紫陽花旅館の殺人

二章

呆れ

そんなこんなで、頑張って捜査したものの犯人はわからず、これと言った手がかりも見つからなかった。
もう夕食の時間になってしまった。どうしようか…
考えていても仕方がないので、今わかっている事を頭の中でまとめて食堂に足を進めた。正直行きたくない

「あ、いらっしゃりましたか。皆様がお待ちになっております。」

食堂の前で、女将さんが声をかけてきた。
うっとなりながらも、食事の中に入ると全員の視線が俺に刺さる。特に、崎原さんと神山さんの視線が痛い
この状況で、犯人はわからないし手掛かりもありません！なんて言ったら殴られそうだ…

「さあ、探偵さん。今日はそ・う・さをしていたようですが、もちろん成果はあったんですよね？」

崎原さんがギロリと睨みながら言った。
言いたくねぇ…と心の中で思いながらも意を決して口を開いた。

「実は、特に何か犯人につながるものがあったわけでは無いんです。今日分かったことは、２つ
・毒は、効き始めたら吐き気を催すもの
・荒田さんは炊き込みご飯か、酢の物に毒を盛られた。
　という事です。」

言った瞬間、ガタンと椅子が倒れる音がし怒鳴り声が聞こえた。崎原さんだ

「はぁ！？あんなに大見得きったくせに犯人は愚か、手がかりも見つからなかったんですか！？信じられませんね。これだから一般の探偵ごときは…」

ぶつぶつと顔を真っ赤にしながら俺に怒鳴りつけてきた。俺はかなりダメージを受けたがその通りなので何も言えなかった。

　その時、バン！と机を叩く音がした。吃驚して音の方を見ると、滝村さんだ。

「いい加減にしてください、さっきから聞いていればなんなんですか。東山さんを馬鹿にするようなことばかり言って、分かったことが２つもあるんですよ？
あなたが捜査をしても絶対に見つからなかった。貴重な物です。そんなこともわからない人が偉そうに言わないでください。大きな声で怒鳴ったりして…いい大人が見苦しいですね。」

滝村さんが静かに淡々と述べた。眉間に皺を寄せ、大きな目をスッと細めて崎原さんを睨んでいた。

部屋の温度が何度か下がった気がした。
崎原さんも顔を青くさせ、小さくヒッと声を上げていた。

俺も、ブルっと身震いをした。滝村さんは絶対に怒らせないようにしよう…怖いし