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後日談2話 ライナーとジルヴィア
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「ぱぱー」
可愛いらしい子供の声がライナーの頭の上から聞こえた。
声の主はライナーとジルヴィアの子供だ。
結局彼らが子供を儲けたのは、ライナーがハンターを引退して肉体を作り替えてからになった。
今はそんな初めて出来た子とリューベックにある遊具施設に向かっている所である。
遊具施設は最近出来た施設で、床や壁が衝撃を吸収する素材で出来ており、子供が転んでも怪我をしないようになっている。
サイリールのオルペの屋敷にあった幼児部屋と同じ素材だ。
そして、遊具施設ではまだ小さい子供、6歳までの子を遊ばせられる施設なのだ。
とはいえ、1歳や2歳と6歳を同じ部屋で遊ばせるのは危険もあるので、区分けがされている。
3歳までの部屋と、4歳からの部屋に分かれているのだ。
この施設ではエアストの所属員が数人と、普通の民が職員として十数人おり、子供を預けて親は買い物に行ったりする事が出来る。
と言っても無料で預かってくれている時間は2時間までではあるが。
そこからは料金が発生する。
子供の数が多い場合は預かれない事もある。
それでも少しだけでも子供と離れて息抜きを出来るというのはありがたいらしく、かなり利用者がいるようだ。
すでに各都市にあり、今後も増やす予定らしい。
今はまだ試験運用らしいが、いずれ親が働いてる間子供を預かるような施設の検討もしているそうだ。
ちなみに、この施設を考えだしたのはセイだったりする。
なので、この施設は国営となる。
ライナーとジルヴィアは今日はここに預けに来たわけではなく子供を遊ばせるために来たのだ。
親が見ている場合は2時間以上いても料金は発生しない。
「本当にセイはすごい施設を作ったわね」
「本当だな。今は親が働いてる間子供を預かる施設なんかも検討してんだろ?」
「そうみたいよ。でも人手が足りなくてまだ難しいみたいね」
「だろうなぁ」
「ぱーぱ!はあく!」
「おう、分かってる分かってる」
肩車をしていた娘がライナーの頭をペシペシと叩き催促をする。
そんな娘にライナーは眦を下げた。
「クスクス。昔のライナーからは考えられないわね。貴方がこんなに子煩悩になるなんて思わなかったわ」
「テレジアは特別だからな。こんなに可愛い子は他にいねぇだろ」
「ぱぁぱ!」
「はいはい、早く行こうなー」
眦を下げて笑うライナーを見てジルヴィアは苦笑した。
とはいえ、別に親ばかをしていても、ライナーはきちんといけない事をしたらしっかり叱るので、ただの親ばかでもない。
遊具施設についたライナーたちは3歳までの子の部屋へ向かった。
部屋へ入ると、中には見知った顔があった。
早くおろせと暴れる娘を肩から下ろしつつ、ライナーはその人物に声をかけた。
「よぉ、レオ。今日は休みか?」
相手はセイの息子でレオだった。
「ああ、ライナーさん。ええ、今日は休みなので、娘を連れて来たんです。妻は仕事でいないんですけどね」
レオは今24歳で、3年前に結婚したばかりだ。
彼はセイに似て優秀で今は城に勤めている。
「そうか。カーリンちゃんも大きくなったな。つってもうちの娘と同い年だけどよ」
「はは。そうですね。テレジアちゃん、いつもうちの子と仲良くしてくれてありがとうね」
レオが自分の娘と遊んでいるテレジアに声をかけた。
「りんちゃんおともらち!ねー!」
「ねー!」
娘達の遊ぶ様子を見つつ、ライナー達とレオは会話をした。
「そういえば、レオ。お前ら、セイを説得してるんだって?」
「ええ。父は子より長生きはしたくないって言うんですが、私たちは父はまだこのヴェルデン帝国に必要な人だと思っているんです」
「まぁそうだなぁ。この施設だって、セイが思いついた事だもんな」
「ええ。それにこの施設以外にも父は色々と思いついてはいるんです。ですが、父ももう50近くです。どうしても時間が足りません」
「そうだな……」
「確かに子が先に死ぬのは辛いです。私も子を持つ親になってそれはとても良くわかります。それでも、それでも私たちは……私は、父には永遠を選択して欲しい」
「イーナはなんて言ってんだ?」
