ステータスなしの元人気メンタリスト、異世界の最強ドラゴンをお手だけで服従させる~目を見ただけで思考が読めるので、魔法使いが詠唱してくれません

マーマー

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第4章第17節 魔女裁判の開幕

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 大聖堂の地下墓地。
 レンは、バルタザールが展開した「対魔導結界装置」の重圧に耐えながら、冷や汗を流していた。魔力を持たないレンにも、その結界の物理的な圧力は作用し、まるで鉛のコートを着せられたように体が重い。

 バルタザールは、レンの苦しむ様子を見て、満足げに笑った。
 「……どうだ、賢者殿。……これが、神の力だ」

 「……神の力、ね。……ただの魔道具だろう?」
 レンは、精一杯の虚勢で言い返した。声が震えるのを、必死に抑えながら。

 「……フフフ。……強がりもそこまでだ。……お主が、魔力を持たない『ただの人間』であることは、既に調べがついている」
 バルタザールが、爆弾発言をした。

 レンの心臓が、ドクリと大きく跳ねた。
 (……バレてる!? ……嘘だろ!? ……誰が漏らした? ……ルナか? ……いや、あいつは絶対に裏切らない。……じゃあ、誰だ?)

 レンの脳裏に、様々な可能性が駆け巡った。だが、今はそれを考えている余裕はない。バルタザールの言葉が真実なら、レンの「賢者」としての立場は、完全に崩壊する。

 「……証拠は、あるのか?」
 レンは、最後の抵抗を試みた。

 「……証拠? ……フン。……そんなものは、必要ない」
 バルタザールが、冷酷な声で言った。
 「……お主が魔力を持たないこと。……そして、エリナを言葉巧みに操っていること。……それらは、全て『自白』してもらう」

 バルタザールが、合図を送ると、闇の中から数人の屈強な審問官が現れた。彼らは、レンの両腕を乱暴に掴み、拘束した。

 「……さあ、賢者殿。……場所を変えようか。……もっと『ふさわしい場所』へな」
 バルタザールが、ニヤリと笑った。

 レンは、抵抗する力もなく、そのまま引きずられていった。
 (……終わった。……今度こそ、本当に終わった……)

 レンの意識は、絶望の淵へと沈んでいった。

 翌日。
 アルカディアの大聖堂に隣接する、巨大な裁判所。
 その中央にある大法廷は、数千人の傍聴人で埋め尽くされていた。彼らの目的はただ一つ。「稀代の魔女」の断罪を見届けることだ。

 法廷の空気は、熱気と殺気で満ちていた。人々は、口々に「魔女を殺せ!」「火あぶりにしろ!」と叫び、その声は地鳴りのように響き渡っていた。

 その中心にある被告人席に、アリアが座らされていた。
 彼女の両手には、魔力を封じる手枷がかけられ、首には、昨日のエリナの首輪とは違う、無骨な鉄の首輪が嵌められている。

 だが、アリアの表情に、恐怖の色は一切なかった。
 彼女は、むしろその状況を楽しんでいるかのように、ニヤニヤと笑っていた。

 「……ククク。……素晴らしい! ……これぞ、魔女裁判(ウィッチ・トライアル)! ……深淵の徒に相応しい、最高の舞台ではないか!」
 アリアは、傍聴席に向かって、挑発的な視線を送った。

 「……静粛に! ……静粛に願います!」
 裁判長が、木槌を叩いて静粛を求めた。

 裁判長席には、聖教国の高位神官たちがずらりと並んでいる。その中央に、バルタザールが座っていた。彼は、異端審問局長官として、この裁判の全てを取り仕切っている。

 「……これより、被告人アリアの、魔女裁判を開廷する」
 バルタザールが、厳粛な声で宣言した。

 検察側の席には、異端審問局のエリートたちが座っている。彼らは、アリアを有罪にするための「証拠」を、山のように用意していた。

 そして、弁護側の席には……誰もいなかった。
 アリアは、弁護人をつけられていないのだ。これは、最初から結論ありきの「魔女狩り」だった。

 「……まず、検察側の冒頭陳述を」
 バルタザールが、検察官に促した。

 検察官が立ち上がり、朗々とした声で、アリアの罪状を読み上げ始めた。
 「……被告人アリアは、教会の許可なく、強力な古代魔法を使用した。……これは、神への冒涜であり、国家反逆罪に相当する。……さらに、被告人は、禁書指定されている魔導書を所持し、邪悪な『深淵の力』を研究していた……」

 検察官は、昨日、バルタザールがアリアの部屋に「発見」させた魔導書を証拠として提出した。

 「……異議あり!」
 その時、法廷の扉が開き、一人の男が堂々と入ってきた。

 レンだ。
 彼は、昨夜の地下墓地での出来事が嘘のように、いつもの「賢者」の装束に身を包み、余裕綽々の笑みを浮かべていた。
 その左手の薬指には、依然としてエリナと繋がる「聖縛の鎖」が巻きついている。

 法廷の空気が、一瞬で凍りついた。
 数千人の視線が、レンに集中する。

 「……賢者レン・クロウリー! ……貴様、ここで何をしている!」
 バルタザールが、驚愕の声を上げた。
 彼は、レンが地下墓地で完全に心を折られ、使い物にならなくなったと思っていたのだ。

 レンは、バルタザールの視線を無視して、被告人席のアリアに歩み寄った。
 「……待たせたな、アリア。……少し、寝坊してしまったよ」

 「……ククク。……遅いぞ、盟友(マスター)。……待ちくたびれたではないか」
 アリアが、嬉しそうに笑った。

 レンは、裁判長席に向き直り、堂々と宣言した。

 「……私は、被告人アリアの弁護人として、この裁判に参加する」

 法廷が、どよめきに包まれた。
 「賢者」が、「魔女」の弁護をする? それは、教会に対する完全な敵対行為だった。

 (……やべえ、足震えてる。……心臓バックバクなんだけど。……でも、やるしかない。……ここで引いたら、アリアも、俺も、終わりだ!)

 レンは、内心の恐怖を必死に押し殺し、バルタザールと視線を合わせた。
 バルタザールの目は、驚きから、憎悪と殺意に変わっていた。

 「……面白い。……ならば、受けて立とうではないか、賢者殿」
 バルタザールが、冷酷な笑みを浮かべた。

 こうして、一人のハッタリ詐欺師と、巨大な宗教国家との、命を賭けた「法廷バトル」の幕が切って落とされた。
 レンの武器は、心理学と話術、そしてハッタリのみ。
 勝率は、限りなくゼロに近い。だが、彼には退路はなかった。

 (……さあ、ショータイムの始まりだ。……見てろよ、クソジジイ。……お前の作ったシナリオ、全部ぶち壊してやる!)
 レンは、自分自身を鼓舞するように、不敵な笑みを浮かべた。
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