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愛の罪
王様とタコパ!!
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一裕と彗星は数分くらい経って、たこ焼きの具材決めに加わった。台所のテーブルでは、溶けるチーズとプチソーセージ、タコとエビが一口サイズに切られたものが別々のボウルに入れられて準備されている。一裕がスマホでおススメのたこ焼きの具材を調べ始めた。
「ゔぇッ?!」
一裕が口を歪めてスマホの画面から顔を遠ざけた。
「イチゴ入れてる人いるんだけど」
チクタク…チクタク…
「変わった趣味の人もいるもんだ」
峻兄さんがアドルフを連れて台所にやってきた。
「お前ら、トッピングは何にするか決めてあるのか?」
10分くらい話し合った結果、具材はかなり凝っているからトッピングは普通に鰹節やマヨネーズ、紅しょうがを使うことにした。
「よっこいせっと」
蓮がシンクの真上にある扉からタコ焼き器の箱を両手で取り出して、ボウルをテーブルの端の方に寄せると、空きスペースにその箱を置いた。箱には、青い鉢巻を巻いたタコがたこ焼きを食べている絵が箱一面に大きく印刷されている。
「奇抜な発想をするもんだね、人間は」
サファイヤが箱からたこ焼き器を取り出して、箱はもとあった扉の中に戻した。
佳奈美さんと彗星は、二人並んでお喋りしながらニンジンを小さなサイコロ状に刻んでいて、一裕がジャガイモを茹でている。
蓮はスプーンを右手に持って、タコ焼きの具材が入ったものとは更に別のボウルを用意して待っている。たこ焼きだけだと飽きそうだし、野菜も足りないからと言ってポテトサラダも作ることにしたのだ。
「マヨネーズはサラダで使うから、タコ焼きにかけるのはこっちにしてみようか」
バットがそう言って冷蔵庫から取り出したのは、和風ネギ塩ソース。前に、佳奈美さんたちと出会う前に二人で焼き肉をした時に買ってきた残りのやつだ。賞味期限を見ると、来週までになっている。
「…ラルフ、地球の夜は明るいのだな」
アドルフが台所の照明を目を細めながら見ている。楓色の瞳に白い照明が反射している。
「ええ、地球は楽しい場所です」
エメラルドがたこ焼きの素をたこ焼き器に慎重に流し込みながら返事をした。
「夜は明るければ良いってもんでもないけどね」
バットが蓮と一緒に茹で上がったジャガイモに、時折マヨネーズを加えて潰しながらアドルフに答えた。
「明るすぎると、星が見えないもん」
俺は台所の窓の外に広がる夜景に目をやった。白い星が粉砂糖みたいに夜空に散っている。
俺とバットは中学三年の時に、修学旅行で大都会に行った。田舎では見られない物が沢山あって、それはそれで楽しかったのだが、ホテルの部屋から見える夜景は人工的に明るかったのだ。
ビルの光。
信号機の光。
車のライト。
それらが夜の空を白く照らしていた。星は一つとして見えなかった。
「暗いから光が綺麗に見えるんだよ。明るいところにいたら、光は光じゃなくなる…っていうか、あんまり電気は見ない方が良いよ。目に悪いから」
アドルフはバットにそう言われると、照明から目を逸らして何度か瞬きをした。
「兄上はどの具材がよろしいでしょうか」
エメラルドがバットに具材の入ったボウルを見せながら尋ねて、アドルフはそれら一つ一つを凝視していく。
「全て試してみたいのだが」
「もちろんです、兄上」
エメラルドはアドルフに一番近い列のところに、全ての具材を少しずつタコ焼きの素の上に軽く乗せていった。
タコ焼きがプクプクと焼けてきた頃、完成したポテトサラダを小さな皿に盛り付けて、一人一人の席のところに並べていった。
「俺、不器用で…」
蓮がジャンケンに勝ち残ってしまって、タコ焼きをクルクルと回す係りになったのだが、蓮が回したタコ焼きは見事に全て歪な形になる。適材適所とは正反対だ。
「空気が抜けた風船みたいだな、これ」
出来上がったタコ焼きの1つをバットが箸で掴んで、ネギ塩ソースをチョンチョンと付けて口に入れた。
「美味いけど」
蓮はまだタコ焼きを回すのに苦戦している。ポテトサラダを食べながら、一裕がもどかしそうに蓮の手つきを見ている。
「蓮、俺に貸せ」
一裕が蓮の席に移動して、菜箸を受け取ると、タコ焼きを機械みたいな速さで綺麗にタコ焼きを回していった。
「…お前、タコ焼き屋でバイトしたら?」
一裕は誰かがタコ焼きを食べ終えると、自分も食べつつ本人の希望も聞いて手際よくタコ焼きをその人の皿に乗せていく。
「兄上、お味は如何でしょうか」
