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第四話 行動

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 あれからしばらくして、彼はとりあえず人間は闇では生きれないから闇の外で、赤子を安全に眠らせられる場所を作る事にした。
 とはいえ、闇から出たことがないので、まずは赤子を闇の中で寝かせ外を観察する事にした。

 いつも人間が入り込んでくる場所まで移動した彼は少しの緊張を感じつつ外への1歩を踏み出した。
 まず最初に感じたのが、感じた事のない光の乱舞だった。
 そしてざわざわと鳴る梢の音。土の香りや風が運ぶ匂い。
 服や肌を撫でて行く風に不思議な気持ちになる。

 外の世界はさまざまな音や光や匂いが溢れていた。
 知識として知っていても実際感じるのとでは全然違っていた。
 彼の心にはなんともいえない感情が広がっていた。

 しばし堪能していた彼は赤子の為に安全な場所を探す為、移動を開始した。

 1歩、2歩、歩を進める。靴越しに感じる大地の感触を楽しみながら。
 かつて闇に飛び込んできた動物達の記憶を掘り起こす。
 森の中にぽっかりとひらけた場所があり、そこには美しい池がある。
 池の周りの開けた場所には柔らかな丈の低い草が生えており周囲には果物がなる木も生えている。
 彼はそこに人間達が住むという物を作る事にした。

 しばらく歩いてふと振り返ると闇がすぐそばにあった。
 どうやら闇は己と繋がっているようだ。
 確かに闇から出ても赤子の状態は手に取るようにわかったしすぐそばに感じてはいた。
 ふむ、と彼は池に着くまで闇について色々と考えてみた。

 確かに今までは常にそばにあったし意思が芽生えた時にはすでに闇の中であったから闇について考える事などしてはいなかった。

 とはいえ、赤子の為に乳を作った時などは自分が望むとおりに作れたし、それに闇に入り込んだ動物や死んだ人間を取り込んだ時はそれが確かに自分の栄養になった。
 そもそもは自分は元々は闇だった。

 そこで彼は闇の形を変えてみた。大丈夫だという確信はあったのだが万が一があってはいけないので赤子を闇から取り出しておく。

 まずは闇を小さくしてみた。手のひらに乗るほどの大きさにまで縮んだ。
 その後闇を分割してみた。
 ひとつは手のひらサイズにして、もうひとつは薄く広くひろげてみた。
 感覚的に分割しても縮めたとしても中のサイズは変わらないし繋がっている。
 さらに闇で剣を作り出し、手のひらサイズの闇を切り裂いてみた。
 闇はふたつに裂けたが、すぐに元に戻る。中には影響はないし、自分へもダメージはない。
 これは便利かもしれない。
 実のところを作ったあとの守りをどうするかで少し悩んでいたのだ。
 闇で包んでは外で作る意味もないしと。

 色々試したあと、赤子を闇へと戻した。まだ外は安全ではないからだ。
 悩みが解決したところで彼は池を目指した。
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