128 / 167
失うには惜しい若者
しおりを挟む
直江景綱の考えとは、隣国会津の蘆名盛氏の仲介で、本庄繁長を赦すと言うものだ。
輝虎は嫌な顔をした。
「少し甘すぎる」
他国の国主の仲介で帰参を赦したと言うことは、自分の力で謀叛を抑えられなかったと言うこと。
輝虎にすれば敗北だし、逆に繁長にすれば主君輝虎を負かしたのだから勝ちである。
その上、繁長は嫡子を人質に出す代わり、お咎めなしにすると言うのだ。
「そこまで譲ってやる事はないだろう」
不快げに輝虎は景綱に言う。
「あまり長引かせるのは、得策ではありませぬ」
それに・・・・・・と景綱は目を細める。
「弥次郎は殺すには、惜しゅうございます」
「分かっておる」
むしろ輝虎の方が、繁長の才覚を買っているくらいだ。
あの追い詰められた状況で夜襲を掛けて来るなど、並みの度胸ではない。
そこは買う、だが・・・・・・・・。
「色部修理は・・・・・助からぬらしいぞ」
その夜襲で深傷を負った色部勝長は、命が危ういらしい。
重臣を一人殺めて、お咎め無しでは家中に不和を招く。
「殿・・・・・・」
低い声で景綱が告げる。
「だからこそにございます」
景綱の言いたい事は、輝虎にも分かる。
色部勝長は七十過ぎの老臣だ。
普通なら隠居しているところだが、嫡子の顕長が病弱の為、老いても無理して戦さに出ている。
武将の筆頭である柿崎和泉守景家も還暦が近い。そろそろ隠居を考えているだろう。
そんな家中で、若くて才覚も度胸もある繁長は、失うには惜しい若者だ。
「しかし・・・・・・なぁ・・・・」
話は分かるが、輝虎とすれば迷うところ。
「家中の不満は、拙者と和泉守どので抑えます」
その言葉を聴き、ふと輝虎は思った。
景綱がこれほど繁長を買っているのを、妙に感じていた。
或いは景家が何か、景綱に言ったのかもしれない。
この奉行の次席家老と武将の筆頭家老は、変に繋がっているところがある。
うむ、と呟き、輝虎は腕を組む。
殿、と景綱が呼びかける。
「弥次郎の奴は、調子に乗るぞ」
「乗せておけば良いのです」
冷めた口調で景綱が返す。
「・・・・・・・」
目を細める輝虎に、静かに景綱が告げる。
「調子に乗せておくほうが、あやつは扱い易うございます」
確かに、と輝虎は苦笑して頷く。
「いずれ別の時、別の事でお灸をすえましょう」
「そうさあ・・・・・そうだな」
悩みどころだが、これ以上時を掛けたくない。
それに景綱の言う通り、繁長は殺すには惜しい。
景家も同意なら、まぁ良いだろう。
「分かった、それで手を打て」
輝虎は嫌な顔をした。
「少し甘すぎる」
他国の国主の仲介で帰参を赦したと言うことは、自分の力で謀叛を抑えられなかったと言うこと。
輝虎にすれば敗北だし、逆に繁長にすれば主君輝虎を負かしたのだから勝ちである。
その上、繁長は嫡子を人質に出す代わり、お咎めなしにすると言うのだ。
「そこまで譲ってやる事はないだろう」
不快げに輝虎は景綱に言う。
「あまり長引かせるのは、得策ではありませぬ」
それに・・・・・・と景綱は目を細める。
「弥次郎は殺すには、惜しゅうございます」
「分かっておる」
むしろ輝虎の方が、繁長の才覚を買っているくらいだ。
あの追い詰められた状況で夜襲を掛けて来るなど、並みの度胸ではない。
そこは買う、だが・・・・・・・・。
「色部修理は・・・・・助からぬらしいぞ」
その夜襲で深傷を負った色部勝長は、命が危ういらしい。
重臣を一人殺めて、お咎め無しでは家中に不和を招く。
「殿・・・・・・」
低い声で景綱が告げる。
「だからこそにございます」
景綱の言いたい事は、輝虎にも分かる。
色部勝長は七十過ぎの老臣だ。
普通なら隠居しているところだが、嫡子の顕長が病弱の為、老いても無理して戦さに出ている。
武将の筆頭である柿崎和泉守景家も還暦が近い。そろそろ隠居を考えているだろう。
そんな家中で、若くて才覚も度胸もある繁長は、失うには惜しい若者だ。
「しかし・・・・・・なぁ・・・・」
話は分かるが、輝虎とすれば迷うところ。
「家中の不満は、拙者と和泉守どので抑えます」
その言葉を聴き、ふと輝虎は思った。
景綱がこれほど繁長を買っているのを、妙に感じていた。
或いは景家が何か、景綱に言ったのかもしれない。
この奉行の次席家老と武将の筆頭家老は、変に繋がっているところがある。
うむ、と呟き、輝虎は腕を組む。
殿、と景綱が呼びかける。
「弥次郎の奴は、調子に乗るぞ」
「乗せておけば良いのです」
冷めた口調で景綱が返す。
「・・・・・・・」
目を細める輝虎に、静かに景綱が告げる。
「調子に乗せておくほうが、あやつは扱い易うございます」
確かに、と輝虎は苦笑して頷く。
「いずれ別の時、別の事でお灸をすえましょう」
「そうさあ・・・・・そうだな」
悩みどころだが、これ以上時を掛けたくない。
それに景綱の言う通り、繁長は殺すには惜しい。
景家も同意なら、まぁ良いだろう。
「分かった、それで手を打て」
0
あなたにおすすめの小説
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
【最新版】 日月神示
蔵屋
歴史・時代
最近日月神示の予言本に不安を抱いている方もあると思うがまったく心配いらない。
何故なら日月神示では「取り越し苦労や過ぎ越し苦労はするな!」
「今に生きよ!」
「善一筋で生きよ!」
「身魂磨きをせよ!」
「人間の正しい生き方」
「人間の正しい食生活」
「人間の正しい夫婦のあり方」
「身も心も神さまからお借りしているのじゃから夜になって寝る前に神さまに一旦お返しするのじゃ。そうしたら身と心をどのようにしたらよいか、分かるじゃろ!」
たったのこれだけを守れば良いということだ。
根拠のない書籍や情報源等に惑わされてはダメだ。
日月神示も出口王仁三郎もそのようなことは一切言っていない。
これらの書籍や情報源は「日月神示」が警告する「臣民を惑わすものが出てくるから気をつけよ!」
という言葉に注目して欲しい。
今回、私は読者の皆さんに間違った解釈をされている日月神示を分かりやすく解説していくことにしました。
どうか、最後までお読み下さい。
日月神示の予言については、私が執筆中の「神典日月神示の真実」をお読み下さい。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる