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さぁ、謎解きゲームの始まりだ
無実か有罪か〜私達の仲間は、人間じゃなくなるのかもしれない〜
しおりを挟む「どうしたよ急に」
バットが手を圭吾くんの背中に添えたまま、素っ頓狂な声を上げた。対して蓮くんの声は真面目だった。
「ここにいる一裕って奴…かず、お前ちょっと出ていけ。…危ないから」
バットが声を張り上げておばさんを呼ぶと、おばさんが大きな懐中電灯を持って一裕を迎えに来て、台所でお菓子でも食べて待っていてくれるかしら、などと言いながら連れて行った。一裕がバットの部屋から出ていったことを確認すると、蓮くんは再びウルフとバットに向き合った。
「あの一裕って奴、将来どうやら宇宙人と恋をして子供を作るみたいなんだ」
「あれま」
バットの手が圭吾くんの背中から離れる。
「俺たち、前に一裕の子供で、地球人と宇宙人の血が混ざった楓っていう男の子に会ったんだ」
ウルフの右眉がピクリと動いた。
「でも、楓は…一裕を暴走させるんだ。なんでかは分からないけれど、後悔や自責の念に襲われるみたいに、あいつ、暴れるだ」
「その楓っていう子は?」
「…地球人の子供に生まれ直すって言って…」
「…死んだか」
「いや、いったん生まれる前の世界に戻っただけだ」
ウルフが何かを思い出そうとしているような表情で、蓮くんの話に耳を傾けていた。
「なあ?」
ウルフがバットを見る。
「そういえばさ、俺らが戦った相手に、別の惑星から来た奴らがいなかったっけ」
バットがハッと目を見開いた。
「そいつら…胸に勲章を付けてた…楓の…形をした…」
楓くんと、楓の形をした勲章。
もし、楓と言う名前を宇宙人である楓くんのお母さんが付けたのであれば、ネーミングセンスが単純すぎる気もするけど、でもきっと、楓くんと言う存在が彼女にとって存在意義そのものだったのかな。
あるいは…楓くんが生まれたから、宇宙人たちは楓くんのために戦い始めたの?
でも、楓くんは宇宙人に虐げらたって言ってた。だけど、楓くんのお母さんが地球人である一裕を愛したように、地球人の血が混ざっていても楓くんのことを愛した地球人もいたんじゃないだろうか。
「いつまでも暗いところに座らせておくのも申し訳ないから、そろそろ部屋から出ようぜ、バット」
バットとウルフを先頭に私たちは部屋を出た。真っ暗な階段を光の玉を頼りに上っていく。
「お、夜だ」
バットが私たちをリビングに案内する。
ポチ
バットがリモコンで電気を点けた。久しぶりに浴びた電気の照明が眩しい。
「俺の母さんなら、明日の朝まで仕事でいないけど、君たちはどう?そろそろ帰った方がいいよね?」
バットがリモコンで玄関の電気も点けた。
「いや、俺たちの親も長期出張でいないから」
蓮くんがそういうと、バットは玄関の電気を消した。そしてもう一回点けた。
「ウルフ、お前は?」
「親には俺が吸血鬼だっていうことを打ち明けてある。夜になっても帰ってこないからって、そんなに心配しないだろ」
バットはまた、玄関の電気を消した。
「ねえねえねえ」
バットがリビングの大きなソファに、ボフンと腰を下ろした。
「教えてよ、一裕のこと。宇宙人のこと」
私たちもまだ、答えは探している状態。だけど、この人たちが鍵になってくれるかもしれない。私たちも、一裕のことが知りたい。
「じゃあ、まずは…」
そう言って蓮くんは、初めて私たちが楓に出会ったこと、楓くんが教えてくれた残酷な過去のこと、一裕が「楓」という名前を耳にするたびに父親としての人格が現れて豹変すること、そして、私たちが先日会いに行った、一裕の彼女「翠さん」が例の宇宙人かもしれないことを、淡々と話し出した。
「そうねえ…」
バットがソファの背もたれに背中をもたれさせた。
「でも、なんでその一裕って奴が吸血鬼になりかけてるんだ」
「それを、お前たちに相談したいって思ってたんだ」
バットが鼻の下を人差し指でこすりながら言う。
「間違いなく、俺ら以外の何かが介入してるな。でも、何が、なんで…」
「吸血鬼って、さっきも言ったけど、ほとんどが罪を犯した人間なんだもともとは」
