僕らの青

MA

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第5章:眩い青

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 玲央が顎で示す。
 颯真が新しい紙を取って、ペンを走らせる。
 その横顔を、玲央はじっと見ていた。

 真剣に文字を書く颯真の姿。
 額にかかる前髪が、汗で少しだけ張りついている。
 静かな集中の時間。

 玲央の視線に気づいて、颯真は顔を上げた。

「……なんですか」
「いや。やっぱり、真面目だなって」
「褒めてます?」
「もちろん」

 玲央が笑う。
 その笑顔が、夏の光に溶けていくように柔らかかった。

 涼がわざと咳払いをして、空気を壊した。

「はいはい、青春だなぁ」
「ちょ、やめろって」
「いやぁ、見てるだけで眩しい」

 冗談めかした声。
 けれど、その言葉に込められたものを、颯真は聞き流せなかった。

 ――眩しい。

 確かに、今この瞬間は眩しかった。
 窓の外の夕空が、群青と橙の境目で揺れている。
 その光の中に、三人の笑い声が溶けていく。

 涼の無邪気な明るさと、玲央の穏やかな笑み。
 どちらも好きだった。
 でも、胸の奥を焦がすように熱くするのは――玲央の方だった。

 言葉にならないその想いを抱えたまま、颯真はそっとノートを閉じた。

 夕暮れの光が、机の上のペンを青く照らしていた。

 ◇ ◇ ◇

 箪笥の奥から母に浴衣を出してもらった。
 皺を伸ばすアイロンの音。
 薄い藍色の布に触れるたび、心臓が小さく跳ねた。
 勉強会の後、涼が発した「花火大会」の単語に、微かに興味を示していた玲央を思い出す。
 
 ――明日、もしまた会えたら。
 
 そんなことを考える自分に気づいて、慌てて首を振る。
 “期待するな”と言い聞かせながらも、指先は震えていた。

 ◇

 夕暮れが町を金色に染めていた。
 どこからか、太鼓の音と人のざわめきが聞こえてくる。 

「ほら、行くぞ!」

 涼が先に走り出す。
 颯真は浴衣の裾を直しながら、少し遅れて後を追った。

「そんな急がなくても、花火は逃げないって」
「屋台は逃げる!」
「意味わかんねーよ」

 笑いながら歩く。
 アスファルトの上に、提灯の光が波のように揺れていた。
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