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第一話 誕生
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ソレはそこにあった。初めて意識を持った時からそこにいた。
夜より暗く、光の届かない場所。
だけど最初からそこにいるからソレはそれが夜より暗いとは思わないし、光が何かなんて知らなかった。
ただただ静かであった。
静かに静かに……ソレがまどろんでいた時、それは突然起きた。
ソレにとっては初めての出来事だった。
ソレのいる場所にソレ以外の意思を持ったモノが来た。
そう、闇の外側からやってきたのだ。
ソレがうまれた時からソレはその場所から1歩も動いた事がなかった。
それもそうだ。
周りはただただ静かで、何もないのだ。光もなければ、物質もない。
それにソレには形もなかった。
だからソレは動くという事をしなかったし、考えもしなかった。
そんな場所に何かがやってきた。ソレはそれに興味を持った。
だから初めて動いてみた。
ソレが近づくごとにそれは何か音を出していた。なんの音かはソレにはわからない。でも珍しくて聴いてみた。
「なんだよ!おい!マーシー!カイ!どこだよ!何もみえねぇ!なんなんだよぉ!」
その後もそれをソレはずっと観察していた。
最初はずっと動き回りながら何か大きな音を出していたが、やがてそれは動きを止め、丸くなり、小さい音を出し始めた。
「いつもそうだ……俺が何したっていうんだ……どこなんだ……なんだよ……母さん……母さん……喉がかわいた……腹減った……母さん…………」
やがてそれは音を出さなくなり、動きも止まった。
その後もしばらく見ていたけど、それはもう音も出さないし動く事もなくなった。
観察をやめたソレは、それに触れてみたくなった。
ソレは目の前で動かないそれの姿かたちを真似てみた。
闇が蠢き、形を作っていく。
触れたいと思ったからか、まず手が形づくられた。
手が出来たら他もどんどん形が作られていった。
そして、初めてこの闇の世界に姿形をもった住人が生まれた。
手が出来たソレはそっとそれに触れてみた。
触れるごとにソレの体も完成していった。
しばらくしてソレは彼となった。
彼が触れるごとにそれと呼んでいた人間の知識が流れこんできた。
動かなくなっているこの人間が死んでいるという事。
死ぬという概念はなんとなく理解はできたが、自分にはないという事がわかるので「理解」はしても理解はできなかった。
知識を得た彼は、死んだこの人間を少しだけ哀れんだ。
彼にはいないけど、この人間には家族というモノがあった。そしてそれはとても暖かく思えた。
最後に、この人間は「かあさん」と呟いて息絶えたのだ。
だから、彼はこの人間を闇に埋葬した。
じわじわと人間の体は闇に溶けていっていた。そこで彼は初めて気づいたのだ。
闇に溶けていく人間は自分の栄養となっている事に。それに特に嫌悪などはなかった。
もう死んだ肉体だから、魂は捕らえずに外に逃がしたから。
そうして彼は人間から得た知識を理解する為に反芻しはじめた。
こうして闇に1体の知性をもった生物が誕生した。
彼は闇の住人と呼ばれる異形の存在であった。
夜より暗く、光の届かない場所。
だけど最初からそこにいるからソレはそれが夜より暗いとは思わないし、光が何かなんて知らなかった。
ただただ静かであった。
静かに静かに……ソレがまどろんでいた時、それは突然起きた。
ソレにとっては初めての出来事だった。
ソレのいる場所にソレ以外の意思を持ったモノが来た。
そう、闇の外側からやってきたのだ。
ソレがうまれた時からソレはその場所から1歩も動いた事がなかった。
それもそうだ。
周りはただただ静かで、何もないのだ。光もなければ、物質もない。
それにソレには形もなかった。
だからソレは動くという事をしなかったし、考えもしなかった。
そんな場所に何かがやってきた。ソレはそれに興味を持った。
だから初めて動いてみた。
ソレが近づくごとにそれは何か音を出していた。なんの音かはソレにはわからない。でも珍しくて聴いてみた。
「なんだよ!おい!マーシー!カイ!どこだよ!何もみえねぇ!なんなんだよぉ!」
その後もそれをソレはずっと観察していた。
最初はずっと動き回りながら何か大きな音を出していたが、やがてそれは動きを止め、丸くなり、小さい音を出し始めた。
「いつもそうだ……俺が何したっていうんだ……どこなんだ……なんだよ……母さん……母さん……喉がかわいた……腹減った……母さん…………」
やがてそれは音を出さなくなり、動きも止まった。
その後もしばらく見ていたけど、それはもう音も出さないし動く事もなくなった。
観察をやめたソレは、それに触れてみたくなった。
ソレは目の前で動かないそれの姿かたちを真似てみた。
闇が蠢き、形を作っていく。
触れたいと思ったからか、まず手が形づくられた。
手が出来たら他もどんどん形が作られていった。
そして、初めてこの闇の世界に姿形をもった住人が生まれた。
手が出来たソレはそっとそれに触れてみた。
触れるごとにソレの体も完成していった。
しばらくしてソレは彼となった。
彼が触れるごとにそれと呼んでいた人間の知識が流れこんできた。
動かなくなっているこの人間が死んでいるという事。
死ぬという概念はなんとなく理解はできたが、自分にはないという事がわかるので「理解」はしても理解はできなかった。
知識を得た彼は、死んだこの人間を少しだけ哀れんだ。
彼にはいないけど、この人間には家族というモノがあった。そしてそれはとても暖かく思えた。
最後に、この人間は「かあさん」と呟いて息絶えたのだ。
だから、彼はこの人間を闇に埋葬した。
じわじわと人間の体は闇に溶けていっていた。そこで彼は初めて気づいたのだ。
闇に溶けていく人間は自分の栄養となっている事に。それに特に嫌悪などはなかった。
もう死んだ肉体だから、魂は捕らえずに外に逃がしたから。
そうして彼は人間から得た知識を理解する為に反芻しはじめた。
こうして闇に1体の知性をもった生物が誕生した。
彼は闇の住人と呼ばれる異形の存在であった。
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