237 / 288
第二百三十七話 さらなる実験
しおりを挟む
新しい使用人が増えてから2ヶ月が経った。
ライナー達の出立の時でもあり、ベティーナとユッテが家へ帰る日でもある。
「世話になったな、サイリール」
「お世話になりました」
ライナー達が口々にお礼を告げる。
「ううん、こちらこそ楽しかったよ。ありがとう」
「おう、まぁ訓練とかもあるし、休みの日には必ず来るぜ」
「うん、楽しみにしているよ」
「うし、んじゃまたな!」
「ああ、また」
そうしてライナー達はユッテとベティーナを家に送り届けた後オルペの街を旅立った。
赤子の泣き声も、ライナーが訓練している音もしない屋敷はなんだか静かで寂しかった。
そんな感傷に浸っているとバサバサと羽音がした。
サイリールが腕を出すとその腕に少し大きな鳥が止まった。
目的の物を抱えた鳥だ。
サイリールはセドリックに実験をするから暫く戻れないと告げて移動した。
今回は実験が終わるまで研究室から出るつもりはない。
研究室についたサイリールは台の上に大きな鳥を乗せた。
鳥はすぐに形を崩すとそのまま台の上いっぱいに広がり黒い繭のようになった。
長さは1m70cm程だろうか。
そんな繭にサイリールが触れると一瞬で繭は透明になった。
繭の中にいたのは犬の顔をした闇の住人だった。
彼の胸にはべったりと赤黒い血がついている。
そう、サイリールがここ最近ずっと探させていた闇の住人の死体である。
すでに魂は抜けており、死後数時間という所だろうが、そこから闇で包み保存して戻って来ていたので実際は魂が抜けて1週間以上は経っている。
これで揃った。
実はもう一体、この死体とは別に女性の闇の住人の死体もあるのだ。
サイリールはこの死体達を使って実験を行うのだ。
「ごめんね、申し訳ないけれど実験に使わさせてもらうね」
死体にそう告げてから少し目を瞑り彼らの冥福を祈る。
その後2つの死体を強制的に蘇生させる為に以前ダンジョンで手に入れた短剣を彼らに突き刺し再生させる。
短剣については以前に小動物の死体で試しており、死後1日以上経っていると抜けた魂は戻っては来なかった。
やはり時間が経った死体を再生しても魂は帰って来れないようだ。
魂はどちらもすでにいないのでここにいた他の個体同様ただ生命活動をしているだけだ。
とはいえ、彼らの遺体をどうこうするわけではなく、必要なのは彼らの種と卵だ。
それだって本当は申し訳ないのだが、家族、そして友人の為に自分の心を殺して実験に使用する。
闇の住人の死体以前にすでに人の男女の遺体も手に入れており、そちらもすでに蘇生はしている。
もちろん魂はなくただ生命活動をしているだけだ。
魂はないとはいえ、実験として彼らを利用するのだからやはり心は痛む。
だからこそ彼らを利用した実験が終わるまではこの研究室から出る気はないのだ。
そうしてサイリールは実験を始めた。
まずは元となる闇の住人を親個体として、闇の住人同士の子供を作る。
闇の住人同士の場合は数人に一人は人型ではない個体に育つがそれは成長させずに処理する。
実験に必要なのは人型だからだ。
とりあえず純粋な闇の住人を個体Cとして実験を続ける。
最初に個体Cの数体の血液に人間とは違う特殊な情報があるかを調べる。
犬の方の個体は血液中に特別な成分があったが、鳥の方の個体には特になかった。
なので、犬の個体のうち二体で実験をする事にした。
まずは犬の個体の血液を作る元を調べその特殊な成分の情報を消し、血液内からも消し去る。
これは以前ジルヴィアにもした事なので素早く処理できた。
その後、二体の体の時間を1年分程進めてから、種と卵を取り出す。
それを人間の種と卵と掛け合わせ成長させてみる。
結果としてはどちらも闇の住人の姿、つまりは犬の個体へと成長した。
血液を調べると、そちらは特別な成分は消えたままであった。
改良した結果は残ってはいるが、これでは満足行く結果ではない。
更に先程の二体の頭部や手足尻尾などを改造していく。
ほぼ人間と変わらぬ姿になった所で更に1年時間を進める。
これで卵と種の情報は変わっているはずである。
とはいえ、外側から見た目を変えただけなので情報自体は変わっていないだろうが。
見た目の変わった二体の卵と種を使って人間の種と卵を掛け合わせる。
