僕らの青

MA

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第1章:出会いの青

10

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 ただ悶々と「玲央」と呼ばれたその青年のことを脳内で反芻していた。

「――って、颯真もそう思うよね!?」

 突然、女親子の会話の矛先が颯真に向かう。先程まで蚊帳の外で、別の事に思考を割かれていた颯真は、お手本のように豆鉄砲を食らった。

「……なんの話?」
 
「だからー、付き合うならやっぱり、父さんみたいなありきたりなサラリーマンじゃなくてさ、なんつーか、オーラがあって刺激的な人?の方が良くない?」
「いやいや、将来的には堅実に家庭を支えてくれる男性の方が素敵よ?颯真も父さんと兄ちゃんを見習ってよね!」

「いや、硬いよー母さん!」
「なんですって!」

 ぎゃいぎゃいと、また女同士の論争に戻ってしまった2人を眺めながら、颯真は物思いにふける。でも確かに――

「――刺激的な人って、気になるよね」

 ポロッと、颯真の口から言葉が飛び出す。今度は、母と姉の2人が豆鉄砲を食らう番だった。
 らんらんと目を輝かせる姉と、青ざめる母。
 颯真は上の空で、考えていることが口からこぼれ落ちたことに気付いていなかった。

「そろそろ部屋戻るね。」
「え、あ、颯真……」

 混乱した様子の母に目もくれず、颯真は立ち上がって、ぼんやりとした表情のまま自室へと向かう。
 背後から聞こえてくる、姉の「ちょっと、颯真ぁ――!?」という声も、颯真の耳には届いていないようだった。

 自室に戻ると、青白い月明かりが室内を照らしている。颯真は、電気も付けず、ベッドの上に腰掛けた。

 ああ、お風呂に入らないと。
 それから課題をして、テスト勉強に明日の準備もしないと。

 そんな思考も、すぐに頭の隅に追いやられてしまう。

 ――ああいう人を“ミステリアス”と形容するんだろうな。
 所作のひとつひとつがどこか都会的で洗礼されていて、おどけたりからかったりしているようで、どこか哀愁を漂わせている。月明かりに照らされる笑顔と、ふわりと纏う匂いも、頭から離れない。

 風呂や明日の準備を済ませて、颯真はベッドの中に入る。勉強は……全く手につかなかった。眠れる気配もしない。

「……なんなんだよ、もう。」

 呟きながら、寝返りを打って目を閉じる。
 落ち着かない気持ちのまま、颯真は静かで不安定な夜に沈んでいった――。
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