『狭間に生きる僕ら 第二部  〜贖罪転生物語〜 大人気KPOPアイドルの前世は〇〇でした』

ラムネ

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思春期真っ最中♥

生者の世界に戻り、早速迷子になりました

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「大変長らくお世話になりました」
峻兄ちゃんが、合宿所の玄関で中村さんと夜桜さんに深々と頭を下げている。私達もそれに倣った。

朝食を済ませた後、私達は合宿所を去ることになった。私達がここに来た時に来ていた服は、合宿所で働いている狐のスタッフの人達が丁寧に洗ってくれた。私達はそれぞれ部屋で自分の服に着替えた。着心地が良かったし何となく芳香剤のような良い香りもした。

『いえ、こちらこそ。貴方がたと出会えて、大変貴重な体験が出来ました』

中村さんと峻兄ちゃんが、ペコペコと頭を下げあっている。

『生者の皆様のお迎えに上がりました』

背後から、中年男性の低い声がした。振り向くと、そこには、よく見るような駅の車掌さんみたいな制服に身をまとった男性が、私たちの方を見て立っていた。

『繋ぎ駅の電車で、皆様を生者の世界にお送りいたします』

男性はそう言って、私達に頭を下げた。

「瀬奈ちゃんも唯華ちゃんもバイバイ。りこちゃん、またね。皆で待ってるから」

沢山の火の玉たちが、本来なら学校にいるべき時間なのに、特別に休みにしてもらって私達を見送りに来てくれた。その中には、私と同じ部屋だった3人の火の玉もいた。

『うん!バイバ~イ!!』

りこちゃんに続いて、火の玉たちから同じようにお別れの言葉が次々と口々に続いた。ウルフは、誰よりも寂しそうに、青い火の玉と緑色の火の玉を両手に乗せて、何やら話しかけていた。

「ウルフ、そろそろ」
「…うん。じゃあな」

ウルフは、名残惜しそうに2つの火の玉を、火の玉の群れに戻した。

『皆様、こちらへ』

私達は火の玉達に背中を向け、車掌さんに導かれ、遥か遠くにある繋ぎ駅を目指して歩いた。

『バイバ~イ!』
『また会おうね~!』

背後から、火の玉たちの元気な声が聞こえる。ウルフが、何度も振り返りながら、大きく火の玉たちに手を振って歩く。


『ママー!パパー!』


その声に、私の前を手を繋いで歩いていた彗星さんと一裕が、急ブレーキが掛かったように立ち止まり、2人揃って後ろを振り向いた。私もそれに釣られるように、振り返った。火の玉たちは、遠くでキラキラと眩しく、各々の光を灯しながら輝いている。その先頭に、楓色の火の玉がいた。

『僕が生まれたら、いっぱい遊んでねー!』

楓くんは、声が枯れるくらいに叫んだ。


子供たちの魂って…綺麗だな。


私は、火の玉たちの彩りを見て、自分が死んだら何色に輝けるのだろうかと思いを馳せた。



『偶にいらっしゃるんですよ。生きてるのにここに来てしまう人がね』

繋ぎ駅に着いて、私達は古い電車に乗せられた。蓮くんの真隣に座るのは少し恥ずかしくて、私は人一人分の隙間を開けて蓮くんの左隣に腰を下ろした。電車は1両しかなかったが、私達が全員乗るには十分な広さだった。

『生者の世界に戻れますからね。ご安心を。それでは、出発いたします』

男性がそう言って運転席に座ると、電車がゆっくりと発車した。すると間もなく、電車の窓の外の風景が夜中みたいに真っ黒になった。

「あ、これ。俺が経験したやつ」

ウルフだけが、何かを既に知っているという表情で、真っ暗な窓に映る自分の顔を見ていた。

「佳奈美さんと彗星は、あの日、車の中で既に眠ってしまってて。車の外が突然真っ暗になったと思ったら、他の皆も突然死んだように眠り始めた。俺だけが最後まで起きていた。これは…あの世とこの世の境目だ」