結果は残念ながら最初と同じ結果となり、血液以外は犬の個体である。
そこで次は複製体と女性体の物を使ってみる事にした。
個体Cと掛け合わせ、成長させた結果は全てが人型へと育った。
これはある程度予想はしていたのであまり驚きは少ないのだが、やはりと言うべきか、子供の成長にかかる時間が人と同じだった。
通常闇の住人同士なら6ヶ月でなければならないというのに。
そもそも、人間との場合でも闇の住人の妊娠期間は6ヶ月なのだ。
もしかしたら取り出して育てているせいか、腹の中で育てていないせいかとも一瞬考えたが、個体Cを成長させた時は通常の速度であれば大体6ヶ月だったので、それは関係ないだろう。
どうして自分で作った体とだとここまでの影響を及ぼすのかが分からない。
気を取り直して次に個体Aと掛け合わせてみる。
闇のエネルギーは流れているが、ほぼ人間と変わらない能力を持たない個体がAだ。
その結果はすべてが人型へと成長した。
調べた結果は個体Aと変わらない存在になっていた。
次に個体Aと人間とのハーフである個体Bとその中でも闇のエネルギーが流れていない特殊個体Bを個体Cと掛け合わせてみる。
まずは通常の個体Bとだけ掛け合わせる。
結果としては数体のうち1体が特殊個体Bと同じく闇のエネルギーの流れていない人型が出来た。
本当によく分からない結果になる。
とりあえずその結果はさて置き、特殊個体Bと個体Cを掛け合わせてみる。
この結果にはさらに驚く事になった。
なぜそうなるのかが分からないが、10体のうち2体だけが闇のエネルギーが流れていたが残りの8体は全てそれがなかった。
そこで、闇のエネルギーが流れていない8体のうちの2体を選び、親個体の犬と鳥の闇の住人と掛け合わせてみた。
本来であれば、親個体の方に引っ張られるはずであるが、結果は先程と同じで、全てが人型であり、20体のうち闇のエネルギーが流れていたのは3体だけだった。
その3体も、能力は何一つ持っておらず、闇のエネルギー以外はただの人間と何も変わらなかった。
ライナー達の出立の時でもあり、ベティーナとユッテが家へ帰る日でもある。
「世話になったな、サイリール」
「お世話になりました」
ライナー達が口々にお礼を告げる。
「ううん、こちらこそ楽しかったよ。ありがとう」
「おう、まぁ訓練とかもあるし、休みの日には必ず来るぜ」
「うん、楽しみにしているよ」
「うし、んじゃまたな!」
「ああ、また」
そうしてライナー達はユッテとベティーナを家に送り届けた後オルペの街を旅立った。
赤子の泣き声も、ライナーが訓練している音もしない屋敷はなんだか静かで寂しかった。
そんな感傷に浸っているとバサバサと羽音がした。
サイリールが腕を出すとその腕に少し大きな鳥が止まった。
目的の物を抱えた鳥だ。
サイリールはセドリックに実験をするから暫く戻れないと告げて移動した。
今回は実験が終わるまで研究室から出るつもりはない。
研究室についたサイリールは台の上に大きな鳥を乗せた。
鳥はすぐに形を崩すとそのまま台の上いっぱいに広がり黒い繭のようになった。
長さは1m70cm程だろうか。
そんな繭にサイリールが触れると一瞬で繭は透明になった。
繭の中にいたのは犬の顔をした闇の住人だった。
彼の胸にはべったりと赤黒い血がついている。
そう、サイリールがここ最近ずっと探させていた闇の住人の死体である。
すでに魂は抜けており、死後数時間という所だろうが、そこから闇で包み保存して戻って来ていたので実際は魂が抜けて1週間以上は経っている。
これで揃った。
実はもう一体、この死体とは別に女性の闇の住人の死体もあるのだ。
サイリールはこの死体達を使って実験を行うのだ。
「ごめんね、申し訳ないけれど実験に使わさせてもらうね」
死体にそう告げてから少し目を瞑り彼らの冥福を祈る。
その後2つの死体を強制的に蘇生させる為に以前ダンジョンで手に入れた短剣を彼らに突き刺し再生させる。
短剣については以前に小動物の死体で試しており、死後1日以上経っていると抜けた魂は戻っては来なかった。
やはり時間が経った死体を再生しても魂は帰って来れないようだ。
魂はどちらもすでにいないのでここにいた他の個体同様ただ生命活動をしているだけだ。
