況にあった貴族省を改革したのが、前魔王ヴァロルート様と四天王の方々だったんだ。これは一部の人しか知らない情報だけど、ヴァロルート様は平民出身だったらしい。魔王っていうのは世襲制じゃないからね。まぁ、魔王については別の機会に詳しく。でね、そんなヴァロルート様だからこそ、そんな貴族省のあり方に疑問を持てたんだろうね。そこからは四天王の方々と協力して今の貴族省をつくりあげたらしい」
憧れの人の武勇伝を語るようにアコーウルドは目を輝かせながら言う。
こいつ、何故ここまで詳しい?
確かにこいつが言ったように俺、ヴァロルートが平民出身ということを知るのは四天王と公爵、侯爵に連なり、俺が就任した時に当主であったなものだけだ。
今までの会話の中に知りすぎている部分はあったが、それは学園での学び、それに統括省に勤めているのなら、と考えないようにしてきていたが、今回のこれに関しては見逃せない。
こいつが何者か。
何故、俺に関しての機密情報を知っているのか確認しなければ、不穏の芽は摘んでおきたい。
「ワラレさん」
「ん?私のことはアコーウルドでいいよ?始める前にもそう言ったと思うけど」
「いえ。僕は家庭教師のアコーウルド先生ではなく、統括省に勤めているただのアコーウルド・ワラレさんに言っているんです」
「‥‥‥なんでしょう」
俺の真剣な表情に顔を強張らせたのか、今から俺の聞く質問が分かってい、顔を強張らせているのかはわからないが、アコーウルドは覚悟を決めたように俺の言葉に対して返した。
そしてその口調は家庭教師のアコーウルドではなかった。
まるで赤の他人に接するときのようだった。
「単刀直入に聞きます。あなたは何者ですか?」
「‥‥‥きみはどう思いますか?」
「僕はあなたがただの統括省に勤める人物とは思えません。僕には学園の学習内容というものが分かりませんがワラレさん、あなたの情報量は異常です。本来知らないはずの前魔王様の情報まで知っていたことを踏まえると、可能性としては二つ出てきます。一つはなんらかの諜報機関に属し、領内の平穏を乱すための者、分かりやすく言うならば反乱者の可能性。二つ目は高貴な生まれ、それも四天王家に系譜を持つ者の可能性」
俺の追及にアコーウルドはどう答えるべきか返答に困っているようだった。
「はぁ、では仮に私が一つ目の可能性の反乱者であると仮定して、きみはどうしますか?私をお父上であるナリス様に報告しますか?」
「いいえ、そんなことはしません。報告したところで現状、確固たる証拠がないのなら父上は取りなってはくれないでしょう」
しばらく考え込んだアコーウルドは挑戦的な目で俺に質問をした。
俺がそれにの質問に否定する返答をするたアコーウルドは意外そうな顔をした。
「そうですか。やはり五歳とは思えない考えです。きみが私から学ぶことはないでしょう?」
「いいえ、各省についてだって知らないことはたくさんありました。それを教えてくれる先生、あなたがいないといけませんよ」
「慕ってくれるんですね。私のこと」
アコーウルドは家庭教師としての表情に戻った。
俺はそれに合わせるように生徒として言葉を返した。
その言葉にアコーウルドは寂しそうに呟いた。
「当たり前です」
「この領に仇をなす可能性のある裏切り者かもしれないのに?」
「いいえ、あなたは裏切り者とは思いません。僕は単に現状で考えられる可能性を挙げただけです。あなたは僕に混沌の時代は二度と起こしてはならないことだと教えてくれました。そんな人が裏切り者なわけがないです。僕、人を見る目はありますから」
茶目っけを持たせて言うと、アコーウルドは静かに微笑した。
「私はきみのお眼鏡に叶ったわけか。ふっ、確かに私は裏切り者ではないよ。でもね、イルマークくん、人は意外と強かなんだ。そう簡単に人を信用してはいけないよ。特にきみは次期四天王の一柱になる可能性があるんだから」
「‥‥‥そうですね」
次期四天王か‥‥‥。
魔族の寿命は数千年といわれる。
ナリス含め、四天王たちはそう考えるとまだまだ若い方だ。
それでも望まないが、人間との争いで命を落とす可能性だってないわけじゃない。
現状、魔王がいない状態で四天王が一人でもかけたら一大事だ。
だからこそ四天王の嫡子である子は四天王の一柱になる可能性があることを考えなければならない。
本来やりたいこととは違う者だっているかもしれない。
嫡子だからといって才能が秀でているとも限らない。
まぁ、新たに誰が魔王が就任すればもしかしたら変わるかもしれないけど。
「あ、そうだ。一つ聞きたいことがあったんだ」
「なんですか?」
アコーウルドは思い出したように両の手を叩いた。
突然の行動に若干驚いてしまった。
「イルマークくんがさっき言ってた、私の正体で考えられる可能性だけど、二つ目の理由聞いてなかったね」
「あ、そういえばそうですね。聞きたいですか?」
「出来るなら」
俺の質問にアコーウルドは目を輝かせながら食い気味に答えた。
「分かりました。先生が四天王家に系譜を持つ可能性があると考えたのは単に情報量の多さでした。後は思い出したんです。先生が使っていた砂時計ですが、よく見たらその砂時計、市場に出回っていない意匠なんです。通常であればヴァロルートさまのご意向が反映されて貴族には特別な意匠を施すことは考えにくいです。それでだったらその砂時計はなんなのか考えてみてわかったんです。これは四天王家に売るためではなく完成記念として血柱のナトハルト家から配られたものだと。以上が四天王家の系譜に連なるものだと思った理由です」
説明をし終えるとアコーウルドは開けた口が閉じないのか、魚のように口をパクパクさせている。
「先生?」
「あ、いえ、想像以上の理由説明に混乱しているだけで‥‥‥」
アコーウルドは慌ててながら一生懸命言葉を紡ごうとすると、扉が誰かにノックされた。
「誰だろう?どうぞ」
アコーウルドは声を張り、その人物に声をかけるとドアが開き入ってきたのはナリスとアルフォードだった。
「父上!」
「アルフォード様!」
急な思ってみなかった来客に俺たちは姿勢を正した。
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