電車は走っているのに、揺れることもなく、音を立てることもなく、静かにその暗闇を駆け抜けていく。

「でも、俺たち今、全然眠くないね。何でだろ。まぁ、別に、そんなこと良いか」

バットがウルフの隣で脚を大きく広げ、電車の照明を見あげながらそう言った。

「佳奈美、こっちおいで」

蓮くんが、自分の隣の空間を指差し、私の隣に座るよう促す。向かいの席には、彗星さんと一裕が、お互いにもたれ合いながら目を瞑って仮眠を取っていた。その2人の隣に座っているサファイヤの視線が、私と蓮くんに向けられている。サファイヤは、私がサファイヤを見ていることに気が付くと、顎をクイッと前に出し、蓮くんの左隣に座ったらどうだと言うような仕草を見せた。

私は、ズリズリっとお尻をずらし、蓮くんとの間に1センチくらいの隙間を開けて座った。

「…っっ?!」

蓮くんが私の肩に腕を回し、私の身体を自分の身体にピタリとくっつけた。蓮くんの温もりが、脇腹から伝わる。心臓が胸を打つ音。私のものなのか、蓮くんのものなのかはよく分からなかった。昨晩の夢の記憶が、鮮やかな映像となって私の脳裏を過る。

「サファイヤ」
「ん?」

蓮くんは私に腕を回したまま、向かいに腕を組んで座っているサファイヤに声を掛けた。

「お前のその記憶を見る能力って、いつもの話?それとも、意識的に見るもん?」
「意識的に見るもんに決まってるでしょ。プライバシーもクソも無いじゃん、全部見えてきちゃったら」

『生者の世界に着きました』

電車内をアナウンスが流れた。

私達はものの数分で、死者の世界と生者の世界の境目を越えてしまった。とは言っても、電車の外は真っ暗のまま。

『生者の世界の時刻ですと、ただいま夜中の3時です』

そうか。

確か中村さん、死者の世界と生者の世界だと時間の進み方が違うって教えてくれた。

となると、今は多分、4日前の夜中の3時?

…ん?3日前?

よく分からなくなってきた。

「なぁなぁ、彗星。俺らヤバくない?運転手さん、あの後どうしたろ」
「あ!!どうしよう」

私達は、名前は忘れたけど、あるお寺に行きたくて、彗星さんの運転手さんに車を運転してもらっていた。私達は思いもよらず、死者の世界に行った。運転手さんは、生者の世界に留まったまま。突然車から私達が姿を消してしまって、必死になって探し回っているはず。そうしたら当然、彗星さんの家にも連絡が行って、きっと一裕の家にも、そして蓮くんの、そして私の…というふうに、私達が行方不明になったことが親たちに知られてしまう。戻ったとしても、何処にいたと説明したら良いのだろうか。

「うわあ!凄!」

エメラルドが、自分の身体を指差してそう叫んだ。

「透けてるよ」
「え?!」

私はすぐに、自分の身体を見た。私の身体は、まるで幽霊そのものみたいだった。足はあるけれど、身体が透けていた。言われてみれば、体重もあまり感じない。

「要は、幽体離脱ってことじゃない?」

バットがそう言った時、電車の扉がガシャンと鈍い音を立てて開いた。そして、バットは、フワフワと浮かぶように電車を降りていった。

「俺たちの身体は多分、車の中にあるはず。どちらにせよ、運転手さんには迷惑かけるけど。今から探しに行こうよ、俺たちの身体を」


『ご乗車有難うございました』

私達全員が電車を降りたのを確認すると、車掌さんはそう言って、電車ごと風に吹かれた砂のように姿を消していった。

周りを見渡すと、見慣れたものが夜の暗闇に静かに佇んでいた。マンホール。ガードレール。電柱。道端の雑草。夏の虫の鳴き声もする。空には、白い月も静かに浮かんでいる。

「あのさ…皆に聞きたい」

ウルフが、白い月を僅かに隠している灰色の雲を見あげながら、ポツリと呟いた。辺りが静かすぎる為か、ウルフの声ははっきりと耳に届いた。

「ここが何処か分かる人…?」

その問いに答えることが出来た者は、誰一人としていなかった。
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