アドルフがタコ焼き一つ一つを目を瞑ってよく味わいながら時間を掛けて食べている。始めに定番のタコ、次にエビ、そしてソーセージとチーズ。
「ラルフよ、地球の食べ物はこうも温かいものか」
「ええ、左様でございます」
俺はエメラルドの返事を聞いて思い出したのだが、昨日獣神国に行った時、妙に寒かった記憶がある。冬にわざわざ冷房をかけているような感じ。あ、なるほどな。エメラルド達が狼男なのは、その寒さから身を守るため。要は、エメラルド達の獣毛は服代わりなのだ。おそらく、獣神国の食事はどれも冷たいのだろう。何を食べているかは全く知らないが。
「これが命の温もりというものか」
命の温もり。
アドルフはタコ焼きの熱さを、そう表現した。
俺はちょうどその時、エビが入ったやつを噛んでいる途中だった。舌の先を細かく砕かれたエビの身体がコロコロと転がる。
それは、間違いなくエビの死骸。
そう聞くと途端に食欲を失うが、俺らが食べているものの全ては、何かしらの死骸。
ポテトサラダだって、ジャガイモとニンジンが死んだもの。
ソーセージだって、豚の死骸の一部。
タコだってタコの死骸。
俺らが食べているものは、死骸だらけ。
だが、それらの死骸は間違いなく生きていたのだ。
人間ほど発達はしていない動物であっても、何かしらの思いを遺していったはずだ。
それが、命の温もり…。
俺はエビのタコ焼きを飲み込んだ。「命の温もり」が俺の身体を優しく包んだ。
「何か少し物足りないねえ」
俺達はタコ焼きを全て食べ切った。バットが冷蔵庫の横の段ボールにお菓子の袋が入っていないかを確認しに行ったが、無かったようで口を尖らせて席に戻ってきた。峻兄さんと蓮がポテトサラダの入っていたお皿を全員分洗ってくれている。
「あ、それなら」
エメラルドが冷蔵庫に向かうと、何か茶色いものが詰まった薄めのタッパーと、薄黄緑色の何かが詰まった色違いのタッパーを取り出して、俺たちの前に置いた。エメラルドがその蓋を開けると、チョコと抹茶の香りがフワリと立ち昇った。
「ケーキ?」
「そう!」
エメラルドは、まな板にタッパーから取り出した薄い直方体状のケーキを一口サイズに切り分けていく。佳奈美さんがデザート用のピンクや水色の小さなお皿を食器棚から全員分取り出した。
「普通のチョコと抹茶チョコを湯煎で溶かして牛乳を入れながら混ぜて、冷蔵庫で冷やすと出来るんだ。動画で見た」
俺は抹茶が少し苦手だから、チョコだけ頂くことにした。まろやかなミルクの優しい甘さにチョコの風味が仄かに見え隠れするような、控えめな味わい。
これ…圭吾たち、喜んだだろうな…。
「ゔぇッ?!」
一裕が口を歪めてスマホの画面から顔を遠ざけた。
「イチゴ入れてる人いるんだけど」
チクタク…チクタク…
「変わった趣味の人もいるもんだ」
峻兄さんがアドルフを連れて台所にやってきた。
「お前ら、トッピングは何にするか決めてあるのか?」
10分くらい話し合った結果、具材はかなり凝っているからトッピングは普通に鰹節やマヨネーズ、紅しょうがを使うことにした。
「よっこいせっと」
蓮がシンクの真上にある扉からタコ焼き器の箱を両手で取り出して、ボウルをテーブルの端の方に寄せると、空きスペースにその箱を置いた。箱には、青い鉢巻を巻いたタコがたこ焼きを食べている絵が箱一面に大きく印刷されている。
「奇抜な発想をするもんだね、人間は」
サファイヤが箱からたこ焼き器を取り出して、箱はもとあった扉の中に戻した。
佳奈美さんと彗星は、二人並んでお喋りしながらニンジンを小さなサイコロ状に刻んでいて、一裕がジャガイモを茹でている。
蓮はスプーンを右手に持って、タコ焼きの具材が入ったものとは更に別のボウルを用意して待っている。たこ焼きだけだと飽きそうだし、野菜も足りないからと言ってポテトサラダも作ることにしたのだ。
「マヨネーズはサラダで使うから、タコ焼きにかけるのはこっちにしてみようか」
バットがそう言って冷蔵庫から取り出したのは、和風ネギ塩ソース。前に、佳奈美さんたちと出会う前に二人で焼き肉をした時に買ってきた残りのやつだ。賞味期限を見ると、来週までになっている。
「…ラルフ、地球の夜は明るいのだな」
アドルフが台所の照明を目を細めながら見ている。楓色の瞳に白い照明が反射している。
「ええ、地球は楽しい場所です」
エメラルドがたこ焼きの素をたこ焼き器に慎重に流し込みながら返事をした。
「夜は明るければ良いってもんでもないけどね」
バットが蓮と一緒に茹で上がったジャガイモに、時折マヨネーズを加えて潰しながらアドルフに答えた。
「明るすぎると、星が見えないもん」
俺は台所の窓の外に広がる夜景に目をやった。白い星が粉砂糖みたいに夜空に散っている。
