ステータスなしの元人気メンタリスト、異世界の最強ドラゴンをお手だけで服従させる~目を見ただけで思考が読めるので、魔法使いが詠唱してくれません

マーマー

文字の大きさ
17 / 91

第2章第9節 決勝戦、そして新たなる脅威

しおりを挟む
 学園祭最終日、クラス対抗魔術大会決勝戦。
 闘技場は、これまでにない熱気に包まれていた。
 決勝の舞台に立つのは、学園最強と謳われるSクラスのエリートチームと、前代未聞の「落ちこぼれ」チーム、特別クラス「廃棄物処理場」だ。

 観客席は真っ二つに割れていた。
 エリートを応援する貴族たちと、ガストンたち「下克上」の体現者に熱狂する平民たち。
 その喧騒の中で、レン・クロウリーは静かに腕を組んで立っていた。
 内心は(やべえ、胃が痛い。トイレ行きたい)だが、顔には「余裕の賢者」の仮面を張り付けている。

「……いよいよですね、レン様」

 セシリアが緊張した面持ちで呟く。

「ククク……。我が師匠の『駒』が、世界の理を書き換える時が来たようだ……」

 アリアも興奮を隠せない様子だ。

「……心配するな。彼らは勝つ」

 レンは短く断言した。
 これはハッタリではない。確信だった。
 この一週間、ガストンとフレアは地獄のような特訓に耐え抜き、文字通り「怪物」へと進化したのだ。

 ステージ上で、ガストンとフレアがSクラスのチームと対峙する。
 Sクラスのリーダーは、ケイン魔法学主任の秘蔵っ子、氷魔法使いのアイザックだ。

「……フン。ゴミ掃除もここまで来ると、少しは骨がありそうだな」

 アイザックが冷ややかに笑う。
 だが、ガストンとフレアは動じない。

「……ゴミはお前らの方だろ、エリート様」
「……燃え尽きなさい。私たちの踏み台として」

 二人の目には、以前のような焦りや劣等感はない。
 あるのは、勝利への渇望と、揺るぎない自信。

「試合開始!」

 審判の声と共に、アイザックが動いた。
 彼は杖を振るい、巨大な氷の槍を生成する。

「……『氷槍(アイス・ランス)』!」

 Sクラスの魔法は、威力、精度ともに、これまでの対戦相手とは桁違いだった。
 氷の槍が、音速でガストンたちに迫る。

「……ガストン! 右!」

 フレアが叫ぶ。
 ガストンが反応し、右に飛び退く。
 だが、アイザックの魔法は、それを読んでいた。
 氷槍が軌道を変え、ガストンを追尾する。

「……チッ! 小賢しい!」
「……任せて!」

 フレアがガストンの前に飛び出し、両手から火炎放射を放つ。
 氷と炎が衝突し、爆発的な水蒸気が発生する。
 視界が真っ白になる。

「……目くらましか。無駄だ」

 アイザックは冷静に、次の魔法を準備する。
 広範囲を凍結させる『氷河の檻(グレイシャル・プリズン)』。

 だが、その時。
 水蒸気の中から、黒い影が飛び出した。
 ガストンだ。

「……オラァァァッ!」

 ガストンの剛腕が、アイザックの顔面を捉える。
 だが、拳が届く直前、アイザックの前に氷の壁が出現し、ガストンの拳を防いだ。

「……遅い」

 アイザックが冷笑する。
 しかし、ガストンも笑った。

「……へっ。遅いのはテメェの方だ」

 その瞬間、ガストンの背後から、巨大な火球が飛来した。
 フレアだ。
 彼女は水蒸気に紛れて、ガストンの後ろに隠れていたのだ。

「……『爆炎乱舞(ワイルド・ファイア)』!」

 火球が氷の壁に直撃し、大爆発を起こす。
 氷の壁が砕け散り、その破片がアイザックたちに降り注ぐ。

「ぐあぁぁッ!」
「なッ……!?」

 Sクラスのメンバーが悲鳴を上げ、倒れ込む。
 アイザックも吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 煙が晴れる。
 そこには、息を切らしながらも、勝利の笑みを浮かべるガストンとフレアの姿があった。

