なにが私の心を震わせるのか

琥珀

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兄妹コンプレックス

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私には片親違いの歳が離れた兄が二人います。
両親は16歳差で再婚しているのですが、特にジェネレーションギャップのようなものは無かったですね。
父は再婚、母は初婚。
小学生の時に兄達は大学生。
私は大人の中で暮らしてきました。
一緒に百科事典を読んだり、ピアノの習い事の送迎をしてくれたり、時々揶揄われましたが優しい兄でした。
母に『兄達は本当の親子じゃないからこそ優先しなきゃいけない。いつも最後でごめんね』と言われたことがあります。
今では、その意味がわかる気がします。
血縁関係の無い家族を保つには気遣いが必要だったのでしょうね。
小さい頃から母の努力を見て育ちました。

兄達は学業も順調で、二人とも大学生を卒業して業界紙の新聞記者と、通信社の記者になりました。
そこまでは絵に描いたような世界。
ですが、ある日突然、一変したのです。

一人の兄が、精神病を発症しました。
真夏でも寒いと言って、コートを着込んで外出したり、眠れないと言いながら3日間不眠症で目がギラギラしたり、頭に誰かが声をかけてくる等と言い始めました。
勿論、出社も出来なくなり、程なく退職。
精神が崩壊していく兄を眺めながら思ったことは、

『気持ち悪い』

当時、学生だった私は、そんな変わり果てる兄を見たくなかったのです。
認めたくなかった。
普通でいて欲しかった。
週末は家に居たくなくて、無断外泊し友達の家を泊まり歩いていました。
親も兄達も避けて、私はアルバイトを数種類掛け持ちして、家を出る資金を貯め始めました。

つづく
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