俺とバットは中学三年の時に、修学旅行で大都会に行った。田舎では見られない物が沢山あって、それはそれで楽しかったのだが、ホテルの部屋から見える夜景は人工的に明るかったのだ。
ビルの光。
信号機の光。
車のライト。
それらが夜の空を白く照らしていた。星は一つとして見えなかった。
「暗いから光が綺麗に見えるんだよ。明るいところにいたら、光は光じゃなくなる…っていうか、あんまり電気は見ない方が良いよ。目に悪いから」
アドルフはバットにそう言われると、照明から目を逸らして何度か瞬きをした。
「兄上はどの具材がよろしいでしょうか」
エメラルドがバットに具材の入ったボウルを見せながら尋ねて、アドルフはそれら一つ一つを凝視していく。
「全て試してみたいのだが」
「もちろんです、兄上」
エメラルドはアドルフに一番近い列のところに、全ての具材を少しずつタコ焼きの素の上に軽く乗せていった。
タコ焼きがプクプクと焼けてきた頃、完成したポテトサラダを小さな皿に盛り付けて、一人一人の席のところに並べていった。
「俺、不器用で…」
蓮がジャンケンに勝ち残ってしまって、タコ焼きをクルクルと回す係りになったのだが、蓮が回したタコ焼きは見事に全て歪な形になる。適材適所とは正反対だ。
「空気が抜けた風船みたいだな、これ」
出来上がったタコ焼きの1つをバットが箸で掴んで、ネギ塩ソースをチョンチョンと付けて口に入れた。
「美味いけど」
蓮はまだタコ焼きを回すのに苦戦している。ポテトサラダを食べながら、一裕がもどかしそうに蓮の手つきを見ている。
「蓮、俺に貸せ」
一裕が蓮の席に移動して、菜箸を受け取ると、タコ焼きを機械みたいな速さで綺麗にタコ焼きを回していった。
「…お前、タコ焼き屋でバイトしたら?」
一裕は誰かがタコ焼きを食べ終えると、自分も食べつつ本人の希望も聞いて手際よくタコ焼きをその人の皿に乗せていく。
「兄上、お味は如何でしょうか」
アドルフがタコ焼き一つ一つを目を瞑ってよく味わいながら時間を掛けて食べている。始めに定番のタコ、次にエビ、そしてソーセージとチーズ。
「ラルフよ、地球の食べ物はこうも温かいものか」
「ええ、左様でございます」
俺はエメラルドの返事を聞いて思い出したのだが、昨日獣神国に行った時、妙に寒かった記憶がある。冬にわざわざ冷房をかけているような感じ。あ、なるほどな。エメラルド達が狼男なのは、その寒さから身を守るため。要は、エメラルド達の獣毛は服代わりなのだ。おそらく、獣神国の食事はどれも冷たいのだろう。何を食べているかは全く知らないが。
「これが命の温もりというものか」
命の温もり。
アドルフはタコ焼きの熱さを、そう表現した。
俺はちょうどその時、エビが入ったやつを噛んでいる途中だった。舌の先を細かく砕かれたエビの身体がコロコロと転がる。
それは、間違いなくエビの死骸。
そう聞くと途端に食欲を失うが、俺らが食べているものの全ては、何かしらの死骸。
ポテトサラダだって、ジャガイモとニンジンが死んだもの。
ソーセージだって、豚の死骸の一部。
タコだってタコの死骸。
俺らが食べているものは、死骸だらけ。
だが、それらの死骸は間違いなく生きていたのだ。
人間ほど発達はしていない動物であっても、何かしらの思いを遺していったはずだ。
それが、命の温もり…。
俺はエビのタコ焼きを飲み込んだ。「命の温もり」が俺の身体を優しく包んだ。
「何か少し物足りないねえ」
俺達はタコ焼きを全て食べ切った。バットが冷蔵庫の横の段ボールにお菓子の袋が入っていないかを確認しに行ったが、無かったようで口を尖らせて席に戻ってきた。峻兄さんと蓮がポテトサラダの入っていたお皿を全員分洗ってくれている。
「あ、それなら」
エメラルドが冷蔵庫に向かうと、何か茶色いものが詰まった薄めのタッパーと、薄黄緑色の何かが詰まった色違いのタッパーを取り出して、俺たちの前に置いた。エメラルドがその蓋を開けると、チョコと抹茶の香りがフワリと立ち昇った。
「ケーキ?」
「そう!」
エメラルドは、まな板にタッパーから取り出した薄い直方体状のケーキを一口サイズに切り分けていく。佳奈美さんがデザート用のピンクや水色の小さなお皿を食器棚から全員分取り出した。
「普通のチョコと抹茶チョコを湯煎で溶かして牛乳を入れながら混ぜて、冷蔵庫で冷やすと出来るんだ。動画で見た」
俺は抹茶が少し苦手だから、チョコだけ頂くことにした。まろやかなミルクの優しい甘さにチョコの風味が仄かに見え隠れするような、控えめな味わい。
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