とはいえ、彼らの遺体をどうこうするわけではなく、必要なのは彼らの種と卵だ。
それだって本当は申し訳ないのだが、家族、そして友人の為に自分の心を殺して実験に使用する。
闇の住人の死体以前にすでに人の男女の遺体も手に入れており、そちらもすでに蘇生はしている。
もちろん魂はなくただ生命活動をしているだけだ。
魂はないとはいえ、実験として彼らを利用するのだからやはり心は痛む。
だからこそ彼らを利用した実験が終わるまではこの研究室から出る気はないのだ。
そうしてサイリールは実験を始めた。
まずは元となる闇の住人を親個体として、闇の住人同士の子供を作る。
闇の住人同士の場合は数人に一人は人型ではない個体に育つがそれは成長させずに処理する。
実験に必要なのは人型だからだ。
とりあえず純粋な闇の住人を個体Cとして実験を続ける。
最初に個体Cの数体の血液に人間とは違う特殊な情報があるかを調べる。
犬の方の個体は血液中に特別な成分があったが、鳥の方の個体には特になかった。
なので、犬の個体のうち二体で実験をする事にした。
まずは犬の個体の血液を作る元を調べその特殊な成分の情報を消し、血液内からも消し去る。
これは以前ジルヴィアにもした事なので素早く処理できた。
その後、二体の体の時間を1年分程進めてから、種と卵を取り出す。
それを人間の種と卵と掛け合わせ成長させてみる。
結果としてはどちらも闇の住人の姿、つまりは犬の個体へと成長した。
血液を調べると、そちらは特別な成分は消えたままであった。
改良した結果は残ってはいるが、これでは満足行く結果ではない。
更に先程の二体の頭部や手足尻尾などを改造していく。
ほぼ人間と変わらぬ姿になった所で更に1年時間を進める。
これで卵と種の情報は変わっているはずである。
とはいえ、外側から見た目を変えただけなので情報自体は変わっていないだろうが。
見た目の変わった二体の卵と種を使って人間の種と卵を掛け合わせる。
結果は残念ながら最初と同じ結果となり、血液以外は犬の個体である。
そこで次は複製体と女性体の物を使ってみる事にした。
個体Cと掛け合わせ、成長させた結果は全てが人型へと育った。
これはある程度予想はしていたのであまり驚きは少ないのだが、やはりと言うべきか、子供の成長にかかる時間が人と同じだった。
通常闇の住人同士なら6ヶ月でなければならないというのに。
そもそも、人間との場合でも闇の住人の妊娠期間は6ヶ月なのだ。
もしかしたら取り出して育てているせいか、腹の中で育てていないせいかとも一瞬考えたが、個体Cを成長させた時は通常の速度であれば大体6ヶ月だったので、それは関係ないだろう。
どうして自分で作った体とだとここまでの影響を及ぼすのかが分からない。
気を取り直して次に個体Aと掛け合わせてみる。
闇のエネルギーは流れているが、ほぼ人間と変わらない能力を持たない個体がAだ。
その結果はすべてが人型へと成長した。
調べた結果は個体Aと変わらない存在になっていた。
次に個体Aと人間とのハーフである個体Bとその中でも闇のエネルギーが流れていない特殊個体Bを個体Cと掛け合わせてみる。
まずは通常の個体Bとだけ掛け合わせる。
結果としては数体のうち1体が特殊個体Bと同じく闇のエネルギーの流れていない人型が出来た。
本当によく分からない結果になる。
とりあえずその結果はさて置き、特殊個体Bと個体Cを掛け合わせてみる。
この結果にはさらに驚く事になった。
なぜそうなるのかが分からないが、10体のうち2体だけが闇のエネルギーが流れていたが残りの8体は全てそれがなかった。
そこで、闇のエネルギーが流れていない8体のうちの2体を選び、親個体の犬と鳥の闇の住人と掛け合わせてみた。
本来であれば、親個体の方に引っ張られるはずであるが、結果は先程と同じで、全てが人型であり、20体のうち闇のエネルギーが流れていたのは3体だけだった。
その3体も、能力は何一つ持っておらず、闇のエネルギー以外はただの人間と何も変わらなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
151
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる