僕らの青

MA

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第6章:曇る青

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 体育館のざわめきは、夏の終わりの蝉の声よりも賑やかだった。
 ステージでは演劇部の照明が点滅し、外では焼きそばと綿あめの匂いが混ざっている。
 笑い声、カメラのシャッター音、スピーカーのハウリング。
 そのすべてが、文化祭という一日の“熱”を作っていた。

「高瀬ー!こっちこっち!」

 クラスメイトの声に振り返る。
 出し物の看板を立て直しながら、颯真は軽く手を振った。
 Tシャツにはクラスカラーの青いペイント。
 腕に滲む汗が、光を反射してきらりと光る。

「焼きそば完売!次はドリンクー!」

 涼の声が響く。
 笑って返そうとしたとき――ざわ、と空気が変わった。

「……お、きたきた!玲央さーん!」

 耳に届いたその名前に、颯真は反射的に顔を上げた。
 人混みの向こう、屋台の陰から銀色の髪が風に揺れる。
 どこにいても目立つその姿。
 玲央が、まるで観客のように微笑んで立っていた。

「玲央、さん……?」

 声にならないつぶやき。
 涼がにやついた顔で彼の肩をつつく。

「こないだ偶然会ってさ。呼んどいたぞ」

 「いやー、相変わらずモデルみてぇだな」と腕を組んで呟く涼。
 颯真は、目の前の幻のような光景に硬直していた。

 そのとき、玲央と目が合った。
 ゆっくりと歩み寄ってくる。
 笑みは穏やかで、まるで“訪問”ではなく“登場”だった。

「やぁ、颯真。やっと見つけた」
「な、なんでここに……」
「気分」

 いつもの調子。
 だけど今日は、その言葉がやけに響いた。

 玲央が周囲を見回し、クラスメイトたちの視線を軽く受け流す。
 その動作ひとつで、空気が一段階ざわめいた。

 「え、誰?」「颯真の兄?」「イケメンすぎない?」
 そんな囁きが、熱気の中を駆け抜けていく。

 そして――。

「恋人です」

 軽く笑いながら、玲央が言った。
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