「母は、父が永遠を選んだら、あの人を一人にはしたくないから共に永遠を選ぶとは言ってくれてますが、父を説得はしてくれませんでした」
「そうか。俺としてはなんとも言えない問題だなセイの気持ちもわかるし、お前の気持ちもわかるからな」
「そうですね。父に無理を言っているのは分かってはいるのですが……」
「まぁ、あんま悩み過ぎんなよ。さすがに俺はなんともアドバイスはできねぇけどよ」
「いえ、これは私の我儘なので。有難うございます」
「おう」
「それじゃあ私はそろそろ行きますね。もうすぐ妻が帰る時間なので」
「おう、またな、レオ。カーリンちゃんもまたなー」
「ばいばい」
「りんちゃ、ばいばい」
レオを見送った二人は暫く施設で子供を遊ばせてから帰宅した。
夕食をとり終え、子供が寝た後、二人はソファーに腰かけてセイについて話しをした。
「しかし難しい話しだよな。確かにセイはまだこの国にゃ必要なんだけどよ。実際永遠を選択した俺らからすると、セイの気持ちもわからんでもないよな」
「そうね、難しいわね。私たちは死なないから、どうしても子供が先に逝ってしまうもの。それを思うとやっぱり辛いわ」
「ああ。でもこれは俺たち、サイリールと決めた事だからな」
「ええ、永遠を選べるのは最初の世代だけ」
「そう、俺たちはもちろん、サイリール自身の子供であっても、子供の肉体は作り替えない。例え子供が懇願したとしても、だ。でもまぁそうしないと死なない人間だらけになっちまうからな」
「そうね。寂しいし辛いけれど、それは永遠を選択した者の背負うべき重みね」
「ああ。どれだけ辛くても、俺たちは子供の死を見届ける。だけどジル、俺は辛いからって子供が出来る事を否定はしたくねぇ。先を思うと辛いが、俺は今後もお前と愛し合って出来た子は全員大事に大切に育てていきてぇ」
ライナーの言葉にジルヴィアは笑みを浮かべた。
確かに子の死を見届けるのは辛い。
それでも、ライナーと愛し合って、そしてこの身に宿る新しい命を否定はしたくない。
子の死を見届けるという重みを背負ってでも、この手にライナーとの子を抱きたい。
「ええ、そうね。あの子の、いえこれから出来る子たちの死を見届けるという重みを背負っても、私もあなたとの子供をこの手に抱きたいわ」
二人は見つめ合うと深く深く口づけを交わした。
冷めぬ永遠の愛を誓って。
可愛いらしい子供の声がライナーの頭の上から聞こえた。
声の主はライナーとジルヴィアの子供だ。
結局彼らが子供を儲けたのは、ライナーがハンターを引退して肉体を作り替えてからになった。
今はそんな初めて出来た子とリューベックにある遊具施設に向かっている所である。
遊具施設は最近出来た施設で、床や壁が衝撃を吸収する素材で出来ており、子供が転んでも怪我をしないようになっている。
サイリールのオルペの屋敷にあった幼児部屋と同じ素材だ。
そして、遊具施設ではまだ小さい子供、6歳までの子を遊ばせられる施設なのだ。
とはいえ、1歳や2歳と6歳を同じ部屋で遊ばせるのは危険もあるので、区分けがされている。
3歳までの部屋と、4歳からの部屋に分かれているのだ。
この施設ではエアストの所属員が数人と、普通の民が職員として十数人おり、子供を預けて親は買い物に行ったりする事が出来る。
と言っても無料で預かってくれている時間は2時間までではあるが。
そこからは料金が発生する。
子供の数が多い場合は預かれない事もある。
それでも少しだけでも子供と離れて息抜きを出来るというのはありがたいらしく、かなり利用者がいるようだ。
すでに各都市にあり、今後も増やす予定らしい。
今はまだ試験運用らしいが、いずれ親が働いてる間子供を預かるような施設の検討もしているそうだ。
ちなみに、この施設を考えだしたのはセイだったりする。
なので、この施設は国営となる。
ライナーとジルヴィアは今日はここに預けに来たわけではなく子供を遊ばせるために来たのだ。
親が見ている場合は2時間以上いても料金は発生しない。
「本当にセイはすごい施設を作ったわね」
「本当だな。今は親が働いてる間子供を預かる施設なんかも検討してんだろ?」
「そうみたいよ。でも人手が足りなくてまだ難しいみたいね」
「だろうなぁ」
「ぱーぱ!はあく!」
「おう、分かってる分かってる」
肩車をしていた娘がライナーの頭をペシペシと叩き催促をする。
そんな娘にライナーは眦を下げた。
「クスクス。昔のライナーからは考えられないわね。貴方がこんなに子煩悩になるなんて思わなかったわ」