 静寂。
 そして、闘技場が揺れるほどの大歓声。
 「勝った……!」「落ちこぼれが……勝ったぞ!」

 「勝者! 特別クラス!」
 審判の声が響き渡り、優勝が決まった。

 ガストンとフレアが抱き合って喜ぶ。
 レンは、その光景を満足げに眺めていた。

(……よくやった。これで俺の教師生活も安泰だ。賞金も入るし、しばらくは悠々自適に……)

 そう思った、その時だった。
 闘技場の空が、急に暗くなった。
 歓声が止み、人々が空を見上げる。

 そこには、巨大な影があった。
 翼を広げ、太陽を覆い隠す、漆黒のドラゴン。
 スラムの魔狼とは比較にならない、圧倒的な「死」の象徴。

「……な、なんだあれは……!?」
「ドラゴン……!? なぜ、こんなところに……!」

 人々がパニックに陥り、逃げ惑う。
 ドラゴンが口を開き、灼熱のブレスを吐き出す。
 闘技場の一部が、瞬時に溶岩と化す。

 地獄絵図。
 レンは、呆然と空を見上げていた。
 (……嘘だろ? 勘弁してくれよ。俺はただ、平穏に暮らしたいだけなのに……!)
 レンの内面は絶望に染まった。

 だが、彼の周囲の人間は違った。
 セシリアが剣を抜き、アリアが杖を構え、ガストンとフレアが臨戦態勢に入る。
 彼らは皆、レンを見ている。
 「最強の賢者」であるレンが、この絶望的な状況をどう覆すのか、期待に満ちた目で。

 逃げ場はない。
 レンは深呼吸をし、震える足を叱咤して、一歩前に出た。
 そして、空を覆うドラゴンを見据え、ニヤリと笑った。

「……やれやれ。少しは休ませてくれてもいいだろうに」

 レンの声が、パニックに陥った人々の耳に届く。
 その余裕の態度に、人々は一縷の望みを見出す。

 レンは、ドラゴンに向かって、ゆっくりと手を伸ばした。
 まるで、ペットを呼ぶかのように。

「……おい、トカゲ。……『お手』だ」

 その一言が、伝説の始まりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス全員が転生して俺と彼女だけが残された件

兵藤晴佳
ファンタジー
 冬休みを目前にした田舎の高校に転校してきた美少女・綾見(あやみ)沙羅(さら)は、実は異世界から転生したお姫様だった!  異世界転生アプリでクラス全員をスマホの向こうに送り込もうとするが、ただひとり、抵抗した者がいた。  平凡に、平穏に暮らしたいだけの優等生、八十島(やそしま)栄(さかえ)。  そんな栄に惚れ込んだ沙羅は、クラス全員の魂を賭けた勝負を挑んでくる。  モブを操って転生メンバーを帰還に向けて誘導してみせろというのだ。  失敗すれば、品行方正な魂の抜け殻だけが現実世界に残される。  勝負を受ける栄だったが、沙羅は他クラスの男子の注目と、女子の嫉妬の的になる。    気になる沙羅を男子の誘惑と女子の攻撃から守り抜き、クラスの仲間を連れ戻せるか、栄!

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。 ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。 そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。 しかも精霊の力に満たされた異世界。 さて…主人公の人生はどうなることやら。

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

近未来の魔法世界に転生して最強ハーレムを作る

こうたろ
ファンタジー
トラックの直撃で死亡。「君は選ばれた。異世界へ行く資格を得たのだ」とか言われてとりあえず転生させられたクルト。公爵家だけど四男だし魔術があるけど魔力量判定Eでほぼほぼ使い物にならないし……魔物1体倒すのも一苦労。俺の転生後生活、大丈夫か?

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん
ファンタジー
たった一人で敵軍を殲滅し、『死神』と恐れられた男は人生に絶望して自ら命を絶つ。 しかし目を覚ますと500年後の世界に転生していた。 前世と違う生き方を求めた彼は人の為、世の為に生きようと心を入れ替えて第二の人生を歩み始める。 家族の温かさに触れ、学園で友人を作り、世界に仇成す悪の組織に立ち向かって――――慌ただしくも、充実した日々を送っていた。 しかし逃れられたと思っていたはずの過去は長い時を経て再び彼を絶望の淵に追いやった。 だが今度こそは『己の過去』と向き合い、答えを導き出さなければならない。 後悔を糧に死神の新たな人生が幕を開ける!

処理中です...