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次の日、マクビルはソフィー先生に診てもらい、腕の痣が現れる事も、幼児化になる事もなく、正常だと診断された。
だがその後、黒い人影の被害が減ることは無かった。
その被害者からの報告もバラバラで、「人影は大男だった」とか、「唸り声をあげていた」や「剣を持って襲ってきた」など「いや、人影は美女で誘惑されそうになった」なんて報告まであった。
そして皆、黒い人影に触られ、静電気のような衝撃があり、赤黒い痣が出来ていたようだ。
マクビルのように幼児化は、今のところないらしい。
それと、黒い人影が言ったとされる「どうして。」と言う言葉も無かったらしい。
皆とマクビルの違い…。それが、何を意味しているのか…俺は、何か胸の奥がもやもやしたまま、国立記念日の祭りが開催されようとしていた。
◆◆◆
「エルーシ様ぁ。ダンスパーティ、私と一緒に行って下さーい。」
リビアンは、可愛らしく小走りでエルーシ殿下に近づき、少し潤んだ瞳で上目遣いをして話し掛けた。
普通の男子なら、これでイチコロなのだが、エルーシ殿下は違った。
「すまない。私は、王族として出席する立場なので、ダンスは踊らないんだよ。」
「ええぇぇ、そんなのつまらないでしょ?一緒に踊りましょ。」
リビアンは、それでも諦めずエルーシ殿下の腕にくっつこうと、手を伸ばした。
だが、エルーシ殿下に触れる直前で、隣にいたセレスに阻止される。
「触れないで下さい。不敬に当たります。」
「ふけい?………そっか、セレス様…。ごめんなさい。あなたの気持ちも知らず……解りました。私…セレス様とダンスパーティに行きます!」
リビアンの突拍子もない発言に、エルーシ殿下もセレスも、一瞬固まる。
「はぁ、頭痛が…。悪いけど、俺は先約があるので、貴女とは行けません。」
セレスはイライラするのを抑え、きっぱり断る。
それでも、リビアンは折れなかった。
「ええぇぇ!そんなの断って私と行きましょう。お・ね・が・い、ね。」
リビアンは上目遣いになり、さらには両手を握って顎に当て、いわゆる可愛く見えるポーズをして、セレスをどうにかして落とそうとする。
『これで、落ちない男はいないわよ。ふふふ。』
リビアンは、これでもかと瞳を潤ませ懇願した。
「すまない、急ぐので。殿下、行きましょうか。」
「うむ。」
そんなリビアンのあざとい可愛さが、通用しない例外はあったらしい。
セレスはエルーシ殿下と、リビアンには目もくれず去っていった。
取り残されたリビアンは、呆然として動けなかった。
◆◆◆
「最近、特に疲れるな。」
「ああ、本当に。あれほどまでに、苛つく女を見た事がない。」
生徒会室に入るや否やすぐに、エルーシ殿下とセレスは本音をぶちまける。
「グレース様に見向きもされなかったようで、いよいよ矛先がこちらに向きましたね。」
すでに生徒会室に居たヒューリが、2人を労うようにお茶を入れた。
先日まで、グレース王子がリビアンと一緒にいる事が多かったという出来事は、エルーシ殿下も大切な弟なので心配していた。
なぜ、あの生真面目な男が、偽聖女のあばずれと行動を共にしているのか、色々な噂も飛び交っていた。
リビアンがグレース王と恋仲だとか、グレース王子がリビアンの取り巻きになったのだとか…リビアンはグレース王子の弱味を握っているだとか…。
本当は…リビアンが『ルシオンの秘密を知っている』と言って、グレース王子をペットにしていたのだった。
グレース王子は、その内容を聞き出そうとし、一緒にいるしかなかった。
その秘密は『闇属性で人を殺す』という、物騒なものだったのだ。
だがそれが、なぜ殺すのか、誰を殺すのか、そもそも闇属性で人を殺すとは…どうやって?と、リビアンに聞いても、『秘密』と言ってはぐらかされていた。
あまりにも必死だったグレース王子に、鬱陶しくなったリビアンはやっと話してくれたが『嫉妬して、影を使うのよ。そして影に支配されて殺そうとしてくるのを、聖女の私が救うの。』と意味不明で曖昧なものだった。
『影を使う』それは闇属性を持っている人なら出来るものだが、今現在ではルシオンだけだ。
しかも、最近の『黒い人影』の報告がある。
タイミングが良すぎて、リビアンの戯れ言が無視出来なくなっていた。
ヒューリともう1人、ルシオンに護衛を付けているのだが、役目は監視も担っていた。
光と闇の両極端の属性を持ち合わせたルシオンは、国にとって救いか破滅か…どっちになるか解らないからだ。
いざ、ルシオンが闇に飲み込まれた時は、切り捨てなければならない。友に失望されたとしても…。
エルーシ殿下はセレスに内緒で、そう思っていた。
「彼女は何が目的なんだろな。」
「エルーシ殿下との結婚でしょ?」
エルーシ殿下の疑問に、お茶を飲みながら真面目に答えるセレス。
「彼女と結婚したら、この国は滅びるな。」
エルーシ殿下の冗談に、セレスもヒューリも容易く想像出来てしまい、背筋が凍った。
「それにしても、セレス。ダンスパーティの相手は誰だ?」
「……………いません。」
だがその後、黒い人影の被害が減ることは無かった。
その被害者からの報告もバラバラで、「人影は大男だった」とか、「唸り声をあげていた」や「剣を持って襲ってきた」など「いや、人影は美女で誘惑されそうになった」なんて報告まであった。
そして皆、黒い人影に触られ、静電気のような衝撃があり、赤黒い痣が出来ていたようだ。
マクビルのように幼児化は、今のところないらしい。
それと、黒い人影が言ったとされる「どうして。」と言う言葉も無かったらしい。
皆とマクビルの違い…。それが、何を意味しているのか…俺は、何か胸の奥がもやもやしたまま、国立記念日の祭りが開催されようとしていた。
◆◆◆
「エルーシ様ぁ。ダンスパーティ、私と一緒に行って下さーい。」
リビアンは、可愛らしく小走りでエルーシ殿下に近づき、少し潤んだ瞳で上目遣いをして話し掛けた。
普通の男子なら、これでイチコロなのだが、エルーシ殿下は違った。
「すまない。私は、王族として出席する立場なので、ダンスは踊らないんだよ。」
「ええぇぇ、そんなのつまらないでしょ?一緒に踊りましょ。」
リビアンは、それでも諦めずエルーシ殿下の腕にくっつこうと、手を伸ばした。
だが、エルーシ殿下に触れる直前で、隣にいたセレスに阻止される。
「触れないで下さい。不敬に当たります。」
「ふけい?………そっか、セレス様…。ごめんなさい。あなたの気持ちも知らず……解りました。私…セレス様とダンスパーティに行きます!」
リビアンの突拍子もない発言に、エルーシ殿下もセレスも、一瞬固まる。
「はぁ、頭痛が…。悪いけど、俺は先約があるので、貴女とは行けません。」
セレスはイライラするのを抑え、きっぱり断る。
それでも、リビアンは折れなかった。
「ええぇぇ!そんなの断って私と行きましょう。お・ね・が・い、ね。」
リビアンは上目遣いになり、さらには両手を握って顎に当て、いわゆる可愛く見えるポーズをして、セレスをどうにかして落とそうとする。
『これで、落ちない男はいないわよ。ふふふ。』
リビアンは、これでもかと瞳を潤ませ懇願した。
「すまない、急ぐので。殿下、行きましょうか。」
「うむ。」
そんなリビアンのあざとい可愛さが、通用しない例外はあったらしい。
セレスはエルーシ殿下と、リビアンには目もくれず去っていった。
取り残されたリビアンは、呆然として動けなかった。
◆◆◆
「最近、特に疲れるな。」
「ああ、本当に。あれほどまでに、苛つく女を見た事がない。」
生徒会室に入るや否やすぐに、エルーシ殿下とセレスは本音をぶちまける。
「グレース様に見向きもされなかったようで、いよいよ矛先がこちらに向きましたね。」
すでに生徒会室に居たヒューリが、2人を労うようにお茶を入れた。
先日まで、グレース王子がリビアンと一緒にいる事が多かったという出来事は、エルーシ殿下も大切な弟なので心配していた。
なぜ、あの生真面目な男が、偽聖女のあばずれと行動を共にしているのか、色々な噂も飛び交っていた。
リビアンがグレース王と恋仲だとか、グレース王子がリビアンの取り巻きになったのだとか…リビアンはグレース王子の弱味を握っているだとか…。
本当は…リビアンが『ルシオンの秘密を知っている』と言って、グレース王子をペットにしていたのだった。
グレース王子は、その内容を聞き出そうとし、一緒にいるしかなかった。
その秘密は『闇属性で人を殺す』という、物騒なものだったのだ。
だがそれが、なぜ殺すのか、誰を殺すのか、そもそも闇属性で人を殺すとは…どうやって?と、リビアンに聞いても、『秘密』と言ってはぐらかされていた。
あまりにも必死だったグレース王子に、鬱陶しくなったリビアンはやっと話してくれたが『嫉妬して、影を使うのよ。そして影に支配されて殺そうとしてくるのを、聖女の私が救うの。』と意味不明で曖昧なものだった。
『影を使う』それは闇属性を持っている人なら出来るものだが、今現在ではルシオンだけだ。
しかも、最近の『黒い人影』の報告がある。
タイミングが良すぎて、リビアンの戯れ言が無視出来なくなっていた。
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エルーシ殿下はセレスに内緒で、そう思っていた。
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「それにしても、セレス。ダンスパーティの相手は誰だ?」
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