「テレジアは特別だからな。こんなに可愛い子は他にいねぇだろ」
「ぱぁぱ!」
「はいはい、早く行こうなー」
眦を下げて笑うライナーを見てジルヴィアは苦笑した。
とはいえ、別に親ばかをしていても、ライナーはきちんといけない事をしたらしっかり叱るので、ただの親ばかでもない。
遊具施設についたライナーたちは3歳までの子の部屋へ向かった。
部屋へ入ると、中には見知った顔があった。
早くおろせと暴れる娘を肩から下ろしつつ、ライナーはその人物に声をかけた。
「よぉ、レオ。今日は休みか?」
相手はセイの息子でレオだった。
「ああ、ライナーさん。ええ、今日は休みなので、娘を連れて来たんです。妻は仕事でいないんですけどね」
レオは今24歳で、3年前に結婚したばかりだ。
彼はセイに似て優秀で今は城に勤めている。
「そうか。カーリンちゃんも大きくなったな。つってもうちの娘と同い年だけどよ」
「はは。そうですね。テレジアちゃん、いつもうちの子と仲良くしてくれてありがとうね」
レオが自分の娘と遊んでいるテレジアに声をかけた。
「りんちゃんおともらち!ねー!」
「ねー!」
娘達の遊ぶ様子を見つつ、ライナー達とレオは会話をした。
「そういえば、レオ。お前ら、セイを説得してるんだって?」
「ええ。父は子より長生きはしたくないって言うんですが、私たちは父はまだこのヴェルデン帝国に必要な人だと思っているんです」
「まぁそうだなぁ。この施設だって、セイが思いついた事だもんな」
「ええ。それにこの施設以外にも父は色々と思いついてはいるんです。ですが、父ももう50近くです。どうしても時間が足りません」
「そうだな……」
「確かに子が先に死ぬのは辛いです。私も子を持つ親になってそれはとても良くわかります。それでも、それでも私たちは……私は、父には永遠を選択して欲しい」
「イーナはなんて言ってんだ?」
「母は、父が永遠を選んだら、あの人を一人にはしたくないから共に永遠を選ぶとは言ってくれてますが、父を説得はしてくれませんでした」
「そうか。俺としてはなんとも言えない問題だなセイの気持ちもわかるし、お前の気持ちもわかるからな」
「そうですね。父に無理を言っているのは分かってはいるのですが……」
「まぁ、あんま悩み過ぎんなよ。さすがに俺はなんともアドバイスはできねぇけどよ」
「いえ、これは私の我儘なので。有難うございます」
「おう」
「それじゃあ私はそろそろ行きますね。もうすぐ妻が帰る時間なので」
「おう、またな、レオ。カーリンちゃんもまたなー」
「ばいばい」
「りんちゃ、ばいばい」
レオを見送った二人は暫く施設で子供を遊ばせてから帰宅した。
夕食をとり終え、子供が寝た後、二人はソファーに腰かけてセイについて話しをした。
「しかし難しい話しだよな。確かにセイはまだこの国にゃ必要なんだけどよ。実際永遠を選択した俺らからすると、セイの気持ちもわからんでもないよな」
「そうね、難しいわね。私たちは死なないから、どうしても子供が先に逝ってしまうもの。それを思うとやっぱり辛いわ」
「ああ。でもこれは俺たち、サイリールと決めた事だからな」
「ええ、永遠を選べるのは最初の世代だけ」
「そう、俺たちはもちろん、サイリール自身の子供であっても、子供の肉体は作り替えない。例え子供が懇願したとしても、だ。でもまぁそうしないと死なない人間だらけになっちまうからな」
「そうね。寂しいし辛いけれど、それは永遠を選択した者の背負うべき重みね」
「ああ。どれだけ辛くても、俺たちは子供の死を見届ける。だけどジル、俺は辛いからって子供が出来る事を否定はしたくねぇ。先を思うと辛いが、俺は今後もお前と愛し合って出来た子は全員大事に大切に育てていきてぇ」
ライナーの言葉にジルヴィアは笑みを浮かべた。
確かに子の死を見届けるのは辛い。
それでも、ライナーと愛し合って、そしてこの身に宿る新しい命を否定はしたくない。
子の死を見届けるという重みを背負ってでも、この手にライナーとの子を抱きたい。
「ええ、そうね。あの子の、いえこれから出来る子たちの死を見届けるという重みを背負っても、私もあなたとの子供をこの手に抱きたいわ」
二人は見つめ合うと深く深く口づけを交わした。
冷めぬ永遠の愛を誓って。
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