静かに蓮くんの話に耳を傾けていたウルフが口を挟んだ。
「もしかしたらあいつも、あの国で罪を犯したんじゃないか」
みんなが一斉にウルフに視線を向けた。
「たとえば、あの国のルールを破ったとか…あのルールに従うには…優し過ぎたんじゃないか」
「でもさあ」
バットが、鼻の下をこすっていた人差し指を太ももに置いた。鼻の下が少し赤くなってる。
「俺たち、生まれた時から吸血鬼だったじゃん」
「だから…俺も一裕のことが不思議でならないんだ…」
「…あれ、例の一裕って奴、どこ行った?」
バットがソファにもたれたまま顔をあっちこっちに向けて一裕を探し始めた。蓮くんも一裕に電話をかけた。
ツーツーツー
一裕は電話に出ない。圭吾くんが玄関に一裕の靴があるかどうか確認しに行った。
「一裕お兄さんの靴、あるよ」
圭吾くんの声が玄関から廊下を伝ってリビングに響く。
「ええ…どこ行ったんだ」
バットが玄関に向かう。
「おいおい、俺らこんなに靴、汚く脱いだか?」
みんなでバットと圭吾くんがいるところに向かう。玄関の靴は無造作に脱ぎ捨てられたような形で転がっていた。私の靴の片方は蓮くんの近くに転がっているけど、もう片方は靴箱の下にある。確かに靴を揃えてきたはずなのに。私の後ろにいたウルフがわずかに息を吸ったのが聞こえた。
「あいつ、とうとう、吸血鬼になったんじゃ」
蓮くんの顔が青ざめる。
「…やっばいねー」
バットが玄関のドアを開ける。匂いを嗅ぐような素振りを見せる。
「…さっきより…匂いが強くなっちゃったね…」
蓮くんがバットを押しのけて玄関を飛び出す。
ガシャン
玄関に立てかけられていたバットの自転車が倒れた。
「かずは今、どこにいる!」
蓮くんの目が血走っていた。自分の友達が、人を殺めるかもしれない。自分の友達が、この世界でも罪を犯してしまうかもしれない。蓮くんの血走った目がそう言っていた。
キキッ
ウルフがコウモリの姿に戻っていた。
「こっち」
ウルフが私たちを一裕のいる場所に案内するように飛び去っていく。その後ろを蓮くんが全速力で走っていく。
「君たち」
バットがさっき、蓮くんの倒した自転車を起き上がらせた。
「俺の後ろに乗んな」
そう言ってバットは圭吾くんとりこちゃんを後ろに乗せて勢いよく走りだす。りこちゃんは何も理解できていないような表情。圭吾くんの額から、汗が一筋流れたのが光って見えた。
「女子高生さん」
バットが自転車を漕ぎながら私の方を見て叫んだ。
「悪いけど、君は走っ…やっぱ、ダメ」
バットがその場で自転車から降りて、私を手招きする。
「君が自転車を漕いでくれる?」
私は少し座高の高いサドルにまたがった。
「若い女の人の汗の匂いって、刺激しちゃうのよ」
私はウルフと蓮くんを自転車で追いかける。その後ろをバットが走ってついてくる。どれだけ走り続けても、全く疲れた素振りを見せない。息も乱れていない。これが、吸血鬼なのか。ウルフが連れて行ってくれたのは、意外にも一裕の家だった。
「ここが、匂いの源だ」
キキッ
ウルフは空中でポンと人間の姿に戻ると、スタっと地面に軽々と降り立った。蓮くんが一裕宅の玄関の戸を片手で押した。蓮くんはヒューヒューと息を切らせながら、肩を上下させている。
「かず…」
玄関には鍵がかかってなかった。
「入るぞ…」
蓮くんの声は、一裕に呼びかけているようにも、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
「お前…何をやってんだ」
扉の向こうで蓮くんの戸惑った声がする。
「開けてみようか」
バットが扉に手を触れた。
「ウルフ、子どもたちのこと、しばらく見てやってくれ。子供には刺激の強すぎる光景が広がっているかもしれないからな」
バットは静かに扉を押した。
「女子高生さん、名前、なに?」
「…佳奈美」
「佳奈美さん、覚悟決めや」
そう言ってバットは扉を開けた。圭吾くんとりこちゃんが不安な面持ちで、ウルフさんに肩を抱き寄せられながら私たちを見守っていた。
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